鴻上尚史が2008年に初めて舞台化した『ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)』が2017年3月26日(日)よりついに上演される。昨今の2.5次元舞台では、舞台化不可能と思われた様々なアニメ、マンガ、ゲームが見事な演出によって表現されてきたが、それにしても「ドラえもん」とはどうやって舞台化するのか。そんな疑問に応えるかのように、3月3日(金)に稽古場取材会が行われ、脚本・演出の鴻上と、のび太役の小越勇輝、しずかちゃん役の樋口日奈(乃木坂46)、ジャイアン役の皇希、スネ夫役の陳内将、チッポ役の佃井皆美が登壇した。
原作は、1989年に発表された藤子・F・不二雄によるマンガ「大長編ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)」(月刊「コロコロコミック」掲載、小学館)。動物が人間の言葉を話すアニマル惑星での冒険と闘いを描い、たエンターテインメント性溢れる作品だ。
鴻上は「9年前に沖縄国際児童演劇フェスティバルで上演するために(考えたところ)、日本で子どもに向けて、海外にも通じるコンテンツといえば“ドラえもん”しかないだろうと思いついたのが始まりです。この9年間、ずっと再演したいという思いがあったのですが、今になってしまいました」と本作への思いを語った。そして今公演では、舞台上だけでなく、会場入口から様々な趣向が凝らされていることを明かし「お祭りなので、いろんなことを出演者でできたらいいなと思っています。ジャグリングの練習をしている出演者もいますし、バルーンアートの練習をしている出演者もいる。全体がお祭りになれば素敵だなと思っています」と構想を明かした。
一方、主演を務める小越は「すごく驚きました」とオファーを聞いた時の心境を振り返った。「驚き、ワクワクと、色んな思いがありましたが、誰もが知っている作品なので、プレッシャーもありますが、“ドラえもん”という作品が持つパワーや、生身で演じるからこそ伝えられる感動を届けたいです」と意気込んだ。
また、樋口は「しずかちゃんは正義感が強く、かわいい存在だと思っていましたが、そんんなに軽いものじゃないと、毎日演じていて感じています。その役割を考えて、また私にしかできないしずかちゃんを演じたいです」、皇輝は「ジャイアンが持つ一人の人間としてのかわいさ、弱さまでも見せられたら」、陳内は「スネ夫の髪型がどうなるのか。個人的にも気になっていますし、そこも見どころ」、佃井は「のび太くんとチッポの友情を観てもらいたいです。さよならを心から言えるように演じたい」とそれぞれ見どころを語った。
この日、公開された稽古では、ドラえもんのテーマ曲としても広く知られている「夢をかなえてドラえもん」と、本作のための新曲「これで安心!探検セット」の歌唱シーンが披露された。「夢をかなえてドラえもん」は舞台の冒頭に、全キャストが登壇して歌い踊る楽曲。この日、ドラえもんは登場しなかったが、公演にはしっかりと登場するらしい。本番を楽しみにしたい。
また、のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫はいずれも小学5年生、10歳という設定だ。だからこそ、舞台化に驚きもあったのが、公開された楽曲でははしゃぎながら歌い、踊る姿はしっかりと小学生をしていたことも印象的だった。
そして、やはり気になるのは、数々の大人気作品で主演を務め、かっこいいことが当たり前の小越の、のび太っぷり。取材会の中で、鴻上は「演出家になって35年だけど『そんなにかっこよく踊るな』って初めて言いましたよ(笑)。普通はかっこよく踊れって言うんだけど、のび太はそんなにかっこよく踊らないから」と、のび太という役柄ならではのダメ出しを明かし、小越本人も「ふとした時に出てしまう反応が(のび太っぽくないと言われて)悔しいです(笑)」と苦笑いで応えていた。しかし、稽古での小越はしっかりと“のび太”に。ジャイアンとスネ夫にいじられ転びそうになりながら、無様にステージを駆け抜けていく姿の小越は、きっとここでしか見られない。この貴重な小越の姿もまた、本作の見どころと言えるだろう。
舞台版『ドラえもん のび太とアニマル惑星(プラネット)』は、2017年3月26日(日)から4月2日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演される。その後、福岡、愛知、宮城、大阪を巡演。日程は以下のとおり。
【東京公演】3月26日(日)~4月2日(日) サンシャイン劇場
【福岡公演】4月7日(金)~4月9日(日) キャナルシティ劇場
【愛知公演】4月14日(金)~4月16日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール
【宮城公演】4月21日(金)~4月23日(日) 多賀城市民会館
【大阪公演】4月29日(土)・4月30日(日) 森ノ宮ピロティホール
(取材・文・撮影/嶋田真己)