2019年6月より東京・東急シアターオーブにてブロードウェイミュージカル『PIPPIN』日本語版が上演される。その製作発表が2月27日(水)都内で行われ、城田優、Crystal Kay、中尾ミエ、前田美波里が登壇した。
本作は、1972年の初演にてトニー賞5部門を受賞した名作中の名作で、2013年には新演出版が発表されトニー賞4部門を受賞した人気作。今回は新演出版を手がけたダイアン・パウルス自ら日本語版の演出を手がけ、本場のクリエイティブ・チームも再集結し、ブロードウェイで感動を与えた公演の世界観そのままに、出演者のみ日本人となる貴重な公演となる。
物語は、王子として何の不自由もなく育った初代神聖ローマ皇帝カール大帝の息子ピピンが、美しくカリスマ的なリーディング・プレイヤー率いるアクロバットサーカス一座に誘い込まれ、人生を変える情熱に駆られて「特別な何か」を探し求める旅に出るという内容。
出演は、ダイアン自身が主役のピピン役に選んだ城田優、そしてミュージカル初出演となるCrystal Kay、更に今井清隆、霧矢大夢、宮澤エマ、岡田亮輔、中尾ミエ/前田美波里(Wキャスト)といった実力派俳優陣が名を連ね、迫力ある歌・ダンス・アクロバットの華やかさに彩られながら、1人の青年が大人へ成長していく心揺さぶる物語を繰り広げる。
製作発表は、舞台衣裳を着用した登壇者たちによる劇中のナンバー歌唱からスタート。1曲目は、Crystal Kayによる「Magic To Do」。オープニングナンバーとして開幕のワクワクを感じさせる楽しいナンバーをCrystal Kayがパワフルな歌声で披露。
2曲目は、中尾と前田による「No Time At All」。本来はWキャストのためソロでの歌唱だが、今日だけの特別としてデュエットで披露された。問いかけるような落ち着いた出だしから、リズミカルなメロディーへと変化する曲を中尾と前田という実力派の二人が軽やかに歌い上げる。
ラストとなる3曲目は、城田による「Corner of the Sky」。ピピンが自分探しの旅に出る時に歌われるメロディアスな1曲を、城田が透明感のある歌声と共に、ピピンの心に秘めた思いをさらけ出すかのごとく熱唱した。
続いて、登壇者たちによって役柄と披露した楽曲の説明が行われた。ピピン役の城田は「自分がどこに行くべきなのか、何をするべきなのかという誰もが人生で経験するような岐路に立ち、そこで、リーディング・プレイヤーに導いていかれる」と役柄を語り「Corner of the Sky」について「いろんな人たちにそれぞれの場所があるんだけど、じゃあ僕はいったいどこに行けばいいのだろうかという、まさに(ピピンの)心情が吐露される歌です」と解説。
リーディング・プレイヤー役のCrystal Kayは「人間でもなく、フェアリー的な存在。自分の世界を見つけたいというピピンをいろんな世界に誘う役です。パワフルで、男らしいところもあれば、女性らしいところもあります」と役柄についてコメント。「Magic To Do」に関しては「これからマジカルな世界をみなさんに見せてあげるよというちょっとミステリアスで楽しい曲」と語った。
ピピンの祖母バーサをWキャストで努める中尾は「『PIPPIN』には2回出演(2007年、2008年)していますが、この新演出版は初めての出演です。アクロバティックな要素もあって今までやった中で一番大変ですが、Wキャストで気分が楽です」と笑顔を見せた。披露した「No Time At All」については「『いつの日かお前も、私の年になる♪』という歌詞が自分の気持ちをそのままぶつけているようです(笑)。とても歌いやすい」とおどけながら説明。
Wキャストの前田も、中尾同様に「ばあさんだし、名前もバーサだし、(私に)ピッタリの役です」と冗談を飛ばし「No Time At All」に対して「王子を導くというよりかは、分からせたいという歌。『人生を謳歌しないとダメよ。いろんなことが起こるだろうけど、あなた自身が選んで進んでいかないと、楽しくなんかならないよ』ということを歌っています」と歌に込められた思いを語った。
会見には演出家のダイアンも映像で出演。「日本語キャストと一緒に舞台を作るのが今から楽しみでなりません。城田優さん、Crystal Kayさんをはじめ素晴らしいキャスト揃いです。日本のみなさまにこのブロードウェイを代表する作品を体験してもらえることにも大変な喜びを感じています。スティーヴン・シュワルツによって作られた素晴らしい楽曲とサーカスやアクロバットが見事に融合した魔法のような作品をお楽しみください」とコメントした。
ダイアンのコメントを受けて、ブロードウェイでの公演を観劇したという城田は「キャスト・スタッフ一同、力を合わせて、ダイアンさんに『日本版のほうが良かった。日本のカンパニーは素晴らしい』と言ってもらえるように日々努力していきます」と意気込み「ブロードウェイ版を超えて、素敵なものを日本のみなさまにお届けしたいです」と決意を新たにした。
その一方で、登壇者たちが身につけているオリジナルキャストの衣装の中で、城田のセーターを作り直した話になると、城田は「ちょっと小さくて、城田サイズではなかったですね。だから、衣装だけはすでにブロードウェイを越えています(笑)」とはにかんだ。
本作がミュージカル初挑戦となるCrystal Kay。不安を感じていると話しながらも、オープニングナンバーを歌うことについて「リーディング・プレイヤーの存在と印象を、お客様にパッと感じてもらわなきゃいけないので重要ですね」と明かした。
さらに、ブロードウェイ公演を観劇した際に「当日は真っ黒な服を着ていたので、上演後に外でリーディング・プレイヤー役のパティーナ・ミラーさんに間違えられたんです(笑)」とエピソードを語り「同じ役を演じられるというのはご縁ですし、オリジナルを超えたと言われるぐらいにしたいです」と意気込んだ。
バーサのアクロバティックな要素について、中尾は「(新演出版を)ビデオで拝見した時に、スタッフの方に『これ、やらないよね?』と言ったんですけど、『いや、やります』と即答されて『とりあえず懸垂を10回ぐらいできるようにしておいて下さい』と言われました(笑)」と裏話を披露。前田は、ブロードウェイ版の来日公演を観劇した際に、バーサ役ならできるかもと感じながらも「でも、(アクロバティックなことが)突然始まってしまって、これは無理だなと思っちゃいました(笑)」と当時を振り返った。
また、本作の音楽的な魅力に関して、城田は「50年ほど前の作品ですが、古さを感じさせない新しい音楽なイメージです。今でも愛される、わかりやすいナンバーから、ちょっとエキゾチックなナンバーと、幅広いミュージカル向きな音楽の数々が揃っています」と語り、Crystal Kayも城田に同調しながら「感情的なジェットコースターに乗っている感じで、最初から最後まで楽しい」と表現した。
ブロードウェイミュージカル『ピピン』は、2019年6月10日(月)から6月30日(日)まで東京・東急シアターオーブにて上演される。その後、名古屋、大阪、静岡を巡演。
日程の詳細は、以下のとおり。チケットは、東京公演と名古屋公演が3月2日(土)10:00、大阪公演が3月3日(日)10:00、静岡公演が4月20日(土)10:00より一般発売開始。
【東京公演】2019年6月10日(月)~6月30日(日) 東急シアターオーブ
【名古屋公演】2019年7月6日(土)・7月7日(日)愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2019年7月12日(金)~7月15日(月・祝) オリックス劇場
【静岡公演】2019年7月20日(土)・7月21日(日) 静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
【公式HP】http://www.pippin2019.jp/
(取材・文・撮影/櫻井宏充)