2016年4月9日(土)に赤坂ACTシアターで開幕するミュージカル『グランドホテル』の公開稽古が都内のスタジオで行われ、演出のトム・サザーランド氏を始め、オットー役Wキャストの中川晃教(GREEN)、成河(RED)らの出演者が報道陣の前に姿を現した。
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この日のサプライズは二つ。一つ目は本作『グランドホテル』(トム・サザーランド版)が英国演劇界で栄誉ある賞の一つである「オフ・ウエストエンド・シアター・アワード」で最優秀ミュージカル作品賞と最優秀振付賞をダブル受賞したこと。そしてもう一つは全く同じ台本、音楽でありながら、チームによって“二つの違ったエンディング”を迎える作品になるという発表。演出のサザーランド氏からは「一つは登場人物たちが自らの求めるものを手にし、グランドホテルを去るというある種“楽天的”なエンディング、もう一つは夢や希望をはく奪されたキャラクターの姿から、この後起きるさまざまな“悲劇”を示唆するエンディング」との説明があり、報道陣からも驚きの声が上がっていた。
続いての公開稽古では作品のオープニングとなる「グランドパレード」が各チームごとに披露された。まずは成河が会計士・オットーを演じるREDチーム。スペシャルダンサー役の湖月わたるが登場し、ホテルのベルを鳴らすところから場面がスタート…物語が動き出す。
約20分の「グランドパレード」では、登場人物たちがどんな状況で何を抱えてグランドホテルにやって来たのか、また従業員たちはどんな心持ちで働いているのかといった個々の状況が音楽と共に流れるように表現されていく。ギャングの借金取りに追われる男爵、何度も引退興行を行って稼ごうとする老いたバレリーナ、彼女を献身的に支える付き人、倒産しそうな会社を抱えてその重みに潰されそうになっている経営者、映画女優になることを夢見ている秘書、そして余命宣告を受けた会計士…。
REDチームとGREENチームではやはり会計士・オットーの佇まいに特に大きな差があるように見えた。REDチームの成河は、終始暗い目をしてその場に立つ。彼はまるで最後の“墓場”としてグランドホテルを選んでいるかのようだ。他の宿泊者と目も合せず、深く帽子をかぶる姿からは“絶望”の二文字を感じた。
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変わってGREENチームのオットー・中川晃教は、憧れていたグランドホテルの宿泊者になれたことを子どものように喜んでいるように見える。勿論、病と戦ってはいるのだが、自らの命の最後の火を憧れの場所で燃やそうと、前向きな心を胸にその場にいるように感じられた。
作品のオープニングである「グランドパレード」は、2つのチームで比較的違いが出にくい場面とのことだったが、それでもやはり明確な違いが見えてくるのが非常に面白い。
最後はサザーランド氏と中川、成河の3人での質疑応答。まずはGREENチームでオットーを演じる中川から「私事ではありますが、デビュー15周年という記念すべき年にミュージカルの原型とも言える『グランドホテル』に参加させていただけるのはとても幸せなことです。チームは違いますがWキャストの成河さん、演出のトムさんらと共にこの作品を作っていくことが今はとても楽しいです」とコメント。続いてREDチームで同じくオットーを演じる成河が「(中川さんの)コメントが上手いですね~(笑)」と現場の空気を和らげ「まだ稽古に入って日が浅いのですが、トムをはじめスタッフに引っ張って貰いながら必死に食らいついているところです。大きなカンパニーですので、どれだけ一致団結していけるかが成功の鍵かな、と。スタッフを信じてついていきたいと思います」と語った。
2つのチームで“違う結末”が用意されている演出に関しては、サザーランド氏が「本当は秘密にしておきたいんだけど(笑)」と前置きし「どちらかが特にドラマティックという訳ではなく、両チームの個性を見つつ作っていきたい」とコメント。中川と成河がそれぞれ「実は僕たちも詳細について今日初めて聞きました(笑)。まだ稽古も序盤ですのでこれから詰めていくことになると思います」「一応便宜的に“楽観的”“悲劇的”という言い方をしていますが、そんな単純な訳ではなく“何かを成し遂げられた人たち”と“成し遂げようとしながら寸前でそれを奪われてしまった人たち”という構成になるのかと思っています」とフォローし「本番の舞台を観ないと分かりません!」と二人で綺麗に締めていた。
ミュージカル『グランドホテル』は4月9日(土)~24日(日)まで赤坂ACTシアター、東京公演終了後は名古屋(4月27日(水)・28日(木)愛知県芸術劇場大ホール)、大阪(5月5日(木・祝)~8日(日)梅田芸術劇場メインホール)でも上演される。
(取材・文 上村由紀子)