舞台『お勢登場』が、2017年2月10日(金)に東京・シアタートラムにて開幕した。倉持裕が江戸川乱歩の多数の作品群の中から8本の短編小説を厳選し、複雑な手法で編み上げ1本の演劇作品として再構成した本作。出演者には黒木華、片桐はいり、水田航生、川口覚、粕谷吉洋、千葉雅子、寺十吾、梶原善という個性溢れる顔ぶれがそろった。
作品のモチーフには、乱歩の“本格推理もの”より「二銭銅貨」「二癈人」「D坂の殺人事件」、“怪奇・幻想もの”より「お勢登場」「押絵と旅する男」「木馬は廻る」「赤い部屋」「一人二役」が選ばれ、黒木演じるミステリアスな女“お勢”を軸に、それぞれの短編作品の世界が絡み合っていく。
初日を迎え、作・演出の倉持、黒木、片桐、梶原よりコメントが届いている。
◆倉持裕(作・演出)
『お勢登場』は、自分の得意技である構成力を発揮できた作品だと思っています。意外と「怖い」とおっしゃってくださるお客様も多く、またコメディの部分も笑っていただけたので、シリアスとコメディが良いバランスになっているのではないでしょうか。
俳優は皆さん、良いです。黒木華さんはお勢という悪女の色気を出して、芝居を引っ張っています。また片桐はいりさん、寺十吾さん、千葉雅子さん、そして梶原善さんというベテラン勢が、シリアスとコメディの色分けをコントロールしながら物語の大枠を築いていて、そんな中で水田航生くん、川口覚くん、粕谷吉洋くんは、軽さとスピード感を与えてくれています。明日以降、さらにおもしろい芝居になると思います。
◆黒木華(お勢役)
お客様の前で上演して、反応をいただくことで改めて「お勢は物語の中でこのように繋がって、変化していくんだな」と実感することができました。お勢は魅力的な女性で、彼女が登場するオープニングも演出がとても格好良いので、私もそれに合わせて見得を切っています。見てくださる方が思わずドキッとするような不思議な魅力をまとえるよう、お勢の悪い部分、可愛らしい部分などをこれからさらに膨らませて、作品の芯としてのお勢の存在を大きくできたらと思っています。
◆片桐はいり(井原/刑事1/瀬川須磨/母(兄弟の母)役、ほか)
最初に戯曲を読んだ時は、どうやってこれを上演するんだろうと思ったのですが、こんなに大変なことだったんだと今日改めて感じました。やり残したことや、新たな問題がたくさん見えてきましたので、これから考えないといけません。人間がそれぞれ自分の裏側で隠していること、その多面性をお芝居の中で浮かび上がらせるようにできたらと思っています。まだまだやれるはずです。
◆梶原 善(村上/按摩/瀬川昭夫役)
こんなに登・退場の多い大変なお芝居は珍しく、初日をご覧になったお客様にも“生”な感じを味わっていただけたのではないでしょうか。明日からはもっと“スムージー”に、芝居のドキドキ感をより高めていけたらと思います。この作品は、おかしみのある普通の人間たちが、お勢という記号にはまって突き進んでいくというところに、おもしろ味があると感じています。その倉持くんの戯曲の素晴らしさをお芝居でも十二分に発揮していますので、これから観に来てくださる方はどうぞお楽しみに。
『お勢登場』は、2月10日(金)から2月26日(日)まで東京・シアタートラムにて上演。その後、福岡、大阪を国内ツアーとして回る。日程の詳細は以下のとおり。
【東京公演】2月10日(金)~2月26日(日) シアタートラム
【福岡公演】3月1日(水) 福岡市民会館
【大阪公演】3月4日(土)・3月5 日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
(撮影/細野晋司)