2015年12月2日(水)から新宿・紀伊國屋サザンシアターにて上演される、加藤健一事務所 vol.95『女学生とムッシュ・アンリ』。本作は、今春に東京・本多劇場にて上演され、大好評を博した『バカのカベ~フランス風~』に続く新作フレンチ・コメディ。開幕へ向け稽古も終盤にさしかかった11月中旬、稽古場を取材した。
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稽古場へ降りると、アンリ(加藤健一)が一人暮らす部屋のセットが組まれていた。まだ仮の状態とのことだったが、きっちりと整理されたビンやキッチンに掛けられたフライパンなどの小道具が、フランスらしい、どこかオシャレな空気を醸し出している。
稽古開始前の出演キャストはというと、ストレッチをしたりセリフの確認をしたりと、それぞれに準備をしながら和やかに雑談を交わし、皆、穏やかな雰囲気で過ごしていた。しかし、いよいよ稽古が始まる直前となると稽古場は静まりかえり、ピリっとした緊張感が漂う。スタッフとキャスト達の集中が高まっていく様を感じることが出来た。
この日の稽古は、作品の前半部分をシーンごとに確認しながら進められた。一つのシーンを終える度に演出家から修正があり、立ち位置や動き方、細かな仕草の一つにまで入念にチェックが入る。こうして進んでいく稽古の途中にはアドリブも入り、稽古場に笑顔があふれるひとときも。
元会計士のアンリは神経質で頑固な性格の持ち主。話す言葉の端々に皮肉が込められているような、いわゆる“キツイ”性格の持ち主なのだが、それをものともせずあっけらかんと渡り合うコンスタンス(瀬戸早妃)。この二人のやりとりがなんとも軽妙で、テンポの良い会話を聞いているうちにどんどん芝居に引き込まれる。
さらに舞台に登場するのが、アンリの息子ポール(斉藤直樹)と、その妻ヴァレリー(加藤忍)。ポールは、自分の妻を嫌うアンリのことを愚痴りつつも、年老いた父親の世話を見に部屋へやってくる。なかなかうまく折り合うことのできない二人だが、用事を終え部屋を出て行く息子に向けた「風邪を引くなよ」というセリフの背後に、不器用な親子の関係が見えた気がする。
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ヴァレリーは一見、ただのおしゃべり好きなおばさんといった風なのだが、やはり彼女も一筋縄ではいかない人物のようで、なにやら含みのあるような物言いが気になるキャラクターだ。
アンリ、ポール、ヴァレリー、それぞれがひと癖あるこの家族達と、その間で天真爛漫に振舞うコンスタンスとのギャップ。そして、そんな彼女が時折繰り出す“毒舌”がなんとも言えない笑いを生み出す作品だ。
アンリとコンスタンスの作戦は果たして達成されるのか、そして4人が迎える物語の結末は―。加藤健一事務所 vol.95『女学生とムッシュ・アンリ』は、2015年12月2日(水)から12月13日(日)まで、新宿・紀伊國屋サザンシアターにて上演される。
加藤健一事務所 vol.95『女学生とムッシュ・アンリ』
日程:2015年12月2日(水)~13日(日)
会場:紀伊國屋サザンシアター
作:イヴァン・カルベラック
訳:中村まり子
演出:小笠原 響
出演:
加藤健一、瀬戸早妃、斉藤直樹、加藤 忍
<ストーリー>
ピンポーン。
ある日、アンリが玄関のドアを開けると、20代の見知らぬ女が微笑んでいた。コンスタンスと名乗るその女子大生は、貸し部屋の情報を見てここに来たと言う。アンリの息子・ポールは、一人暮らしのアンリを案じて、ルームメイト募集の広告を出していたのだ。アンリはしぶしぶコンスタンスの同居を認めるが、コンスタンスは引っ越して来たその日にアンリの亡き妻のピアノに触ってしまい、追い出されそうになる。「何でもします!」と許しを請うコンスタンスに、アンリはある提案を持ち掛ける。
「あんたの魅力で息子を誘惑して、女房のヴァレリーと別れるように仕向けるんだ。そうすれば、ここに置いてやってもいい。家賃は3ヶ月タダにしよう。」
「・・・6ヶ月タダなら、やるわ。」
こうしてアンリとコンスタンスの奇妙な共同生活が始まった。アンリはポールの趣味嗜好をコンスタンスに叩き込み、コンスタンスは巧みにポールを誘惑する…。