2018年6月4日(月)に東京・新国立劇場 小劇場にて、『夢の裂け目』が開幕した。本作は、井上ひさしが2001年に描き下ろした「時代と記憶」シリーズの一つで、『夢の泪』(2003年)、『夢の痂』(2006年)と並び「東京裁判三部作」と呼ばれる。市井の人々の生活から東京裁判、そして戦争の真実を、音楽でつづる井上流の重喜劇だ。
今回で上演は3度目。新国立劇場の開場20周年記念公演として、栗山民也の演出で再々演を果たす。
【あらすじ】
昭和21年6月から7月にかけて、奇跡的に焼け残った街、東京・根津の紙芝居屋の親方、天声こと田中留吉に起こった、滑稽で恐ろしい出来事。ある日突然GHQから東京裁判に検察側の証人として出廷を命じられた天声は、民間検事局勤務の川口ミドリから口述書をとられ震えあがる。家中の者を総動員して「極東国際軍事法廷証人心得」を脚本代わりに予行演習が始まる。そのうち熱が入り、家の中が天声や周囲の人間の「国民としての戦争犯罪を裁く家庭法廷」といった様相を呈し始める。そして出廷の日。東条英機らの前で大過なく証言を済ませた天声は、東京裁判の持つ構造に重大なカラクリがあることを発見するのだが・・・。
出演は、歴史的な裁判に巻き込まれてしまった庶民、主人公の紙芝居屋に段田安則。このほか、唯月ふうか、保坂知寿、木場勝己、高田聖子、吉沢梨絵、上山竜治、玉置玲央、佐藤誓が名を連ねている。
開幕に寄せて、栗山から以下のコメントが届いた。
◆栗山民也(演出)
井上ひさしさんは、いつも多様な笑いを生み出しながら、世の中の動きに対し、素直に怒ることを教えてくれました。
敗戦のあくる年の焼け跡を舞台に、国の責任、個々人の責任を問うこの作品が、まるで2、3日前に書きあがったかのように、今の壊れゆくこの国の姿をくっきりと映し出しています。まさに、私たちが今、向き合うべき「記憶についての劇」でしょう。
『夢の裂け目』は、6月24日(日)まで東京・新国立劇場 小劇場にて。上演時間は約3時間を予定。
【公演詳細】http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009665.html
(撮影/谷古宇正彦)