2018年12月6日(木)より上演されるproject K『僕らの未来』。俳優・アーティストとして活躍する加藤和樹の楽曲を舞台化するとして、発表時、大きな話題を呼んだプロジェクトが、ついに始動した。エンタステージでは、本作の顔合わせ現場を取材。そこに見えた、作り手たちの想いとは―。
作品のベースとなっているのは、加藤が初めて作詞を手掛けた「僕らの未来~3月4日~」(アルバム「Face」収録/2007年)。上京する加藤が地元の仲間たちへ向けて書いたというこの楽曲を、本舞台の製作を手掛けるプロデューサーは「いつか舞台として作りたい」と思っていたという。
出演者には、30代半ばになった加藤と鎌苅健太と河合龍之介、48歳のなだぎ武、そして19歳の吉高志音と、約30年の幅を持つ顔ぶれをキャスティング。奇しくも、30年という月日は、まもなく終わりを迎える“平成”と同じ長さである。「この30年、共有しているものはそこまで変わっていないのに、徐々にコミュニケーションが取りづらくなってきているように感じます。そういう今だからこそ、それぞれの年代の人たちに、考えてもらえる作品ができればと思っています」―その言葉には、“今”この作品が生まれ、私たちが目にする大きな意義が込められていた。
作・演出を手掛けるのは、ほさかよう。ほさかと言えば“ダークファンタジー”を得意とする印象が強いが、本作は、今までのほさか作品とはガラリとテイストの違う仕上がり。ほさかは「原案となっている加藤くんの曲を聞いた時、これを聞いて心を動かされる人たちは、人生を順風満帆で送ってきた人というよりは、苦しみや悩みを抱えた人たちだと思ったんです。登場人物は、その楽曲の受け手の人たちをイメージして書きました」と明かす。
今回の出演者とは、全員初めて作品作りを共にする。「キラキラして見える彼らの側面を否定するつもりはまったくないのですが、生身の人間として生きている限りは、役者も皆さんと同じような苦しみを抱えています。彼らが持つ生々しい部分も想像しながら作れば、“夢を見るって素晴らしい”だけでは終わらないけれど“人生そこまで捨てたもんじゃない”と、役者にとっても観てくださる方にとっても、エールとなる作品ができるのではないかなと思っています」。
中心となる加藤、鎌苅、河合は、ミュージカル『テニスの王子様』で氷帝学園のキャストとして共演した仲。顔合わせが始まる前からも、何かと声を掛け合い、自然とあたたかな空気が流れる。馴れ合うわけではないけれど、互いを認め合っているような・・・そんな空気感に、あの頃から脈々と受け継がれる縁を感じさせた。
顔合わせの挨拶で、加藤は「一人ひとり、人生の分岐点が必ずあったと思うんですね。それが、時代を超えて、このタイミングで、また一緒に作品づくりをできる機会をいただけたことは、とても光栄なことです。このメンバーでやれるからこそ、今の時代に響く舞台になればいいなと思っています」と意気込んだ。
鎌苅は「ずっと大好きだと言っていたこの楽曲を舞台にできて、大好きな仲間と、お世話になってきた方ばかりの中で、平成最後の年に一緒にできることは、すごく意味のあることのように感じます」と笑顔いっぱい。「刺さる台詞がたくさんあったので、お客様の中にも残るものがあって、それを持ってまた良い一歩を踏み出しもらえるような作品になったらと思います」と語った。
河合は「台本をいただいて、自分の役だけでなくすべてが、思い入れのある役になりそうだと感じました。自分の中のいろんな感情が掘り起こされ、発見もたくさんありそうです。きっと観てくれる方にとっても、一緒に回想していただけるような作品になるのではと思います」と語る。
そして「『僕らの未来』ということですが、僕の未来はそんなに長くない・・・(笑)。ですが、このお芝居の中に、何か自分らしいものを残せたらと思っております。私もテニミュ出身者として、よろしくお願いします!」と冗談を飛ばすなだぎに、最年少の吉高は「大先輩方と一緒にお芝居をさせていただくということで、とても緊張しているのですが、僕の世代の思いを多くの人に伝えられるようにしたいです」と続いた。
顔合わせに続いては、本読みが行われた。
(以下、物語の一部に触れています)
物語の舞台は、駅から少し離れた場所にある小さなBAR。そこで果たされる、久しぶりの再会。学生時代の友人たちは社会の中で揉まれ、30代半ばに差し掛かっていた。夢を描いていたあの頃、現実を知る日々。たくさんの人々に出会いながら歩んできた、道半ばの彼らの“未来”とは・・・。
ほさかが「物語として肉づけしすぎてしまうと曲のイメージから離れていってしまうのですが、劇中歌というよりは、観終わった人たちが、改めて原作の曲を聞いてしっくりくるものにしたいと思ったんです」と語っていたが、その言葉のとおり、本読みが終わる頃には自然と脳裏に加藤の歌声が湧き上がってくるような感覚を覚えた。
もう一つ、特徴的だったのは“雰囲気”。作品づくりのスタートとなる顔合わせでは、その場が本当の「初めまして」となる場合も多く、まだ役者同士の関係性ができていないことも多い。しかし、学生時代の友人たちを演じる加藤、鎌苅、河合のやり取りからは、すでに物語と同じだけの歳月が見え隠れしており、それがそのまま、作品全体の雰囲気のベースとなっている。そこへ、なだぎの絶妙なテンションと間、吉高のまだ初々しさも残る若さが加わり、登場人物たちの持つ“リアルさ”が立ち上がる。
さながら朗読劇だ。後半に進むにつれて、座っているのがもどかしく見えるほど、本読みは白熱していった。台詞に合わせて指を鳴らし語気を強める鎌苅に、両手を大きく振って役の感情を訴える河合、それを横目にうっすらと微笑みを浮かべる加藤。その様子に、ほさかも頷いたり、時折笑顔を浮かべたり。確かな手応えを感じていたのではないだろうか。
演出について、ほさかは「経験豊かな役者が揃っているので、あまり演出で振り回すようなことはせず、意見を取り入れながら柔軟に作っていきたいですね。ちょっと馬鹿なことも、やってみようか?って試してみたり(笑)」と構想していた。
本作の中でも鍵となる、加藤、鎌苅、河合の関係性にも言及。「実際に親しい彼らが、親しい設定を演じるということは、絶対に楽しいだけではない。長年の付き合い”があるからこそ、“コレを出さないといけないのか・・・”と思うような、エグい瞬間も出てくると思います。でも、この作品では、彼らのすごく個人的な感覚の方が、多くの方の感情を動かすと思うんですよ。だから、一般論ではない『伝わるか分からないけれど・・・』というものを、一つでも多く提示してもらうことを楽しみにしています」。無難にまとめるつもりはさらさらない。ほさかの攻めの姿勢が、“今”の彼らの中からしか出てこないものをすくい上げる。
project K『僕らの未来』は、12月6日(木)から12月16日(日)まで東京・品川プリンスホテル クラブeXにて、12月20日(木)から12月23日(日・祝)まで大阪・大阪ビジネスパーク円形ホールにて上演される。
なお、下記の日程では、project Kとゆかりのあるゲストを迎え、「『僕らの未来』SPECIAL TALK SHOW ~俺たちの現実~」と題したアフターイベントを開催。同じ道を歩んできた仲間や、先輩俳優、後輩俳優と共に語る、“ぼくみら”キャストが、今の時代に思うこと。ぜひ、公演と合わせて楽しんでほしい。
【開催回、登壇者/スペシャルゲスト】
<東京公演>
12月7日(金)13:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介 なだぎ武 吉高志音
12月8日(土)17:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:上島雪夫
12月11日(火)19:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:伊勢大貴 内海啓貴
12月12日(水)13:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介 なだぎ武 吉高志音
12月12日(水)19:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:植田圭輔
12月13日(木)19:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:高橋健介 井阪郁巳
12月14日(金)13:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介 なだぎ武 吉高志音
12月15日(土)13:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:中河内雅貴
12月15日(土)17:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:城田優
<大阪公演>
12月20日(木)19:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:青柳塁斗 瀬戸祐介
12月21日(金)13:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介 なだぎ武 吉高志音
*12月22日(土)13:00公演/17:00公演
登壇者:加藤和樹 鎌苅健太 河合龍之介/スペシャルゲスト:土屋佑壱 永山たかし
※トークショーは終演後、20分程を予定
※各公演日時のチケットをお持ちの方のみ参加可能
※登壇キャストは、やむを得ない理由により予告なく変更となる場合あり
【公式HP】https://www.nelke.co.jp/stage/bokuranomirai/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)