宅間孝行が主宰する「タクフェス」の第4弾公演となる『歌姫』の東京公演が、2016年10月5日(水)に開幕した。9月15日(木)からの大阪公演を皮切りに、これまでに愛知、北海道を巡演。東京公演初日前には、ゲネプロと合同取材が行われ、作・演出・主演(四万十太郎役)を務める宅間のほか、ヒロイン・岸田鈴役の入山杏奈、阿部力、黒羽麻璃央、酒井美紀、樹里咲穂、原史奈、滝川英治、越村友一、北代高士、安田カナ、かとうかず子、斉木しげる、藤木孝が作品への思いを語った。
本作は、宅間が主宰していた「東京セレソンデラックス」の代表作として知られる作品。2007年には、長瀬智也、相武紗季主演でドラマ化されたことでも話題を呼んだ。さらに、2014年には松本利夫(MATSU from EXILE)主演で、劇団EXILEでも上演されている。
舞台は、土佐の漁師町にひっそりと佇む映画館「オリオン座」。閉館を迎えるその日、小泉ひばりが東京から息子を連れて訪れる。そこで最後に上映されたのは、1960年代に作られた「歌姫」という作品だった。それは戦後のドサクサで記憶喪失になった男と彼を愛する女性の物語で、この映画を最後に上映することが、亡くなったこの映画館の持ち主である松中鈴の遺言であったという。この作品には一体どんな意味があり、ひばりがなぜこの映画を観に来たのか・・・。
これが舞台初出演となる入山は「最初は不安とか緊張とか、怖いなって気持ちが大きかったんですが、地方公演を重ねて、不安に打ち勝って、今はいい形として残せたらなという思いがあります」と意気込む。さらに入山は、この日「果たし状」を持参。「歴代の岸田鈴役を演じた先輩方へ。村川絵梨さん、谷村美月さん、相武紗季さん。ぜひ、今回の『歌姫』を観にいらしてください。先輩たちのハートをぶち抜くぜよ!」と読み上げ、「鈴への愛は負けていないと思います」と力強く語った。
そんな入山に、宅間は「歴代の鈴役の人たちに比べると、声も出ないし、動けないというマイナスからのスタートでした。よくここまで(成長した)と思います。相当な意気込みを持ってやっている姿に、に気づかされることもたくさんありました」とべた褒め。かとうも「注意されたことをメモにとり、できなかったことを次の日にはできるようにしてくるので、努力家だと思います。これまでで一番仲の良い家族を作りたいというメッセージをもらって、刺激を受けました」と絶賛した。
斉木も「最初は、初舞台ということで不安だったんですよ。でも、ビックリするぐらい変わりました。自分の娘のように思えてきて、今はもう涙なしに舞台に立てないんです。お客さんより、一番感動していると思います(笑)」と明かした。
また宅間は「9年ぶりの再演ですが、僕が演じる四万十太郎は最後にしようと思っています。“決定版を作る”つもりで集まってもらったメンバーですし、その気持ちで作ってまいりました」と宣言し、作品への強い思いを感じさせた。
ゲネプロでも、出演者たちの思いが伝わる熱い演技が見られた。切ない純愛を描き、涙必至の舞台なのだが、笑いもいっぱい。宅間演じる太郎が黒羽演じる神宮寺に相談を持ちかけるシーンでは、宅間のアドリブに黒羽が本気で困った表情を浮かべ笑いを誘う場面も。
また、入山が見せる初舞台とは思えない堂々とした演技も見もの。怒ったり、はしゃいだり、泣いたりと、コロコロ変わる表情で観客を惹きつける。今後のさらなる活躍が期待できる若手女優の一人といえよう。
舞台『歌姫』は10月5日(水)から10月16日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。その後、10月22日(土)・10月23日(日)に福岡・キャナルシティ劇場、10月29日(土)に宮城・電力ホール、11月3日(木・祝)に新潟・りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場を巡演する。
(取材・文・撮影/嶋田真己)