AKB48×劇団鹿殺し×コンドルズ『山犬』を丸尾丸一郎と鳥肌実が語る!「異ジャンルでの必死さ」

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2019年2月27日(水)に幕を開ける舞台『山犬』。本作は、劇団鹿殺しの丸尾丸一郎が生み出した極限状態と純愛を描いた監禁劇で、2006年、2014年とこれまでに2回上演されている。今回は“AKB48×劇団鹿殺し×コンドルズ”という、異種格闘技戦のような組み合わせで、「男女配役逆転」「コーラス部という設定」「AKB48メンバーが日替わりで同級生役として出演」といった新要素を追加し、新たなに産み落とす。

本作は、「鳥肌実×森下くるみ×ISOPP」という異ジャンルで活動する表現者が集った2014年版でも、その衝撃で観客の中に大きな波紋を残した。そこで、2014年版に出演した鳥肌をゲストに迎え、丸尾と共に本作について語ってもらった。

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目次

『山犬』には、最初から鳥肌さんの血が入っていた

――あの衝撃作『山犬』再び、ですね。この作品は、鳥肌さんがご出演された2014年版の前に、2006年に初演されていますが、丸尾さんはどのようなきっかけでこの作品を書かれたんでしょうか?

丸尾:この『山犬』は、ちょうど鹿殺しが上京して共同生活を送りながら路上パフォーマンスを繰り返しつつ、「路上パフォーマンスをするだけでなく、一人一人がクリエイターになっていかなければならない」ということを話し合っていた時期に出来た作品です。個々の活動として、写真集を作るメンバーがいたり、Tシャツのデザイン職人を目指すメンバーがいたりしたんですが、僕は「劇団としての作品ではない、自分だけの舞台を作ろう」と思ったんですね。

そのことを、劇団でデザインと音楽をやってくれていた入交星士と相談する中で「ホラーを全面に謳った舞台って少ないよね」という話になり、「ホラー」をテーマに入交が小説を書き、僕が舞台化するということでできたのが、2006年の初演でした。

――鳥肌さんは、再演の2014年版に参加されていますが、この作品に初めて接した時どう思われましたか?

鳥肌:最初に2006年の映像を見せていただいたんですが、度肝を抜かれました。犬役の方は舞踏でもされているのかと思うぐらい動きがしなやかで、すごいパフォーマンスでしたし、私が演じたいじめられっ子役の方も素晴らしかった。「これを俺がやるのか」と、とにかく衝撃を受けました。そして、濃いな~と。

丸尾:あはは(笑)。

鳥肌:アングラチックな感じが私好みだったもので、生で観れていたらもっと度肝を抜かれていただろうなと。再演されるのは当たり前ですね。初演はザムザ阿佐谷、私がやった2014年版は座・高円寺、今回はサンシャイン劇場と、それぞれ小屋の大きさは違いますから、また受ける衝撃も違ってきますね。

――前回の出演は、鳥肌さんにとって約15年ぶりの舞台出演だったんですよね。

丸尾:実は、初演で犬役を演じていた山本という劇団員が、鳥肌さんのことが大好きだったんですよ。講演会などにもずっと足を運んでいて。僕もよく、彼から鳥肌さんの話を聞いたり、映像で観たりしていたんですよ。鳥肌さんは、すごく画力が強い。いつかこういう方に出ていただけたらおもしろいなと思っていたので、「ホラー」であるこの作品をまたやろうとした時には鳥肌さんの顔が真っ先に浮かびました。なので、この『山犬』は、最初から鳥肌さんの血が入ってるんですよ。

鳥肌:そうだったんですか。

丸尾:『山犬』は、劇団公演ではなく、OFFICE SHIKAプロデュースの第2弾として上演しました。その前の第1弾『ジゼルの事情』の主演を歌手のCoccoさんにやっていただいたので・・・Coccoさんからの鳥肌実さん、この振れ幅も、僕らにしかできない攻め方だなと(笑)。

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丸尾丸一郎はアイドル、歌手、芸人などの演出に長けている

――そして今回は、AKB48×劇団鹿殺し×コンドルズという、また違う振れ幅ですね。

丸尾:AKB48の子たちとは、昨年、舞台版の『マジムリ学園』を一緒に創りました。その時に、すごくポテンシャルの高さを感じて、また一緒に舞台を創りたいと思ったんですね。その『マジムリ学園』を制作されていたネルケプランニングの松田(誠)会長が、前回の『山犬』を観ていてくださって「すごくおもしろかった」と感想をくださって。

今回、サンシャイン劇場でやれることが決まった時に、一緒に制作をしてくださるネルケプランニングさんと“『山犬』をAKB48の子たちと一緒にやったらおもしろいんじゃないか”と思ったんです。さらに、彼女たちをキャスティングするのならば、「コーラス部」という設定を加えて“歌”の要素を入れたら、もっと攻めた企画になるんじゃないか、というところから、この公演が実現しました。

鳥肌:私は勝手なことを言い続ける男なので思ったことを言いますが、丸尾さんは、キャリアのある役者を演出するよりも、あまり演劇経験のない、アイドルの方や歌手の方、私のようなわけのわからない芸人を演出されることに長けていると思うんですよ。その方が、おもしろいものが出来上がる。役者さんは、皆さんなんだかんだ上手いですから。ポテンシャルが高いから、何をやってもそれなりにはまとまるんですよ。でも、経験の少ない我々はそうはいかない。だからこそ、今回の座組もおもしろいと思いますよ。

――鳥肌さんと一緒にご出演されていた森下くるみさんも、この『山犬』が初舞台でしたね。

鳥肌:森下くるみさんは、目覚ましい成長を遂げました。丸尾さんの稽古は厳しいんですよ。演出家は基本厳しいものですが、さらにそこに情熱が加わる。当時、丸尾さんのエネルギーは森下さんに半分以上注がれていましたが、その分、彼女のお芝居は鬼気迫るものになって、右肩上がりになっていきました。これに対して、私は・・・。

丸尾:鳥肌さんは芸人さんだから、瞬発力の人なんですよ。だから、やればやるほど新鮮味を失ってしまうという(笑)。

鳥肌:丸尾さんには「鳥肌さん、本読みの時が一番よかったです」と言われました。私みたいな物覚えが悪いタイプは、稽古をまったくしないか、1年ぐらいかけて稽古をしないとダメなんです。私が特殊なだけですので、今回の皆さんは大丈夫だと思いますが。

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分からないから、一回一回が必死

――本作では、これまでの配役を“男女逆転”することが発表されています。鳥肌さんが演じられた役は、現役アイドルの女の子が演じられることになりますが・・・。

鳥肌:私のやった役は、自分で言うのも何ですが、役者としてのポテンシャルが高くないとできない役だと思うんです。ポイントポイントで出てきますので、バッと瞬発力で魅せなければいけない。ある意味、出ずっぱりよりも難しい役だと思うんです。かなりの力量がいるポジションです。AKB48の皆さんがどう演じられるのか・・・そこは、丸尾さんがしっかりと仕上げておられると思います。

丸尾:鳥肌さんは常に全力でしたから、初日から声が飛んでしまったりもしましたね(笑)。

鳥肌:毎日のように響声破笛丸を飲んでですね、毎日のように絶叫していました。ペース配分が分かっていなかったんですよね。出ずっぱりの役ではなかったので、なんとかこなせたんだと思います(笑)。きっと、経験がある方はうまいので、余裕でこなしてしまうんでしょうが、分からないから一回一回必死になる。

リアリティや、鬼気迫るものを生み出そうとすると、上手ければ上手いほどリアリティが欠けてくるものなんですよ。経験の浅い人間は、上手さを求められたら敵わないですが、必死にやります。その必死感が、奇しくもリアリティにつながったりもしますので。

――男女の配役逆転や新たな設定が加わることで、作品も違った見え方になるのでしょうか?

丸尾:今回、あえて2014年版とまったく違う演出をしようと思っています。『山犬』って、僕にとっても毎回挑戦をさせられる作品なんですよ。美術から、そのつもりで作っています。2014年版は、あれはあれで一つの完成形。今回は、それを一つ一つ壊して、一つ一つまた積み上げていきます。

鳥肌:ストーリーの根底にあるものは変わりませんからね。私の演じた役はいじめられっ子ですが、この問題に関して言えば、いじめられた側、やられた側はずーっと覚えているもの。いじめた側は何も覚えていない。それはきっと、男女が逆転しても変わらないものです。過去と未来が芝居の中で交錯していく。それがこの芝居の醍醐味ですから。

――鳥肌さんたちが観せてくださった『山犬』とはまた違う『山犬』、楽しみにしています。

丸尾:“監禁”という特異な状況で、心の奥にどんどんせまっていく演技、人間の裏にある感情を開けていく芝居を、AKB48の子たちと共に研ぎ澄ましていけたらと思います。彼女たちにとっても、今後、仕事の幅が広がるような、一つの岐路になる作品になればいいなと思って、精一杯演出していきます。

鳥肌:ぜひとも、もっともっとディープに。丸尾さんは、稽古場でどんどん新しいものをつくられていくので、本当にガラリと違ったものになってくるでしょうし、公開されているビジュアルのように、皆さんの闇がリアルに描かれていくと、とんでもない、度肝を抜く舞台になるんじゃないでしょうか。私も観るのが楽しみですね。

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◆公演情報
舞台『山犬』
【東京公演】2019年2月27日(水)~3月3日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年3月6日(水)~3月10日(日) ABCホール

【脚本・演出】丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
【原案】入交星士
【音楽】オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)

【出演】
岩立沙穂(AKB48)
太田奈緒(AKB48)
谷口めぐ(AKB48)
山本光二郎(コンドルズ)
オレノグラフィティ(劇団鹿殺し)
丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)

【日替わり追加キャスト】
<東京公演>
2月27日(水)19:00公演 込山榛香
2月28日(木)19:00公演 久保怜音
3月1日(金)19:00公演 佐々木優佳里
3月2日(土)13:00公演 坂口渚沙/18:00公演 福岡聖菜
3月3日(日)11:30公演 田口愛佳/16:30公演 武藤十夢

<大阪公演>
3月6日(水)19:00公演 東由樹
3月7日(木)19:00公演 山尾梨奈
3月8日(金)13:00公演 古賀成美/19:00公演 塩月希依音
3月9日(土)13:00公演 濱沙友菜/18:00公演 濱沙友菜
3月10日(日)12:00公演 久代梨奈/16:00公演 安田桃寧

【特設HP】http://shika564.com/yamainu2019

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