映画、小説、ミュージカル、漫画など、様々な形で語り継がれる悲劇の王妃マリー・アントワネット。彼女の生涯を、人間国宝の観世流シテ方能楽師の梅若玄祥が能に仕立てた『~薔薇に魅せられた王妃~現代能 マリー・アントワネット』が、2017年12月12日(火)から東京・国立能楽堂にて上演される。本作の記者発表会が10月25日(水)行われ、玄祥のほか、振付・長唄作調の藤間勘十郎、脚本を務める植田紳爾、女優の未沙のえる、プロデューサーの西尾智子が登壇し、作品への思いを語った。
本作は、フェルゼンの前に亡霊となったマリー・アントワネットが現れ、その生涯を語るという「夢幻能」(霊的な存在が主人公となる能)として描かれる現代能。宝塚歌劇団で幾度となく再演されてきた名作『ベルサイユのばら』の脚本を手がけた植田が脚本を担当し、アントワネットが王妃として嫁いでから断頭台に消えるまでの後半生を描くという。
会見で玄祥は「僕は宝塚が大好きなので、『ベルサイユのばら』は何十回と拝見しており、いつかこの女性を演じてみたいと思っておりました。人気のある作品を、さらに能としてやるのは難しいことかもしれませんが、挑戦してみようと。能に新しい風を吹かせたい、そんな思いです」と熱く語った。
宝塚時代にメルシー伯爵役で『ベルサイユのばら』に出演したこともある未沙は「伝統芸能である能に携わらせていただくだけでも、本当に光栄に思っております。ドキドキワクワクしています」と笑顔。
玄祥の息子にして舞踏家、振付家としても活躍する勘十郎は「(この作品の概要を聞き)何のことやら分かりませんでした」と笑いを誘いつつも「数々の名作を生み出した植田先生がいらっしゃいますし、父(玄祥)はどんなものでも能にしてきておりますので、マリー・アントワネットも見事なものになるのではないかと思っております」とコメントした。
マリー・アントワネットの半生を描く際に欠かせないのが断頭台のシーン。その演出について植田は「(能の演目である)『楊貴妃』を観たときに、(この形ならばアントワネットも)やれるんじゃないかと思ったことがあったので、今回もそういう形でやってみたいと思っています。ただ、『楊貴妃』は男女二人の話ですが、アントワネットは国というものに融和し、革命の中、皆の前で断頭台にあがるという展開なので、そのスケール感を出したい」と明かした。さらに本作では間狂言(登場人物の紹介や物語の説明などを務める狂言)風の長唄を創作し、作品に華やぎを添えるという。
マリー・アントワネットという広く知られる人物を題材にしているだけに、能楽ファンのみならず、能になじみのない人からも注目を集めている本作。玄祥は「この作品を観れば、能とはこういう世界なんだということを分かっていただける作品になると思います。僕自身も楽しみにしています」と作品の魅力を語った。
【出演】
梅若玄祥・福王和幸・未沙のえる・北翔海莉
笛:松田弘之
小鼓:大倉源次郎
大鼓:亀井広忠
太鼓:林雄一郎
後見:小田切康陽・松山隆之
地謡:山崎正道・馬野正基・角当直隆・谷本健吾・川口晃平・坂真太郎
長唄:吉住友孝・吉住小三友
三味線:苫舟
唄:吉住小代英・吉住小十秀
『~薔薇に魅せられた王妃~現代能 マリー・アントワネット』は、12月12日(火)に東京・国立能楽堂にて上演される。
(取材・文・撮影/嶋田真己)