2018年3月28日(水)より、東京・赤坂RED/THEAERにて碓井将大、赤澤ムック、粟根まことによる3人芝居『トリスケリオンの靴音』が上演される。3月20日(火)には公開稽古が行われ、出演者の3人と作・演出を手掛ける堤泰之(プラチナ・ペーパーズ)が取材に応じた。
物語の舞台は、とある田舎町。町の活性化のために、町出身の彫金家・見城海山の工房を資料館として公開しようというプロジェクトが持ち上がる。海山が亡くなって十数年。担当になった設計事務所職員・佐久間(碓井)はまだ若く、海山のことをよく知らないが、資料館の開設のために奔走する。資料館の管理人を任されたのは、海山の弟子だった土門(粟根)。資料館のオープンまで1ヶ月を切ったある日、海山の娘だと名乗る一人の女(赤澤)が突然現れ・・・。
公開稽古では、謎多き女が海山の工房へ帰ってくる場面が行われた。38年間そこに住み続け、掃除をし、花を生け続けてきた土門は、海山の失踪した妻と瓜二つの彼女の登場に驚きを隠せない。赤澤は、「やばいじゃん」「まじでェ」など砕けた口調や、男勝りな喋り方で周りを翻弄する、サバサバした人物を自然体のまま演じた。
続けて公開されたのは、その翌日と、佐久間が東京へ一度去り戻ってくる場面の二つのシーン。これまで静かな口調で話していた土門が、声を荒げて感情を一瞬露わにするシーンは見どころの一つとなりそうだ。女と佐久間との掛け合いからだんだんと見えてくる町の様子や、彼らの周りにいる人物像もおもしろく、佐久間のリアリティ溢れる立ち振る舞い。碓井の見せる繊細さが光った。
実は、東京・赤坂RED/THEAERという劇場だけ抑え、出演者も脚本も決まっていない状態で走り出したという本作。キャストが「このメンバーなら出演します」と賛同したのが今回の3人であった。その後、キャストと堤の間で「どんな役がやりたい?」「ストーリーは?」などの話し合いが重ねられ、脚本が完成したのは、なんと稽古初日の早朝4:00!
粟根はこのことについて触れ「稽古初日に脚本が手元に来たので大変な部分もありましたが、すごく濃密な稽古ができました。やっていてすごく楽しいです」と、振り返った。堤は「1カ月くらい前にはお渡ししたかったんですけどね・・・(笑)」と恥ずかしそうな笑みを見せながらも「それでも皆さん、台詞を入れるスピードが尋常じゃないですね。とにかくバッチリです」と3人を称賛。
碓井は、本作の見どころについて「登場人物に血縁関係はないのですが、これは親子や家族を主題にしている作品なので、その部分に注目してもらいたいですね。それから、会話のテンポがよく、コントのように見える瞬間があるので(笑)。そういうところはいっぱい笑って欲しいです」とコメントした。
最近では、脚本家、演出家としての活躍が目立つ赤澤は、これが約7年ぶりに役者として舞台に立つ作品となる。それに対し、赤澤は「久しぶりに出演する作品が、これでよかった」と語り、「作品では登場人物たちの関係性の変化を楽しんでいただけると思います」と続けた。さらに、脚本は堤による“あてがき”いうことで「だからなのか分からないですけど、台詞がすごく入りやすいですね」と笑顔を見せた。
タイトルになっている“トリスケリオン”とは、ポスターにも描かれている3本の脚が風車のように組み合わさった三脚巴紋のこと。この言葉の示す本当の意味は、舞台を観終わった後に理解できるという。堤は「このマーク、そして出演者3人だけが揃っていた状態でストーリーを作っていったので、色々なところで“トリスケリオン”に戻ってきます」と、これが重要な鍵を握ることを明かした。この話の後には、碓井と粟根がマークの体現に挑戦。稽古場の温かな雰囲気が伝わってきた。
会見の最後には堤が「この3人でとても濃密な空間を作ることができそうな予感がしています。ぜひ劇場にいらしてください」と締めくくった。
『トリスケリオンの靴音』は、3月28日(水)から4月8日(日)まで東京・赤坂RED/THEAERにて、5月11日(金)から5月13日(日)まで大阪・一心寺シアター倶楽にて上演される。
(取材・文・撮影/エンタステージ)