昭和の天才クリエイター・中原淳一の物語を描いた舞台『それいゆ』が、2017年4月6日(木)から4月11日(火)まで東京・サンシャイン劇場にて上演された。初日公演に先駆けて公開ゲネプロが行われ、囲み会見には主演の中山優馬、ヒロインの桜井日奈子、施鐘泰(JONTE)、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、愛原実花、金井勇太、佐戸井けん太が登場。チームワークの良さが伝わる和やかな雰囲気の中、再演となる本作への思いや意気込みを語った。
舞台『それいゆ』は、2016年5月・6月にも東京と大阪で上演された作品。1年と経たずして再演されることについて、中山は「皆様の評価があったからこその再演だと思うので、ありがたく嬉しいことです」と感謝の気持ちを述べ、「ファミリーの元へ帰ってきたような気分です」とカンパニーとの再会に懐かしさを覚えた様子。また前回の公演で女優デビューを果たした桜井も「このメンバーで再びお芝居できることが嬉しいです」と喜んだ。
ベテラン勢の佐戸井も「再演はいつもある話ではないので、お話をいただいたときは嬉しかったです」と喜びの表情を見せ、緊張しながら迎えたという稽古初日については「結構すぐにセリフを思い出して。まだまだボケてない(笑)」と会場の笑いを誘っていた。
会見に登場したキャストの中、唯一初参加となる愛原は「緊張したけれど、キャストやスタッフさんが温かく迎えてくれました。皆さん仲が良くて、さすが一つの舞台を作り上げたカンパニーだなと感じました」と現場の雰囲気を伝え、「稽古場では私も泣いてしまいました」と初参加ならではの視点で作品の魅力を語った。
前回の公演に引き続き、バスケットボール部出身の桜井による“日奈子トレーニング”が稽古時に行われていたことも明らかに。「かわいい顔してがっつりやられました。鬼教官でした(笑)」と中山が暴露すると、キャスト全員でトレーニングを実演して見せる一幕も。大きな声を出しながら体を動かす激しいトレーニングを披露した後、辰巳は「(実際の桜井は)もっと楽しそうにやられてますから・・・笛を持たせると人格変わるから!」と冗談交じりにボヤき、会場を笑わせた。
また、20歳を迎えた桜井へ、キャスト陣から寄せ書きのプレゼントが贈られたエピソードも語られた。金井が書いた“そんなに 連続で いい仕事 夢のようだ”というメッセージに「ズキンときました・・・」と言う桜井だったが、実はこの言葉には隠しメッセージが。金井に「縦に読むと“それいゆ”になるんだよ」と教えられると、まるで気づいていなかった桜井は目を丸くして驚愕!桜井以外は全員気が付いていたのに!と笑い合う姿に、カンパニーの魅力であるアットホームな雰囲気を伺い知ることができた。
最後に中山が、公演を楽しみにしているファンへ「稽古にも全力を注ぎ、素晴らしい作品に仕上がったと思います。劇場でお待ちしております」とメッセージを送り、会見を締めくくった。
戦争が混乱を招いた時代。雑誌「少女の友」では、華やかなファッションを身に纏う女性の挿絵が人気を博した。このイラストを描くのは中原淳一(中山)。規制の多い生活を強いられてきた世の女性たちにとって、淳一が描くイラストの中の女性像は憧れの的だった。ところがある日、華美な少女画が敵性文化とみなされ、軍部から圧力を受けてしまう。「少女の友」の編集長・山嵜幹夫(佐戸井)は淳一の元を訪ね、もんぺ姿の少女を描くよう懇願するも、作風を変える意思のない淳一は雑誌から追放される道を選択。時代の波にのまれず“美しく生きる”ことを貫いた淳一の、力強いメッセージが舞台上に刻まれる。
物語の冒頭、美麗なイラストが舞台に掲げられ、実際に中原淳一が残した美しい詩が降り注ぐ。戦争がもたらす色味のない世界で、全身真っ白の衣装に身を包む淳一だけが異色の存在に思えるけれど、女優を夢見る大河内舞子(桜井)や歌手を志す天沢栄次(施)、淳一のアシスタントである桜木高志(辰巳)など、本当はたくさんの希望で満ちあふれている。方向性を見失ったり、感情を激しくぶつけ合いながらそれぞれの道を行く姿と、人の数だけある選択肢も見どころの一つ。時代に翻弄されながらも美を追求し続けた淳一は、どんな結末にたどり着くのか・・・。ぜひ、「再演」を見届けてほしい。
舞台『それいゆ』は、東京公演を終え、この後、福岡・兵庫を巡演。日程の詳細は以下の通り。
【東京公演】4月6日(木)~4月11日(火) 東京・サンシャイン劇場(終了)
【福岡公演】4月14日(金)~4月15日(土) 福岡・北九州芸術劇場 中劇場
【兵庫公演】4月19日(水)~4月23日(日) 兵庫・新神戸オリエンタル劇場
(取材・文・撮影/堀江有希)