2018年7月13日(金)より東京・よみうり大手町ホールにて、舞台『アンナ・クリスティ』が開幕する。ノーベル文学賞受賞作家ユージン・オニールが1921年に発表し、ピューリッツァー賞を受賞した傑作戯曲が、日本を代表する演出家・栗山民也の演出で日本初演。初日前日にはフォトコールと囲み会見が行われ、篠原涼子、佐藤隆太が登壇した。
1930年に公開された映画版では、ハリウッドの伝説的スターであったグレタ・ガルボがアンナ役を演じ、初トーキー映画主演として大きな話題を呼んだ。そして、2011年にロンドン・ウエストエンドで上演された際は、マット役を名優ジュード・ロウが演じ、全公演ソールドアウトを記録。英国で最も権威のあるローレンス・オリヴィエ賞において、ベスト・リバイバル作品に選ばれた。世界の名優たちが挑んだ濃密な人間ドラマが、これまで『夜への長い旅路』『喪服の似合うエレクトラ』『氷屋来たる』と3本のオニール作品を手がけてきた栗山の演出により、日本で今よみがえる。
ニューヨーク市、サウス通り近くの酒場。年老いた船乗りクリス(たかお鷹)は、5歳のときに親戚に預けて以来会っていない娘アンナ(篠原)と15年ぶりに再会する。虐待を受け転々としたのちに娼婦へと身を落とし、身も心も傷ついたアンナは父親のもとで回復したいと願っていたのだ。
アンナが娼婦になっていたことに気づかないまま、父娘が石炭船上の暮らしを始めたある嵐の日、難破船から助け出されたアイルランド人の火夫マット(佐藤)が彼らの前に現れる。マットとアンナは恋に落ちるが、アンナの過去を知ったマットは失望し、アンナの許から去ってしまう。アンナに幸せは訪れないのだろうか・・・。
フォトコールでは一幕二場を公開。アンナとマットの運命的な出会いから、娘に男が近づくことを恐れていたクリスの登場までのシーンが披露された。物語は船の上で展開するが、舞台上手の斜めに立つ巨大な窓は、海を感覚的に表現するものとして全編を通して存在するという。その窓から指す仄暗く青い光は、これから起こるであろうアンナたちの人間関係を象徴するかのように感じさせ、実に美しく印象的だった。
不幸な生い立ちのアンナ。篠原は過酷な過去を押し隠すかのように普段はサバサバとした立ち振る舞いなのだが、時折見せる憂いを秘めた表情にその過去を感じさせながらも引き寄せられてしまう。アンナの美しさに一目で心を奪われてすぐにプロポーズしてしまう真っ直ぐな性格のマット。演じる佐藤は、まさしく海の男という風体で、裏表のない純粋なマットを時にコミカルさも交えて演じきっていた。
舞台の見どころについて、篠原は「海の話をテーマにしている舞台で、家族と恋人との絆を深める話です。恋愛ドラマであり、家族・親子との絆をどうやって深めていくのか、船の上を舞台としていろんなドラマが起きます。良いこともあれば悪いこともあって、すごく楽しいこともあります」と解説。
20歳のアンナという役柄について、篠原は「ト書きや台詞にで“20歳”とか書かれていて、そんなに書かなくてもいいのに・・・とは思いました(笑)。最初は声とかトーンを上げたりて若く演じようとしていたんですけど、栗山さんが『すごく苦労を経た女性なので、そんなに若くならなくていい』と教えてくださったので、安心して“20歳だけど、20歳じゃない感じでやっていこう!”という感じでやっています(笑)」と笑顔を交えながら役作りについての考えを披露した。
その設定について、相手役となる佐藤も「幕が開いて、みなさんが観て下さる中で、自然と染みていったらとは思いますね。意識したとしても違和感はまったくないですし、そこが舞台のおもしろさだと思います」とコメント。
主演の篠原は2001年の『ハムレット』、2005年の『天保12年のシェイクスピア』以来、13年ぶりの舞台で初主演を務める。出演のきっかけについて、篠原は「お話をいただいた時に、ぜひやりたいと思いました。舞台はもともと憧れだったので、挑戦したいなと。自分にとっていいターニングポイントになるかと思います」と話し、続けて、本番に向け「お客さんと一緒にセッションするような感じで、受けた時にいろんなイメージが出てくるのかなと思うので、それからなのかな。今はとっても楽しいし、とっても不安。両方あります」と初日を迎える境を明かした。
海が二人を引き合わせ、海が怨讐を包み込んだ。演出・栗山が複雑な心理を表現豊に演じるキャストと創りあげる珠玉の舞台がついに幕を開ける。
舞台『アンナ・クリスティ』は、7月13日(金)から7月29日(日)まで東京・よみうり大手町ホールにて、8月3日(金)から8月5日(日)まで大阪・梅田芸術劇場にて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)