佐々木蔵之介主演の舞台『リチャード三世』が、2017年10月18日(水)に東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて開幕した(10月17日にプレビュー公演を実施)。このシェイクスピアの史劇を、ルーマニアの演出家シルヴィウ・プルカレーテが、初めて日本の俳優への演出を手掛け、まったく新しい装いで上演する。初日に先駆けて行われた公開ゲネプロと囲み会見では、佐々木のほか、手塚とおる、今井朋彦、植本純米(植本潤改メ)、長谷川朝晴、山中崇が登壇し、作品の印象や意気込みなどを語った。
会見の冒頭、佐々木は真っ先に今回の舞台衣裳やメイクを引き合いに出し「まだハロウィンでもないのにおっさんたちが何を仮装してるんや、と思われるかもしれませんが、大まじめでやっています。やる気満々です!」と笑いを交えつつ、意気込んだ。
本作の出演者は、男性15名、女性1名という、ほぼオールメールで演じられる。アン夫人の手塚は、真っ赤なドレスを身にまとっての登場し「この中では最年長で55歳になるんですが、こんな格好をしています。この意気込みをわかっていただけたら(笑)」とコメント。
リチャードの兄、エドワード四世の妻であるエリザベス(グレイ夫人)を演じる植本は「2、3日前に蔵ちゃん(佐々木)が、ツカツカと目の前にやってきて『いい!すごくいい!』と言ってスッといなくなりました(笑)。そんな座長の言葉を信じてがんばろうと思います」と、座長である佐々木に信頼を寄せる。一方で、劇中での佐々木については「(佐々木の髭が)顔に当たってジョリジョリになるんです(笑)」と苦笑気味に明かした。
「将来的に『あの伝説の舞台を観たんだ!』と言われるような作品になるのでは」と力説したのは、リチャードの兄・クラレンス役を務める長谷川。リチャードの参謀・バッキンガム公役を演じる山中も「とても刺激的な日々を送らせていただいています。出演する僕らもそうですが、観に来るお客様も今までに味わったことのない演劇体験ができるんじゃないかと思っています」と自信をみなぎらせた。
そしてマーガレット役の今井は「このメイクでお分かりかもしれませんが、生きているのか死んでいるのか分からない役をやろうとしています・・・。舞台上ではなるべく摩訶不思議な存在でいようと思います」と不敵に笑った。
ピカレスクとして描かれる“リチャード三世”について、佐々木は一緒に登壇した共演者を見回し、「だいたい殺しています!」とざっくり説明。すると、今井も「蔵之介さんが殺して殺して殺しまくる役なら、僕は呪って呪って呪いまくる役。結構、呪うって気持ちいいですね(笑)」と不穏なことを口にし、共演者たちをざわつかせていた。
また、プルカレーテの演出に、相当大きな刺激を受けてきた様子の一同は「稽古の初日から、『そんな角度からこの本を読むの?』という、驚くばかりの日々でした。演劇人として幸せな瞬間ばかり。こんなに楽しいことはないです」という佐々木の言葉に、うなづくばかり。
その言葉どおり公開ゲネプロでは、劇場中に興奮が満ちていた。プレイハウスの空間をフルに使った舞台美術の中に、15世紀のイングランドが見える。しかし、これは間違いなく“今を生きる人間”が作り出す光景なのだと感じた。
王位をめぐるランカスター家とヨーク家の争い(薔薇戦争)の中、ヨーク家・王の弟で、野心家のリチャードは、自身が王座を手に入れるために、知略の限りを尽くし、残虐非道な企みに手を染めていく。友、先王の息子、王妃、実の兄でさえも、自分にとって邪魔な存在を次々と葬り去る。王座に上り詰めたリチャードを、最後に待ち受ける運命とは・・・。
佐々木は、悪夢のようなリチャードの行いを、鮮烈かつ大胆にみせていく。時には道化のように、時には稀代の色男のように、悪漢としていきいきと輝いていた。プルカレーテの演出は、確かに斬新だ。ポップさとグロテスクさ、くすっと笑ってしまうような軽妙さと腹の底に沈むような重厚感。色相環の補色関係のようでありながら、時折ハレーションを起こすような感覚におそわれた。
会見の最後、佐々木は「危険で凶暴で、でもエロチックで、なんとも美しく、エンターテインメントな芝居です。ぜひ、劇場に楽しみに観に来てください」と挨拶し締めくくった。
もし、元のシェイクスピアの戯曲をご存じない方や、イギリスの歴史に明るくない方は、観劇前に人物相関図を頭に入れておくと、より一層作品に没頭して楽しめるかと思う。存分に、悪計の行く末をすみずみまで見届けてきてほしい。
『リチャード三世』は10月18日(水)から10月30日(月)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、大阪、盛岡、名古屋を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】10月18日(水)~10月30日(月) 東京芸術劇場 プレイハウス
※10月17日(火)はプレビュー公演
【大阪公演】11月3日(金・祝)~11月5日(日) 森ノ宮ピロティホール
【盛岡公演】11月8日(水) 盛岡市民文化ホール 大ホール
【名古屋公演】11月15日(水) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
(取材・文/エンタステージ編集部、撮影/河野桃子)