2017年6月1日(木)、角野栄子原作の児童書を舞台化したミュージカル『魔女の宅急便』が、東京・新国立劇場 中劇場にて開幕した。初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、上白石萌歌、阿部顕嵐(ジャニーズJr)、岩崎ひろみ、横山だいすけ、藤原一裕(ライセンス)、白羽ゆりが登壇。作品の見どころや意気込みを語った。
本ミュージカルの原作である『魔女の宅急便』は、児童文学作家の角野栄子氏が1982年~2009年の27年間に渡り執筆した全6巻の児童書。1989年にスタジオジブリが制作したアニメーション映画が大ヒットし、宮崎駿監督の代表作としても知られる。さらに1993年から1996年には蜷川幸雄氏の演出によってミュージカル化、2014年には清水崇監督のもと実写映画化、2016年にはイギリス・ウエストエンドにて舞台化されるなど、日本のみならず世界的にも有名な作品となった。
キキ役の上白石は、この日が初めて全体を通しての稽古だったことを明かすと「その分気持ちも繋がったし、私自身も成長している気がします。(本番は)もっと楽しめるんじゃないかと思います!」と手ごたえを感じた様子。トンボ役の阿部は「ジャニーズの舞台とは全く違うので、初めての事だらけで戸惑っています」と不安を覗かせつつ、「色んなところを皆さんから盗んでいます。某シーンの台詞を(横山)だいすけさん風に言ったり・・・(笑)」と打ち明け、新たな環境でさまざまな刺激をもらっているようだった。
キキの父親であるオキノ役の横山(中井智彦とWキャスト)にとってもNHK Eテレ『おかあさんといっしょ』を卒業してから初の舞台出演となるが、「毎日が新鮮な気持ちで楽しい稽古でした。今回は“おにいさん”から“お父さん”役になるので、キキちゃんとの関わり方やコキリさんとの夫婦感についても考えています」と、新たなステージへの意気込みを語った。オキノの妻でありキキの母親役である岩崎も、横山との関係性について「ずっと一緒にいる役なので、嘘のない関係であり仲のいい家族でいられるように、普段から会話するよう心がけています」と現場での様子を伝えてくれた。
ジブリ作品で『魔女の宅急便』を知ったという上白石は、「アニメの世界観で固まってしまわないように・・・」と原作の小説を読んで役作りしたことを告白。その一方で阿部は、同じくジブリ作品から知って原作も読んだというが「逆にアニメを見直すことで自分なりに解釈して、どうしたら違うトンボ像ができるだろう?って考えました」と振り返り、上白石とは異なる視点で役にアプローチしたことを明かした。
また阿部は、男性ばかりのジャニーズの舞台との違いを聞かれると「一番気にしたのは着替えです・・・」と教えてくれた。「(人目のある)楽屋の前とかで脱いじゃうのでなるべく控えようと思います」と反省を語るも、すかさず横山から「さっき脱いでたよ!(笑)」とツッコミが飛んで笑いを誘った。このやりとりを受けてパン屋の女将・おソノ役の白羽は「私も宝塚出身で、女性ばかりの中で堂々と着替えてたから気持ちは分かるので・・・。なるべく見ないようにしようと思います(笑)」とフォローし、また一同は笑いに包まれた。
劇中でトンボやキキを見守る役柄の白羽は「全編を通して妊婦役は始めてなので、挑戦だなと思っています。稽古場から(上白石)萌歌ちゃんと(阿部)顕嵐くんの10代のお芝居を見ていて、本当にキュンキュンしています。一番最初の合わせから少し慣れた頃の稽古、そして本番まで、それぞれ違う空気ができていくのを共有できるので、おソノさんの役柄と巡り会えて良かったなと思います」と温かい目で二人を激励した。
また白羽は、夫のフクオ役の藤原(なだぎ武とWキャスト)についても「すごく安心感があります」と頼りにしていた。話を振られた藤原は、フクオが一切喋らない役のため「喋っていいですか?(笑)」と様子を伺いながら切り出すと、「劇中で声を発するのは咳払い一回のみです」とフクオの見どころ(?)をアピール。「咳ばらいを何パターンも練習したし、マイクチェックも咳払いで行いました(笑)。咳払いに命掛けてます!」と訴え、キャストや記者たちの爆笑を誘った。
ミュージカル『魔女の宅急便』は、キキ誕生のシーンで幕を開ける。コキリとオキノに大切に育てられたキキは、魔女界の掟によって13歳の満月の夜、相棒の黒猫・ジジとともに両親のもとを旅立つ。プロジェクションマッピングで描かれる美しい風景を背に、ホウキにまたがりふわふわと飛び回り、やがて海のそばの大きな町・コリコに辿り着く。キキは町の住人たちから好奇の目で見られ、魔女に対する偏見をぶつけられて戸惑うが、空を飛ぶことに憧れているトンボや、パン屋のおソノと出会うことで少しずつ成長していく。
劇中ではキキとトンボの出会いが描かれ、物語が進むにつれて二人の関係性の変化が大切な役割を担うが、それについて上白石は「初々しさを出すために毎日“はじめまして!よろしくお願いします”と(阿部と)挨拶していました」と稽古場でのエピソードを披露。上白石が「ステージ上には“魔女宅”の世界しか広がっていません。私はキキとして息をするのみです」と力強く語ると、阿部もまた「本番は何よりも楽しむことが一番だと言われ続けてきたので、今までやってきたことを信じてがんばります。キキちゃんとの出会いからラストのシーンまで、舞台上でキキちゃんの心を揺さぶらないと!と思っています」と意気込んだ。最後は上白石と阿部の二人が声を合わせ「『魔女の宅急便』、観に来てください!」と元気いっぱいにメッセージを送った。
東京での公演を終えたミュージカル『魔女の宅急便』は、8月31日(木)から9月3日(日)まで、大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティで上演される。