フランス革命の“闇”の立役者・死刑執行人サンソンを坂本眞一が描く歴史大河『イノサン』が、宮本亜門演出によって2019年末にミュージカル化される。6月24日(月)には記者会見が行われ、宮本のほか、出演者より古屋敬多(Lead)、梶裕貴、武田航平、太田基裕、浅野ゆう子、脚本の横内謙介、音楽監督の深沢桂子、楽曲提供のMIYAVIが登壇した。
本作は、正義の番人でありながら「死神」と呼ばれる処刑人一族サンソン家に生まれ落ちた兄シャルル=アンリ・サンソンと妹マリー=ジョセフ・サンソン、二人の壮絶な人生を描いた作品。原作は、第17回文化庁メディア芸術祭で審査委員会推薦作品となるなど、高い評価を受けており、2017年ルーヴル美術館特別展「ルーヴルNo.9 ~漫画、9番目の芸術~」に日本を代表する3作品のうちの一作として出展された。
会見では、まず宮本が初めて“2.5次元作品”に取り組む思いを「2.5次元は今までやったことがなかったので、僕にできるのかなと思ったのですが、(プロデューサーが)『2.5次元ではないものを』と言ってくださったので、だったらチャレンジさせてくださいとお引き受けしました。横内さんが台本を書いてくださるということで、楽しみにしています」と挨拶。
原作者の坂本とはすでに会い、「女性に対する差別がありすぎるという怒りを持っていて、その思いを『イノサン』にぶつけたということがわかりました。(原作は)ある意味、残虐で生々しく、見たくないものを見せられる漫画だと思います。大変チャレンジ精神の強い漫画なので、そこに敬意を持っています。そして、それを舞台化したらどうなるのか。リアルなフランスの感覚を舞台に入れることができるかなと思います」と本作への思いを強くしたという。
また、横内は「フランス革命のお話で、描きがいがあると思ってオファーを受けたのですが、のちに原作の坂本さんとお会いしてお話しする中で、実は僕たちが見ていた歴史がいかに偏っていたものかを知りました。マリーという女性から見たら、革命の自由平等、博愛ですらすべて切り倒していくものなのだという視点で描かれています。これは、原作を再現する2.5次元という以上のものが描けると思いました」と期待を寄せた。
MIYAVIは、ミュージカルへの楽曲提供は本作が初。MIYAVIは「宮本亜門さんの熱い思いと原作の世界観が強烈だったので、正直、僕に何ができるのか迷った部分もありましたが、登場人物それぞれが信念にかけるパッションを僕は音楽で表現したいなと思っています」と語り、深沢は「ロックな感じでいければと思います。それは時代性もそうですし、差別されながらも『最悪、最悪』って言いながらバンバン男性を斬っていった彼女のたくましさを音楽の中でも表現しながら、MIYAVIさんと一緒に作っていければと思います」と構想を明かした。
マリー=ジョセフ・サンソンを演じる中島美嘉と共に、W主演を務めるシャルル=アンリ・サンソン役の古屋は「フランス革命の時代に実在した人物で、すごく過酷な時代背景の中、死刑執行人という一家の中に生まれ壮絶な人生を送った方。演じるにあたって、そのあたりをよりリアルに演じていただけたらいいなと思っています。それから、美しさを常に意識しながら表現していきたいと思っています」。
アラン・ベルナール役をWキャストで演じる梶と武田は、共にミュージカル初挑戦。梶は「アランは誇り高く、自分の信念を真っ直ぐ貫くような青年で、とても共感する部分がある男だと感じています。その部分を自分で大切に感じながら、真摯に演じていければ」、武田は「アランは純粋に、夢や希望を謳いながら時代と戦っていくという選択をした男。観てくださるお客様をこの世界に入り込みやすくする役柄だと思います。僕も純粋な気持ちで夢や希望を堂々と、声高に演じられるようにがんばりたいです」とそれぞれ思いを述べた。
国王ルイ16世を演じる太田は「フランスという国に絶望しながら変えていこうと葛藤し、もがき、戦い続けた人物です。この耽美な世界観の中で、人間くさく、繊細に、美しく描いていけたらいいなと思います」と意気込む。アンヌ−マルト役の浅野は、30年ぶりのミュージカル挑戦だといい「私がミュージカルというのも衝撃ですが、ロックミュージカルなんですね!さらに衝撃を受けています」と茶目っ気たっぷりに話すと、「シャルルを立派な死刑執行人に育て上げるために、びっくりするぐらいの折檻をする役です」とコメント。「すごく怖い、厳しい方で・・・なので、がんばって耐えてね」と冗談交じりに古屋に語りかけ、場を和ませた。
このほか、中島からはコメントも到着。中島は「『イノサン』との出会いは、フラッと立ち寄った本屋さんでとても綺麗な絵だと表紙に惹かれ、思わず全巻買いしたことからでした。その後、某番組にて坂本先生と対談も叶い、そして今回のお話をいただき、私の大好きなマリー=ジョセフ・サンソンを演じさせていただけることをとても光栄に思っています。初めてミュージカに挑戦させていただくので不安も大きく、今から緊張していますが、全力でがんばります」と力強い言葉。宮本は、改めて中島について「『イノサン』の中ではマリーは生意気で、魅力的で、何を考えているんだろうという役柄。中島さんにぴったり」と評し、「音楽を通してドラマを伝えることで、新たな魅力が出る瞬間に立ち会えればと思っています」と笑顔を見せた。
『イノサン musical』は11月29日(金)から12月10日(火)まで東京・ヒューリックホール東京にて上演される。その後、2020年にパリでも上演予定。
【公式HP】http://jnapi.jp/innocent
(取材・文・撮影/嶋田真己)