愛希れいか×清水くるみインタビュー!『キュリー夫人の物語』ではなく、ミュージカル『マリー・キュリー』である意味

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日本初演を迎えている、韓国発のミュージカル『マリー・キュリー』。本作は、ラジウムを発見し、ノーベル賞を二度受賞した女性科学者マリー・キュリーを題材に、Fact(歴史的事実)とFiction(虚構)を織り交ぜた「ファクション・ミュージカル」だ。

マリー・キュリーと言えば、子どもの頃に読んだ伝記などで「キュリー夫人」としてその名を知った人も多いだろう。女性であることが科学の道に進む上での足かせとなっていた彼女の人生に、フィクションを織り交ぜ「ありえたかもしれない」として描かれたこの物語は、まさに“今”という時代の写し鏡なのかもしれない。

そんな本作について、実在の人物マリー・キュリー役を演じる愛希れいかと、虚構の人物として、マリーの人生に関わるアンヌ役の清水くるみに語ってもらった。

――本作は、稽古場での通し稽古が多く行われるなど、作品を深める取り組みができたそうですね。

愛希:そうですね、繋がってから見えるもの、考えることがすごく多くて。早めに全体を見通すことができたのはとても大きかったです。

清水:かなり早い段階から、ああしよう、こうしようって話し合いが出来ていたのは大きかったですね。

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――「マリー・キュリー」「キュリー夫人」というと、小さい頃に伝記などで読んだ、という印象を持たれる方も多いのではと思うのですが、お二人はこの題材の面白さをどんな風に感じていますか?

愛希:この題材を「ミュージカルで描こう」という発想自体が、とても面白いですよね。私、最初は、ノーベル賞を受賞した科学者をどうやるんだろう?と全然想像がつかなかったんです。でも、戯曲を読んだり、韓国での公演を観てみたりしたら、夫のピエールとの関係などもちゃんと“人間ドラマ”として描かれて。さらに、そこにアンヌのようなフィクション(虚構)の存在が加えられることによって、「こうだったかもしれない」という、偉大な“科学者”というだけでない、マリー・キュリーという女性の物語が広がっていくのがすごく面白いなと思いました。

清水:思いついた方がすごいですよね。

愛希:そうだね。偉人には、いろんなエピソードがあるから物語の主人公になりえるけど、例えばエジソンのミュージカルは、まだないじゃない?やっぱり、難しいからだと思うの。モーツァルトは、音楽があるからミュージカルにできているだと思うんだよね。

清水:確かに!

愛希:科学の作業を、舞台で表現しようとするとすごく難しいと思うんだよね。でも、そこに彼女の人間らしさがある。女性であること、ポーランド人であることに対するコンプレックスや乗り越えたい障害を力に変えていくところに私たちは共感するし、響くものがある。今の時代で考えると、メッセージ性の強い人物とも捉えられるから、フィクションを盛り込むことでその側面を強化することで、面白いミュージカルになっているんだと思います。

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――清水さんは、まさにその“フィクション”を担う中心的役割ですが、事実が取り巻く中でどのように役作りをされましたか?

清水:あの、観ていただいた方はどう思われるか・・・なんか、演出の裕美さんのイメージでは、私がそのまんまらしいんです。「みんな、その要素がある人を選んでいるから」っておっしゃっていたんですけど、確かに、結構正直にものを言うところは、近いものがあるかもしれないと思って演じています(笑)。

愛希:あはは、ほんとにそのまんまだと思う(笑)。

清水:アンヌは科学については全然分からない子なので、私も科学的な知識とかは細かくは入れないで、アンヌがマリーに発する台詞が新鮮に聞こえるようにしようって思っています。

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――愛希さんは、「実在の人物」という真逆の存在ですが、役作りについて何か工夫されたことはありますか?

愛希:伝記などを読みつつも、台本の中の彼女から受けるものを大事にしたいと思いました。彼女の本質的な部分は資料から読み取れますが、科学に対する愛情などが乗ると+αが乗ると思うんです。そういう部分を意識しながら、役作りはしていきましたね。でも、「マリーに近いものがあるね」って言われると、「私、大丈夫かな?!」ってちょっと不安に思ったり(笑)。

清水:周りが見えなくなってしまう感じは、ちゃぴさん(愛希の愛称)にはまったくないですよ(笑)!でも、努力家というか、一つの物事にぐっと入り込んで追求し続けるところとか、ストイックなところを見ると、マリーだな~って思います。

愛希:確かに、理解できるなって思う部分は多いなあ(笑)。彼女を演じることで、自分の中にも発見がありました。

――お稽古に入られる前と、今で、何か作品に対して受け取り方が変わったりしたことはありますか?

愛希:変わったというよりは、深まったと言った方がよいのかな。

清水:そうかもしれない。私、いつも感覚でやっちゃう人間なんですが、裕美さんの演出がより役への理解を深めてくれて、だいぶ解釈が変わりました。

愛希:作品自体が会話劇のような一面もあるんですよね。ミュージカルだけれど、劇的なことばかりが起きるわけじゃない。「元素を発見する」こともコツコツやった結果だし、裕美さんもおっしゃっていましたが「ラジウムを発見する」のも、爆発が起こる!とかそういう派手なことはない。そこに音楽がついて歌い上げるから、劇的になるんだなって。

清水:ミュージカルなので曲もいっぱいあるけど、しっかり言葉を交わす芝居をします。これも韓国ミュージカルの良さの一つですよね。

愛希:そうだね。韓国ミュージカルの良さが、実際に形になるとすごく見える作品かもしれないです。

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――また、この作品が「女性解放運動をきっかけで生まれた」というのも、演劇が時代を映す鏡であると感じさせてくれますね。

清水:あの・・・マリー・キュリーって、伝記などでは「キュリー夫人」となっていたりして、“名前”で呼ばれていなかったじゃないですか。本当は、マリー・スクウォドフスカ=キュリーなのに。それって、今の「◯◯ちゃんのお母さん」って呼ばれる、というのと同じなのかなって思うんです。私たちはこの作品を深掘りして辿り着いてるけど、このインタビューを読んで観てくださったら、また改めて共感していただけるんじゃないかなって。

愛希:「名前」は、私もすごく気になるところだった。「あなた」とかじゃなくて、「名前で呼ばれること」って、誰しも嬉しいことだよねって。それから、マリーが生きた時代は科学の道に進む上で“女性”であることがハードルになっているんですが、今、性別なんて関係ないという時代になってきています。自分がやりたいことに誰でも挑戦できる環境であるべきだし、やっていいんだって、改めて若い方たちには夢とか希望を感じていただけると思うし、改めて自分のあり方を考えていただける機会になるんじゃないかなと思います。

清水:歴史の勉強にはならないかもしれないですが!

愛希:そうだね、フィクションが混ざっているからね(笑)。勉強にはならないかもしれないけれど、背中は押せる作品です。

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――音楽も、韓国ミュージカルの質の高さを感じます。

清水:メッセージ性が強い、みたいな言い方しちゃうと難しく伝わっちゃうかもしれないけど、ただただ曲がいいんです!ミュージカルを観るのはもちろん、音楽を聞くのが好きな人にも、来ていただきたいです。

愛希:音楽、全部いいよね。

清水:うん、1回聞いたら覚えちゃうぐらい、印象的。いざ歌ってみようとすると結構難しいんだけど、忘れられないメロディだと思います。

――このシーンの、あの曲好き!なポイントお聞きしてもいいですか?

清水:私は、マリーがピエールから誕生日プレゼントを受け取るところで歌う「予測不能で未知なるもの」がすごく好きなんですけど、最近、違う曲もブーム来ちゃった。

愛希:あ、違うの来た?

清水:そう。マリーがラジウムを使って治療するシーンで目の見えない女の子に歌いかける「誰も知らない道」というナンバーがね・・・。気がつくと、家で歌っちゃってたりします(笑)。ちゃぴさんは?ちゃぴさんの好きな曲、そういえば聞いたことなかったです。

愛希:好きな曲っていうか、私ね、劇中の2曲目でマリーとアンヌが歌う「すべてのものの地図」の、アンヌが歌うフレーズがすごく好きなの。「素敵な~夢が~♪」っていうところ。ここが大好きで、練習していると絶対歌っちゃうの。自分のパートじゃないから、本番では絶対歌わないけど。

清水:へぇ~!これ聞いたら、毎回「ココ、ちゃぴさん歌いたいのか~」って思っちゃいそう(笑)。

愛希:違うの違うの、自分が歌いたいから練習で歌っちゃうんじゃなくて、すごくアンヌっぽいな~って思うから、くるみの歌い出しがすごく好きなの。

清水:え~!ますます意識しちゃいそう(笑)。

愛希・清水:素敵な~夢が~♪(突然のデュエットでも息ピッタリなお二人)

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――お二人の仲の良さを含め、とても雰囲気のいい座組だなと感じます(笑)。

清水:今回の稽古場、ピエール役の上山竜治さんが、毎回伝説を作っていってるんですよ(笑)。

愛希:毎日、何かしら作ってくれるよね(笑)。

清水:この前、すごくツボっちゃったことがあって・・・。マリーとピエールが科学のことですごく盛り上がっているシーンがあるんです。アンヌも科学については分からないけどそれにわ~っと加わって、結果、マリーとアンヌが個人的な話を始めてしまって、ピエールが取り残される、という・・・。その、上山さんの取り残され方が、すごく面白くて・・・(笑)。

愛希:(思い出し笑いが止まらなくなる愛希さん)。

清水:顔が・・・表情が絶妙で最高だったんです。

愛希:たまに、ない台詞が出ちゃったりする時もあるんだよね。

清水:「それは僕の知らないことだ・・・」みたいな、台本にはない台詞を、小さーい声で呟いていたりするんです。面白すぎるので、本番ではやっていただきたくないのですが(笑)。

愛希:喜ぶシーンで、喜びすぎて一瞬ピエールじゃなくなっちゃってたりね(笑)。なんであんなに面白いんだろう・・・。

清水:屋良さん(ルーベン役の屋良朝幸)が踊るアニメーションダンスの真似をして、全然出来てなかったり。

愛希:また屋良さんが優しくちゃんと教えてくれてるから、もう・・・(愛希さん、またしても思い出し笑い)。

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――すごく雰囲気が伝わってきました(笑)。多くの方に、本作の良さが届くといいです。

清水:ミュージカルという時点で、全然難しくないですし、話が分からないってことは絶対にないはずなので!アンヌのように科学は分からなくても、泣けちゃうような、美しいメロディの音楽がいっぱいです。そして、お芝居の要素も強いです。音楽好きな人、ミュージカルが好きな方にはぜひ観てほしいです!

愛希:ミュージカルがちょっと苦手という方も、きっとすっと物語に入っていただけると思います。今の時代にぴったりなエンターテイメント作品なので、ぜひ楽しんでください。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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ミュージカル『マリー・キュリー』公演情報

上演スケジュール・チケット

【東京公演】2023年3月13日(月)~3月26日(日) 天王洲 銀河劇場
【大阪公演】2023年4月20日(木)~4月23日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

スタッフ。キャスト

【脚本】チョン・セウン
【作曲】チェ・ジョンユン
【演出】鈴木裕美
【翻訳・訳詞】高橋亜子

【出演】
愛希れいか 上山竜治 清水くるみ
能條愛未 宇月颯 清水彩花 石川新太
坂元宏旬 聖司朗 高原紳輔 石井咲 大泰司桃子/屋良朝幸

公式サイト

【公式サイト】https://mariecurie-musical.jp/
【公式Twitter】@mariecurie_jp




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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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