2018年8月30日(木)に東京・天王洲 銀河劇場にて開幕したLive Musical「SHOW BY ROCK!!」―狂騒のBloodyLabyrinth―。あの熱い熱い狂宴が再び。その模様を、公開ゲネプロの舞台写真と共にレポートする。より、ライヴに。より、ミュージカルに。約1年ぶりのライヴミュージカル公演は、より“らしさ”を加速させた。
「SHOW BY ROCK!!」は、バンドをテーマとしたサンリオのキャラクタープロジェクトで、スマホゲームアプリは今年で5周年を迎えた。2016年2月に初舞台化、2017年5月より「Live Musical」として生まれ変わり、これまでにフェス公演を2回、ライヴミュージカル公演「-深淵のCrossAmbivalence-」(2017年10月)を上演している。
(以下、物語の一部に触れています)
「シンガンクリムゾンズ」のボーカル・クロウ(米原幸佑)は、ある日、父親と言い争いをしてしまい、「あと1年経っても売れなかったら、バンドは綺麗さっぱり諦めろ」と告げられた。焦りを感じる中、バンドメンバーであるアイオーン(輝馬)、ヤイバ(鳥越裕貴)、ロム(郷本直也)と会ったクロウだったが、相談しそびれてしまう。そこへ、所属事務所BRRの社長・有栖川メイプル(今拓哉)がある企みのもと、新たなライヴ出演の話を持ってくる。
一方、音楽都市MIDICITY(ミディシティ)の人気No.1バンド「トライクロニカ」のシュウ☆ゾー(鎌苅健太)、リク(ゆうたろうと宇佐卓真のWキャスト、ゲネプロにはゆうたろうが出演)、カイ(木原瑠生)は、ジューダスJr.(阿部快征、大野紘幸、北川雄也、吉高志音)を伴い豪華客船ツアーに出ていた。そこに、所属事務所ジューダス主催の大きなライヴが開催されるという報が飛び込んでくる。
No.1の座を手にするべく「アルカレアファクト」のチタン(糸川耀士郎)、オリオン(田中涼星)、セレン(板垣李光人)、アルゴン(滝川広大)は、オリオンの家に仕えるじい(鳥羽潤)に命じ、ある画策する。しかし・・・。
そこへ、新たなバンド「フカシギミック」が現れた。マロ(健人)、ゲ・フロッチ(畠山遼)、シャッキー(吉村駿作)の3人は、「アプリコットフィールド」に関する何か目的があって、大阪のような音楽都市Big Hill City(ビッグヒルシティ)からやってきた様子。思惑渦巻く中、音楽に魅入られた者たちはどんな道を進むのか―。
初日前に行われた囲み会見で、主演の米原は本作について「これまでの中で一番ライトな物語」と語っていた。あらすじを文字で見ると、わりと事件が詰まっている。しかし、これを軽くいなしていくのが“しょばみゅ”だった。
もう一つ、大きなトピックとなっているのが「シンガンホワイティーズ」の登場だ。シンガンホワイティーズは、今年のエイプリルフール、原作内に突如デビューしたバンド。今年の4月1日に、この存在が舞台の物語に波乱を呼ぶとは、誰も予想していなかっただろう。
事前取材で、米原を筆頭に、ホワイティーズへの向き合い方にかなり悩んでいたシンガン4人だったが、さすがの仕上げっぷり。効き過ぎなぐらい、純白と深紅のコントラストで、物語にメリハリをつけている。
新たな選択肢を前に、クロウには若さ、ロムの行動にはきっと前バンドをやっていた頃から変わっていないだろう信念がにじむ。P.S.あまり深く踏み込まないアイオーンとヤイバにも、きっと譲れないものがあるのだろう。たった数分、シンガンホワイティーズの演奏に見える変化には、思っていることは同じだけれど言葉にできない、不器用な祈りのようなものも感じた。
そして、メイプル社長役の今によるミュージカルナンバーは、前作よりさらにパワーアップ!響く歌声は迫力満点、ジューダスJr.を引き連れて踏む軽快なステップに心躍るが、その歌詞をよくよく聞くと・・・。
トライクロニカには、「-深淵のCrossAmbivalence-」で築いた鉄壁の絆が見える。特に、前作に続いてリクとカイを演じるゆうたろうと木原には“楽しむ”余裕が出てきたようにも見え、リクがWキャストとして宇佐に変わることで、その関係性に新たな視点が加わった。
今回のトラクロはアニメ版のような立ち位置のシーンが多いのだが、鎌苅はシュウ☆ゾーの圧倒的存在感をきっちり成立させる。その上で、鎌苅ならではのアドリブシーンも健在だ。相手を美味しくしてあげながら、しっかりオチをつける柔軟性と頭の回転の速さは、本当に素晴らしい。
大きな成長を遂げたのがアルカレアファクトだ。前作でもミュージカルナンバーを歌うシーンがあったが、田中、板垣、滝川は歌声を強化してきた。今回は糸川も加えたアルカレのハーモニーは、低音がよく響き、聴き応えのあるシーンになっている。ちなみに、後ろで一緒にリズムをとるじいが非常にかわいい。
特筆すべきが、チタン。演じる糸川の持つ個性と合わさり、とても愛嬌のあるキャラクターに仕上がった。また、今まで舞台では描かれていなかったチタンのある“事情”が明確になったことで、バンドとしての関係性がまた一歩進んだものとして捉えられるようになっていた。何より、今回の4人はのっけから全方向に貪欲だ。手練の先輩たちに触発され、成長した若手の姿は頼もしい。
そして、初登場となった「フカシギミック」の3人。このバンドは、個性と絶妙な調和が鍵だ。健人演じるマロはカニカマ工場生まれのカニという不可思議な存在ながら心身共にめちゃめちゃ強くなくちゃいけないし、畠山演じるゲ・フロッチは自信満々にサムくないといけないし、吉村演じるシャッキーはボコられ役だがそれをコミカルに見せなければならない。芝居部分も、バンドシーンも、回を重ねるごとにフカまるグルーヴ感。まだまだ可能性を感じる3人だ。
そして物語は・・・まさに“狂騒”のフィナーレへ。まさか、大きな劇場の上を○○があんなにたくさん行き交うとは想像したことがなかった。小劇場っぽくもあり、子どもが観ても無条件に楽しめそうなショーでもある。なんだかもう、よく分からない。よく分からないけれど、こんなに楽しい気持ちになる瞬間はなかなかない気がする。
ライヴシーンは、もはやこれが芝居であることを忘れるほどの迫力とリアリティだ。このライヴシーンがめちゃくちゃかっこいいから、芝居部分でどんなにわちゃわちゃしても、説得力がある。特に今回、各バンドのドラム担当はめざましい上達を遂げているのではないだろうか。もちろん芝居なので音は直接出ない仕様になっているのだが、実際に叩いている音が前方席まで聞こえてきた。
サンリオという世界観の中で包んだ楽しい作品だが、描かれているのは、結構リアルな物語。本作の中でも、各バンドに様々な問題や不安が横たわっているし、解決していない問題も多い。それでも彼らは音楽を奏でずにはいられない。共鳴を求めて。役者たちが全力で刻む、キャラクターたちの生き様が、劇場で燃え続けている。それが絶えることのない光となって在り続けることを願ってやまない。
残り少なくなった東京公演を終えると、しょばみゅ初の地方公演、ビッグヒルシティ・・・ならぬ大阪での公演が待っている。アプリコットフィールドの行方を、ぜひ見届けてほしい。
また、会場では「シンガンホワイティーズ」がエイプリルフールのデビュー時にコラボしたLIONトップ スーパー NANOXの製品サンプルセット(原作のクロウイラスト付き)が来場者限定で配布されている。ありがたや黙示録である。
Live Musical「SHOW BY ROCK!!」―狂騒のBloodyLabyrinth―は、9月9日(日)まで東京・天王洲 銀河劇場にて、9月14日(金)から9月17日(月・祝)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演。
なお、本作のDVDが2019年1月16日(水)に発売されることが決定した。公演中に劇場で予約をすると、会場限定予約特典として、今年6月に開催された「~THE FES 2018~」の公演内容が収録された特典DVDがつく。詳細は、以下のとおり。
◆Live Musical「SHOW BY ROCK!!」―狂騒のBloodyLabyrinth―DVD
【発売日】2019年1月16日(水)
【価格】9,800円+税
【内容】本公演収録、他特典映像、など
【会場限定予約特典】「~THE FES 2018~」の公演内容を収録した特典DV
D
※会場限定予約特典DVDは、残分が出た場合のみきゃにめ(ポニーキャニオン通販サイト)にて追加で注文受付
※詳細は公式HPにて随時情報公開
【公式HP】http://showbyrock-musical.com/
【公式Twitter】@LMSB69
(C)2012, 2018 SANRIO CO., LTD. SHOWBYROCK!! 製作委員会#
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)