2020年10月15日(木)に東京芸術劇場 プレイハウスにて、舞台『真夏の夜の夢』が開幕した。本作は、野田秀樹がシェイクスピアの喜劇「夏の夜の夢」を潤色し、1992年に「野田秀樹の真夏の夜の夢」と題して初演された作品。今回、ルーマニアを代表する演出家シルヴィウ・プルカレーテの手で上演する。出演は、鈴木杏、北乃きい、加治将樹、矢崎広ら。
野田とプルカレーテは、お互いの国での上演の度に親交を深め、野田が芸術監督を務める東京芸術劇場ではこれまでに『ルル』『ガリバー旅行記』『オイディプス』と3作のプルカレーテ作品を招聘。2017年には、プルカレーテが初めて日本人俳優を演出して『リチャード三世』を上演した。
そしてついに、この『真夏の夜の夢』で野田とプルカレーテのタッグが実現。”野田版”『真夏の夜の夢』の舞台となるのは、アテネの森ではなく日本の富士の麓。貴族たちの恋の物語は割烹料理屋の人々の物語へと書き換えられ、さらには別作品『ファウスト』の悪魔・メフィストフェレスが乱入する。
野田の真骨頂である彩り豊かな言葉遊びと重層的な物語は、嫉妬や憎悪といった人間のもつ闇の部分も織り込みながら、切なく美しい喜劇を描き出す。この戯曲が、プルカレーテの手にかかりどう動き出すのか・・・。
出演は鈴木、北乃、加治、矢崎のほか、今井朋彦、加藤諒、長谷川朝晴、山中崇、河内大和、土屋佑壱、浜田学、茂手木桜子、八木光太郎、吉田朋弘、阿南健治、朝倉伸二、手塚とおる、壤晴彦。
東京芸術祭2020 東京芸術劇場30周年記念公演『真夏の夜の夢』は、以下の日程で上演。上演時間は約2時間を予定。
【東京公演】10月15日(木)~11月1日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【新潟公演】11月7日(土) 8日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
【松本公演】11月15日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
【兵庫公演】11月20日(金)~11月22日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【札幌公演】11月27日(金) 札幌市教育文化会館 大ホール
【宮城公演】12月5日(土) えずこホール(仙南芸術文化センター)大ホール
【公式サイト】https://midsummer-nights-dream.com
【公式Twitter】@MidsummNights
あらすじ
創業130年の割烹料理屋「ハナキン」。その娘・ときたまご(ハーミア/北乃きい)には許婚がいた。板前のデミ(デミトリアス/加治将樹)である。デミはときたまごを愛していたが、彼女は板前のライ(ライサンダー/矢崎広)に恋心を寄せていた。ときたまごとライは<富士の麓>の「知られざる森」(アーデンの森)へ駆け落ちする。それを追いかけるのはデミと、彼に恋をしている娘・そぼろ(ヘレナ/鈴木杏)。森では妖精のオーベロン(壤晴彦)とタイテーニア(加藤諒)が可愛い拾い子をめぐって喧嘩をしている。オーベロンは媚薬を使ってタイテーニアに悪戯をしようと企み、妖精のパック(手塚とおる)に命令する。ついでにそぼろに冷たくするデミにも媚薬を使おうと思いつく。しかし悪魔メフィストフェレス(今井朋彦)が現れ、パックの役目を盗みとる。そこに「ハナキン」に出入りしている業者の面々が結婚式の余興の稽古にやって来て、事態はてんやわんやに・・・。
コメント紹介
◆鈴木杏:そぼろ(原作ではハーミア)役
ずっとリモートでの稽古だったので、やっとプルカレーテさんにお会いできて、本当に嬉しいです。稽古場で、日々違うことをおっしゃるので、ついていくのに必死でしたが、演出が覆されるのは面白く思います。
夢の中のようなシーンが、それぞれ繋がっていても、断片的に飛んでいくような面白さがあります。野田さんの作品は何作も観ていますし、ワークショップに参加させてもらったりもしていましたが、プルカレーテさんの世界観で野田さんの戯曲をみると、こう変わるのか!という印象の違いに驚きました。喜劇というよりダークファンタジーです。私の演じるそぼろは人と自分を比べて卑屈になったり、愛が暴走して空回りしてしまったり。若いころにはありがちかも・・・と共感できるキャラクターです。
プルカレーテさんの天才的で、ほとばしるセンスを思う存分楽しんでいただけるようがんばります。ぜひそのセンスを、劇場で一身に浴びていただけたらと思います。
◆北のきい:ときたまご(原作ではハーミア)役
私が台本を読んで想像するところは、プルカレーテさんの中での10%くらいで、プルカレーテさんは私にはない世界観で、想像のもっともっと上をいっている、そんな驚きのある稽古場でした。想像のつかないシーンばかりで、「芝居には正解が無い」とよく言われますが、今回改めてそう思いました。
そして、共演の大先輩の壤さんや今井さんがウィスパーボイスの出し方やアカペラでの音のとり方を教えてくださいました。自分一人では、プルカレーテさんの「トレビアン!」は貰えなかったと思います。本当に贅沢な経験をさせていただきました。
見たことの無い世界観、聞いたことのない音楽であふれている作品です。今回、ツアーで5ヶ所回りますが、行ったことのない地域もあるので、とても楽しみにしています。ぜひ、観に来ていただければと思います。
◆加治将樹:板前デミ(原作ではデミトリアス)役
台本を読んで、キャラクターやシーンに、「こういう風だろう」というイメージを持って臨むと、ことごとく全部違って、ものすごい方向からプルカレーテさんがアイデアを出してくださる。すごく面白くて、独特な世界観で初日からワクワクが止まらない稽古場でした。とにかくプルカレーテさんの頭の中を表現する、具現化することに専念しました。野田さんとプルカレーテさん、こんな化学反応が起きるんだ!と。お客さまも誰も想像していない世界だと思います。どんな反応をいただけるか、それも楽しみです。
いい意味で裏切りのある、五感で楽しめる作品です。劇場は俳優にとってもお客様にとっても精神を解放できる非日常の場所だと思いますが、まさしくそれを体験できる作品です。ぜひ、劇場で楽しんでください。
◆矢崎広:板前ライ(原作ではライサンダー)役
プルカレーテさんは、『真夏の夜の夢』という作品に対して、僕のこれまでの人生経験ではとても太刀打ちできないくらいに、面白い解釈をされる演出家でびっくりしました。しかも、とても突拍子もない奇抜な演出であっても、演じてみると役者の心情的にはとても楽なところに収まっていくのにも、本当に驚きました。
稽古ではあまり固めずに、段取りはあっても「生」で起こること、人間が起こすことにプルカレーテさんは期待されていて、僕も毎日リセットしながら稽古するようにしていました。いらっしゃるお客様も状況も日々変わる。どう転んでも、共演の方々が受け止めてくださる安心感があるので、そんな変化も楽しんでいけたらと思います。
いろんな人の気持ちがいろんな場面でリンクする作品です。ぜひ、この真夏の夜の夢の森に迷い込んでいただいて、感じていただけたらと思います。
(撮影/田中亜紀)