古典作品をベースにし、歌舞伎の新たなる可能性を提示する『オフシアター歌舞伎』が2019年5月より上演されることが明らかになった。本作は歌舞伎俳優の中村獅童、中村壱太郎、そして荒川良々らによる新しい傾奇芝居。市井に息づく人々の心の機微を鮮やかに描き出す赤堀雅秋が、脚本・演出を担う。
原作は300年前の実話を基に、無軌道な主人公と、彼を取り巻く人間関係の襞をリアルに描き出した人形浄瑠璃の名作『女殺油地獄』。油屋の河内屋の次男、与兵衛は世間でも評判の放蕩息子。ついに勘当された与兵衛は、親の慈悲に触れ改心を決意するも、かさんだ借金の返済を迫られる。頼みは、近所の同業者豊島屋の、親身で美しい妻、お吉だったのだが・・・。
◆中村獅童
昭和という時代に触れたアングラ芝居、オフ・ブロードウェイの劇場で獅子の毛を振った20代の体験。それらが、『女殺油地獄』の与兵衛を12年前に初めて演じた時から抱いていた”ある思い”に結びつき、赤堀雅秋さんとの出会いによって実現する日が訪れました。
現代に通じるこの放蕩息子の物語を、赤堀さんの演出で、繁華街にある倉庫のような小さい空間で上演したら、まるで実際の事件を目撃しているようなリアルさになるだろう。歌舞伎のアナログにこだわりながらも、現代を象徴するデジタルな世界との対比も見せていきたい・・・。今、さまざまな思いが駆け巡っています。
◆中村壱太郎
今回、今までにない新たなコンセプトの歌舞伎公演に挑むにあたって、今とてもワクワクしております。『女殺油地獄』はこれまでにお吉と妹のおかちの役で出演したことのある演目ではありますが、この度は初めてご一緒させていただく赤堀雅秋さんの演出、荒川良々さんと共演させていただく中で、新たなお吉像を創り出していきたいです。
また獅童のお兄さんとは久しぶりに共演させていただけることがとても嬉しく、お兄さんがオフシアター歌舞伎で産み出されたい事に全力で一緒に向かっていきたく思っております。
◆荒川良々
チャレンジすることが何よりも好きです。友達からはチャレンジ君と呼ばれる事もしばしばあります。今回は歌舞伎にチャレンジです!はたしてどうなりますか・・・。
◆赤堀雅秋(脚本・演出・出演)
新しいものを作ろうと意気込んでいるわけではない。芸術的な志向もない。ただただ観に来ていただいたお客さんの心を揺り動かすものが作りたい。ガイドの必要もなく、弁当を食べる暇もなく、手を伸ばせば役者に触れられるような、ヘタをすれば中村獅童の汗が、荒川良々の唾が、中村壱太郎の匂いが降りかかってくるような至近距離で、生々しい、生臭い芝居を披露したい。女殺油地獄。三百年経っても我々は何も変わっていない。
『オフシアター歌舞伎』は5月11日(土)から5月17日(金)まで東京・寺田倉庫にて、5月22日(水)から5月29日(水)まで東京・新宿FACEにて上演される。