劇団青年座が、この夏より演劇界注目の劇作家の新作を連続上演する。第1弾として取り上げるのは、劇団チョコレートケーキの古川健が書き下ろした『旗を高く掲げよ』。歴史上の出来事を題材に、独自の視点で骨太な戯曲を創作する古川は、本作のタイトルを国家社会主義ドイツ労働党の党歌からとったという。演出は、新作の立ち上げに定評のある黒岩亮が手掛ける。
物語の舞台は、第二次世界大戦下のドイツ・ベルリン。「模範的なファシストは、模範的な市民でありえる」言い換えれば「模範的な市民は、模範的なファシストになりうる」を基本テーマとし、一人の男とその家族が変貌する様を、序章と終章を含む6つの時代を追って描く。
【あらすじ】
1939年9月、ドイツ軍がポーランドに侵攻し第二次世界大戦は勃発した。その前年から物語は始まる。
歴史教師のハロルドは善良なる市民。妻レナーテ、娘リーザ、妻の父コントラートとベルリンに暮らすミュラー家は、ごく一般的なドイツ人家庭。
1938年11月、ドイツ各地で起こったユダヤ人に対する組織的暴動事件(水晶の夜)直後、事件を受けて亡命を決意したユダヤ人の友人オットーが今後のドイツを憂える。妻レナーテはナチス支持者で、時流に乗らない夫に物足りなさを感じている。夫、妻、義父、夫の友人、妻の友人、それぞれの立場からナチスドイツを語る。その数日後、SS(ナチス親衛隊)の友人ペーターが、ハロルドに歴史の専門知識を活かした仕事をしてほしいとSSへの入隊を奨める。乗り気のレナーテに対し、二の足を踏むハロルドだったが・・・、迷いながらもついに入隊を決断する。
1940年7月フランスの降伏、1942年4月ホロコースト(ユダヤ人の組織的大量虐殺)開始、1944年9月ドイツ軍敗色濃厚、1945年4月ベルリン陥落寸前、そして・・・。
ドイツ崩壊が進むにつれ、反比例するかのうようにナチスへ傾倒していく家族。ナチス独裁政権下のベルリンを舞台に、物語は時を移して転がっていく―。
出演は、山野史人、石母田史朗、小豆畑雅一、豊田茂、嶋田翔平、鹿野宗健、渕野陽子、松熊つる松、田上唯、市橋恵。
また、公演中には、本年度新作を書き下ろす劇作家や青年座劇場に縁のある演劇人をゲストとして招き、青年座劇場4公演を横断するリレー形式のアフタートークの開催も決定している。
劇団青年座227回公演『旗を高く掲げよ』は、2017年7月28日(金)から8月6日(日)まで東京・青年座劇場にて上演される。チケットは、6月13日(火)より前売開始。