2018年4月7日(土)東京・本多劇場にて、今年25周年を迎える人気劇団ナイロン100℃の25周年記念公演第1弾『百年の秘密』が開幕した。この作品は、東日本大震災の翌年の2012年、劇団主宰で作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)が、人の生と死を見つめて描いた大河ドラマであり、観客の大きな支持を得た作品である。KERA自身がこの作品の再演を熱望し、近年の自作の中でも、渾身の出色作であると明言する作品。劇団結成25周年にふさわしい記念碑的な作品だ。以下、オフィシャルレポートを紹介。
ベイカー家の娘・ティルダ(犬山イヌコ)と、生涯の親友となるコナ(峯村リエ)の友情と、彼女たちの親や兄弟、伴侶、子供たちの物語が紡がれ、ベイカー家の屋敷の庭にどっしりと立つ大きな楡の木に見守られながら、時は移ろい、様々に展開してゆく。
ティルダは銀行家の父・ウィリアム(廣川三憲)とやさしい母・パオラ(松永玲子)の裕福な家庭に生まれ、変わり者の転校生のコナと友情を結ぶ。同級生のリーザロッテ(村岡希美)やチャド(みのすけ)と違い、ティルダはコナを大事に思う。ティルダの兄・エース(大倉孝二)はバスケット選手として大学の推薦入学も決まり、父の大きな期待を受ける。
その頃のベイカー家には明るい空気が満ちていた。エースの友人のカレル(萩原聖人)の来訪に、ほのかな思いを寄せるティルダは頬を赤らめる。隣人の弁護士のブラックウッド(山西惇)もベイカー家を訪れ、大きな屋敷には様々な人々が集う。女中のメアリー(長田奈麻)は、家事を取り仕切りベイカー家の様々な人間模様を見ている。穏やかな声の彼女の語りによって、この大きな物語は進行してゆく。
未来をまだ知る由も無い10代のティルダとコナの人生は、その後、それぞれが思わぬ展開をしてゆく。舞台では、ザッピングするように、時代を前後に行き来しながら人生の狭間に起こる出来事をコラージュのように見せてゆく。
次第に彼女たちの人生に何があったのか、どんな秘密が生まれ、そこにどんな真実があったのか紐解かれていく。描かれる時代が変わる度、俳優陣のどんな年齢の役も変幻自在に演じる様に、この劇団の底知れない力を思い知り、贅沢な気持ちにもなる。更に、キャストのステージングとプロジェクションマッピングがシンクロするオープニングも見どころだ。
初演から6年の時を経た今回、ドラマはさらに深まり熟成された。今を懸命に生きる人々に寄り添う作品にきっとなるに違いない。人生のままならなさを思い、自身の家族に思いを巡らし、時に胸が締め付けられ、いつしか涙を流している自分に気づく・・・。そんな作品ではないだろうか。
ナイロン100℃ 38th SESSION『百年の秘密』は、4月30日(月・祝)まで東京・本多劇場にて上演される。その後、兵庫、愛知、長野を巡演。詳細は以下のとおり。
【東京公演】4月7日(土)~4月30日(月・休) 本多劇場
【兵庫公演】5月3日(木・祝)~5月4日(金・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】5月8日(火)~5月9日(水) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール
【長野公演】5月12日(土)~5月13日(日) まつもと市民芸術館 実験劇場
(撮影/引地信彦)