池内博之、長谷川京子、新垣結衣、羽田美智子、鄭義信らが所属するレプロエンタテインメトが、創立25周年プロジェクトの一環として、劇場とホテルと飲食店の複合施設「浅草九倶楽部」を誕生させた。そして、ホテル・飲食店の開業に先駆けて、施設2階の「人」と「情熱」と「エンターテインメント」が渦巻く劇場・浅草九劇が、2017年3月3日(金)にオープンした。
その開業を記念し、前日にはこけら落とし公演となる『あたらしいエクスプロージョン』の公開ゲネプロと囲み会見が行われ、八嶋智人、川島海荷、富岡晃一郎、作・演出の福原充則が登壇した。『あたらしいエクスプロージョン』は俳優・富岡と脚本家・演出家の福原によって2012年2月に旗揚げされた劇団ベッド&メイキングスの最新作。物語の舞台は1946年、敗戦から1年を経ずして公開された邦画界発のキスシーンを巡る、感情発火型物語となっている。
今回のこけら落とし公演にこの題材を選んだ理由として、福原は「劇場がオープンということで、何かの始まりや初めての物語をやりたいと思いました。ただ、始まるだけでは寂しいので、始まってどこまでも続いていくという話や、我々の生活のすぐそばにある物の中の始まりを描くことで、この劇場をお客さんや地元の皆さんの身近に感じて欲しいと思っています。その身近なものとして、“キス”がいいかなと思いました。みんなキスが好きですよね」と思いを打ち明けた。その福原の言葉を受けて、八嶋が川島にキスを好きかと質問すると、川島は「嫌いとかじゃないです(笑)」と苦笑いで答え、会場の笑いを誘った。
さらに、“感情発火型”と銘打つことについて、福原は「“感情発火型”という話を、ここ20年ぐらいやっています。心が燃えるような作品を僕が求めているので、同じようなものを求めて観に来てほしいです。こっちは、心に火をつけにいきます」と説明。八嶋も「一緒にエクスプロージョンできる人に来てほしいですね」と同調した。
約130人ほどが入る劇場は、演者と客席の距離が非常に近く、演者の熱をダイレクトに感じられる構造となっている。さらに本作では、客席へせり出す張り出し舞台があるなど“感情発火”をより盛り上げるセットとなっていた。この魅力ある劇場について、八嶋は「大きい劇場だと、演じている時、たまに大勢対1人みたいな気持ちになるんですが、逆にそれは疲れないんです。でも、この劇場は目の前にお客さんがいらっしゃって、1対1が約130人分あるので、これはなかなかの勝負になります。普段より疲れると思いますので、がんばりたいと思います」と気合いを入れた。富岡は「早乙女太一くんが座長を務めていた大衆演劇の劇団朱雀に、何回か出たことがあります。そういった大衆演劇の発祥地で、舞台に立てることが光栄です。大衆演劇もこういった客席と近い舞台なので、似たような形で一体となってできると思います」と意気込んだ。
八嶋、川島、富岡の他に、町田マリー、大鶴佐助、山本亨と幅広い世代の実力派キャストが揃い、6人が複数の役柄を瞬時に変えながらスピーディーな会話を繰り広げる本作。共演者について、川島は「いつもパワーがみなぎっている方ばかりだと思います。常に、にぎやかですし、毎日一緒にいて刺激的です」と褒め讃えた。
さらに、浅草九劇の開業と本作の初日である3月3日は、川島の23歳の誕生日ということで、サプライズのお祝いが行われた。大感激の川島は「いきなりのこと過ぎて心臓が痛いです(笑)。新しい自分が始まっていけばいいと思いますし、良いきっかけになる舞台にしたいと思います」と驚きつつ、笑顔で抱負を語った。
公開舞台稽古前には、浅草九劇のバルコニーから出演キャストによる開業を記念した餅撒きも実施。“芸能の聖地”浅草から生まれるこの新しいエンターテインメントにふさわしい劇場へ、ぜひ足を運んで欲しい。
舞台『あたらしいエクスプロージョン』は、3月21日(火)まで、東京・浅草九劇にて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)