NEWS増田貴久主演の舞台『Only You ~ぼくらのROMEO&JULIET~』が、2018年7月12日(木)に東京・東京グローブ座で開幕した。劇中ではジャニーズ歴代の名曲12曲が歌われる。NEWS、嵐、Hey!Say!JUMP、KinKi Kids、KAT-TUN、近藤真彦、SMAP、少年隊、修二と彰、田原俊彦、フォーリーブス・・・など盛りだくさんのジャニーズメドレーが、シェイクスピアの恋愛悲劇『ロミオとジュリエット』の物語とリンクしていく。出演は、増田のほか、二宮芽生、中谷優心、長澤秀平ら。
最初、この企画を聞いた時、増田はどんな舞台になるかイメージができず「どういうことですか?」と何度も聞いたそうだ。しかし、台本を読み「内容に対しての楽曲の使い方が、曲がリンクしているもの、気持ちがリンクしているもの、シーンにリンクしているものなどいろいろ。楽しいところがいっぱいあって、台本をどういうふうに表現できるんだろう、とワクワクしました」と振り返る。
増田が演じるのは、地味で自信のない大学生・門田。大学のミュージカル研究会では、いつも脇役ばかり演じている。しかし、そのミュージカル研究会が大学公認を取り消され助成金がもらえない危機に・・・。シェイクスピア好きの教授に認めてもらうため『ロミオ&ジュリエット』を上演することになる中、門田は先輩の神山(中谷)に主演のロミオ役を命じられる。「なんで俺が!?」と戸惑っているところに、集客のために「アイドルの曲で歌えばいいんじゃない?ジャニーズとか!」と同級生の里依(二宮)が発案。門田、里依、親友の塩見(長澤)らは、ジャニーズ楽曲版『ロミオ&ジュリエット』を上演し、起死回生を図る!
「この二人、13歳なの!?」と、『ロミオとジュリエット』のことを何も知らない門田。一から物語を追いながら、稽古を進めていく。ロミオとジュリエットの衝撃的な一目惚れ、バルコニー越しに愛を伝え合う二人・・・ジャニーズの楽曲に乗せ、歌で、踊りで、気持ちを深めていく。ロミオがジュリエットに「結婚しよう」とプロポーズし、二人が結ばれれば両家の争いも終わるはずだった。しかしそれぞれの一族は対立を深め、ロミオの親友マキューシオ(長澤)を筆頭に両家の抗争は激化していく・・・。
ロミオの情熱が増していくのと反比例するように、現実の門田はグチが増えていく。「ロミオのような熱い人間の気持ちが分からない」しかし神山は「俺は役を変える気はない」と言い切る。「俺じゃダメなのに・・・」。真逆の二人が、ジャニーズの楽曲を挟んで交差していく。
増田は、地味な青年と、恋と友情に燃える少年という対極な役を演じる。始めの稽古場シーンでは増田だと気づかないほど存在感を薄くしているのに、ロミオの衣裳を身につけ歌い踊り始めると、同じ人とは思えないほど華をまとう。何万人もの前に立つアイドルなのだと、理屈ではなく実感させられる。さらに、ジュリエット役の二宮が真面目で芯のあるヒロインを演じていることで、悲劇が引き立った。
構成・脚本・演出の佐渡岳利には、グローブ座で増田主演の舞台を演出することが決まった時「増田さんの歌声を活かすこと、グローブ座といえばシェイクスピア」というシンプルな発想が浮かんだ。そこから「歴代のジャニーズヒット曲で『ロミオとジュリエット』をやったら、おもしろいかも」との妄想を形にし、増田の“歌うロミオ”が誕生。歌って踊って演じてと、盛りだくさんの楽しみを1時間40分にぎゅっと込めた。
舞台の演出は初めてという佐渡だが、数々の音楽番組や劇場映画『WE ARE Perfume-WORLD TOUR 3rd DOCUMENT-』(2015年)の監督をつとめた経験から、演劇畑の演出家とは違い、『ロミオとジュリエット』をライブエンターテインメントに仕上げた。
長澤のまっすぐな演技が心地よい。ミュージカル研究会ではロミオ役を羨ましがりながらも、門田を力強く応援する。彼に感情移入していると、マキューシオとしてロミオと歌う「青春アミーゴ」(修二と彰/亀梨和也と山下智久)が胸に迫る。中谷は、現代でも物語の中でも門田とロミオの運命を変える重要な役どころ。長澤も中谷も歌手として活躍しており、高音の声は増田と重なっても相性がいい。
ジャニーズの楽曲については、共演者から「聴いていたけれど、実際に歌ってみると難しい」と言われたそう。増田も「皆で歌っている曲を一人で歌うと『これ、いつ息吸うんだ?』と思いました」と笑っていたが、舞台上ではしっかりと力強く歌い上げていた。
楽曲については「イントロを聞いただけで“この曲!”と分かるようなもの」。時代を超えて耳にしたことがあり、しかも物語に沿う楽曲がある。ジャニーズが、いかに長く人々の身近にあり、そのためにも多くの歌を作ってきたかが分かる。
劇中劇のロミオらの衣裳は、最近のアイドルを彷彿とさせるデザイン。対立するロミオのモンタギュー家と、ジュリエットのキャピュレット家は、それぞれ青と赤の衣裳。歌に合わせ、激しく二つの色が、交ざり合い、対立する。また「おおロミオ・・・」で有名なバルコニーが劇場の左右に対極に作られていたこともまた、楽曲のシーンでうまく利用されていた。
ゲネプロ後に登場した増田は、さっぱりした表情とは反対に汗が止まらない様子。1時間40分ほぼ舞台上におり、12曲を熱唱している。歌って踊る劇中シーンの直後は、すぐに現実のミュージカル研究会の場面になるので、ロミオから門田に戻ったシーンでは、涼しい顔をしながらも実は「汗でびしょびしょ。これがドラマなら“(シーンが)つながらない”ってなりますね(笑)」。
舞台の中で、地味な青年が主役に変わっていく。情熱的な少年もまた、恋を知り変わっていく。そして、ライブシーンでは人を惹きつけるアイドルであり、会見では気さくでまっすぐな受け答えだったりと、数時間の間にいろいろな顔を見せる増田。今年はNEWS結成15周年だが、増田個人にとっては「ジャニーズ所属20周年なんです」ということも、一つの区切りとして意識しているそう。重なった節目を越えた先に、さらに引き出しが増えそうな予感がする、そんな盛りだくさんのステージだった。
『Only You~ぼくらのROMEO&JULIET~』は、8月4日(土)まで東京・東京グローブ座にて、8月7日(火)から8月9日(木)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演。
(取材・文・撮影/河野桃子)