舞台『半神』が、2018年7月11日(水)のプレビュー公演にて開幕した。本作は、萩尾望都の短編漫画を、萩尾と野田秀樹が共同で舞台脚本化したもの。結合双生児の姉妹を主人公にした衝撃的な内容は、1986年に劇団「夢の遊眠社」で初演され注目を浴びた。今回の上演では、劇団「柿喰う客」の中屋敷法仁の演出が手掛け、新たな解釈で名作に挑んでいる。
結合双生児という数奇な運命を背負った姉妹、姉・シュラ役には乃木坂46の桜井玲香、妹・マリア役には日本舞踊家でこれが初舞台となる藤間爽子が務める。また、姉妹の家庭教師となる先生役に太田基裕、母役に七味まゆ味、父役に福田転球、老数学者・老ドクター役に松村武。このほか、永島敬三、牧田哲也、加藤ひろたか、田中穂先、淺場万矢、とよだ恭兵が出演している。
開幕にあたり、桜井、藤間、太田、演出の中屋敷よりコメントが届いている。
◆桜井玲香(乃木坂46)
幕が上がってからは一気に駆け抜けていく、まさにジェットコースターの様な舞台です。ご観劇いただく皆さんには、最後までしっかりとついてきていただきたいです!
最終的に遊びゴコロを芽生えさせるところまで行くことが目標なので、自分が持つパワーのすべてを使って、双子の姉であるシュラを演じたいと思います!
◆藤間爽子
中屋敷さんの演出はとにかく動く動く動く!
たくさん動きます。観客の皆様をひかせてしまうくらい、とんでもない演出を生み出す方です。大変なこともあったけれど、ピンクパンサーのぬいぐるみに毎日見守られながら笑いの絶えない楽しい稽古場でした。お稽古中、どんな時も一番に役者を信じてくれていたので、私は安心して自由にマリアを演じることができました。
私にとって初めての舞台。「緊張や不安でいっぱいです!」と言いたいところですが、まったく不安はありません!何故ならシュラがいつも横に一緒にいてくれるから!
◆太田基裕
中屋敷さんの稽古場は、僕は二度目だったのですが、相変わらずテンションと発想とが混沌とする稽古でした。『半神』は難解な戯曲ですが、何か人間の根底にあるものがふつふつと湧き上がるような作品だと思っています。いよいよ初日を迎えます。不安など、未知な部分がたくさんあります。しかし、お客様に僕自身の想いや美学が伝えられるように精進していきたいと思います。楽しんでください。
◆中屋敷法仁(演出)
『半神』という原作がはらんだ複雑怪奇な迷路。そこをさまよう俳優たちの姿が、醜くも美しい。音楽にDE DE MOUSEさん、振付にスズキ拓朗さんという気鋭のクリエイターをお招きし、演劇らしい魔法と詐術が絡み合う、不思議な亜空間が誕生した。目撃されるすべてのお客様の「人生」という劇世界が、さらに豊かに広がることを願っている。
痩せこけて醜い容姿ながら高い知能を持つ姉のシュラ(桜井)と、誰からも愛される美しい容姿だが知能が低く話すこともできない妹のマリア(藤間)。二人は、身体がつながっている結合双生児の姉妹だった。姉のシュラは、いつまでも愛らしく無邪気で周りの寵愛を一身に集める妹を疎ましく思いながらも、支えながら二人で生きていた。
しかし、10歳を目前に二人の身体はその負担に耐え切れず、だんだんと衰弱していく。救う方法はただ一つ、二人を切り離すこと。果たして、二人のゆく先は・・・?
急角度の八百屋舞台に大きな窓、敷かれた砂利。民家の縁側を模したような作りの舞台美術が、不思議な空間を生み出していた。コンテンポラリーダンスのような動きや、耳に残る音楽でPOPな印象。難解と思いがちな戯曲に、キャッチーな入り口からグッとギアを上げて演劇の世界に観客を引きずり込むような中屋敷マジックがこれでもかと散りばめられている。
桜井は、アイドルとして活動している時の美しさを思い出せなくなるほど、髪を振り乱し、醜く顔を歪めながら姉の中に潜む衝動を吐き出す。一方、藤間はマリアの無垢さを持ち前のピュアさで体現。シュラがマリアを邪険にしても、憎んでも、愛おしそうにその身体を抱きしめる姿が印象的だった。自我が芽生えるにつれ渦巻く孤独の感触、憎しみと背中合わせの愛・・・「半神」は何をもたらすのか。躍動する俳優の身体を通し“演劇”を体感してほしい。
舞台『半神』は、7月11日(水)から7月16日(月・祝)まで東京・天王洲 銀河劇場にて(7月11日はプレビュー公演)、7月19日(木)から7月22日(日)まで大阪・松下IMPホールにて上演。
【公式HP】https://www.hanshin-stage.jp/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部)