2019年2月9日(土)に、舞台『OUT OF FOCUS!』が幕を開ける。本作は、畠山遼の初の単独主演となるオリジナルコメディ作品。とある山奥の廃墟で、アイドルと熱愛報道をされてしまった芸人が、強面の男に縛られているのだが、よく見るとあちこちにカメラが・・・?というストーリーだ。
畠山が演じるのは、ドッキリ番組の仕掛け人となった、俳優人生の岐路に立つ青年・叶谷大志役。その叶谷にドッキリを仕掛けられるお笑い芸人・安納ポテ男役を演じるのは柏木佑介。普段から仲の良い二人に、本作の制作過程や、自身の体験を交えたテーマトークなど、作品について語ってもらった。
――本番間近ですが、稽古を振り返っていかがですか?
畠山:稽古終盤、皆で一丸となって盛り上がっています。通しもたくさんやったしね。
柏木:でも、稽古が始まってから今まで、変わってないことが一つあるんですよ。
――変わっていないこと?
柏木:役者たちが「こうした方がもっとおもしろいんじゃないか」という追求を、ずーっとし続けているんですよ。
畠山:確かに!
柏木:「おもしろくする」ということに対して、皆ずっとモチベーションを高く持ち続けているので、演出の鈴木さん(鈴木智晴・劇団東京都鈴木区)も、僕らのアイデアに耳を傾けてくださって、「そっちの方がおもしろいからそうしよう」と取り入れてくださるんです。本番直前の今でも、この作品をもっとおもしろくしたいと、僕らは未だに考え続けているんです。
畠山:姿勢は変わっていないけれど、作っているものは毎日変わってますね。
柏木:そうそう。
――その稽古の過程は、毎日稽古場から行われていた配信でも皆さんに少しずつ伝わっていたかと思いますが、毎日配信って、なかなかない取り組みでしたよね。
畠山:そうですね、初めての体験でした。配信があると、その日にあったことを皆で一緒に振り返ったりもできましたし、役の設定上で絡みがあまりない方ともたくさん話せるので、会話の中で「こう見えていたんだ!」と気づかされることもたくさんありました。日に日に僕らキャストの仲が深まっていくのが、観てくださっていた方にも伝わっているんじゃないかな。
柏木:毎日配信があったことで、リフレッシュできていた気がします。稽古と配信では、使う脳の部分が違うと思うんですよ。稽古で使っている部分は、配信前にはクタクタになっているんですけど(笑)。配信でまた違う脳の部分を使って話すことで、その日一日が締められるというか、いい区切りになりましたね。
――男性10人という座組でしたが、雰囲気は?
畠山:最初の本読みの頃に抱いた印象から変わらず、皆さん、とてもフランクで良い方ばかりです。さっき佑介くんが言っていたようにディスカッションをたくさんしてきたので、その分絆が深まった感じはしますね。
柏木:このカンパニー、あまり群れないんですよ。結構、個々に自分のペースを守っている感じで。大人な方が多いということもあるのかなと思いますが、変にベタベタしていないというか。意外と、(稽古中に)皆で飲みに行く回数は少なかったかもしれない。
畠山:そうだね。
柏木:それもすべて、この稽古場で出し切るから、皆余力が残ってないんだよ(笑)。
畠山:そういう日々の中で、作品作りに向き合ってきました(笑)。
――いい距離感が保たれているんですね。畠山さんは、そんな本作が初の単独主演となりますが。
柏木:俺、今まで知らなかった遼の姿を見ているかもしれない。「畠山遼が座長になるとこういう風になるんだ」と、見ていて素敵だなと思ってるよ。
畠山:えっ、どんな風に見えてるんだろう(笑)。
柏木:遼は「俺についてこい」という感じではやらないんですよ。ちゃんと遼の中にやりたいことがあった上で、皆さんからいろいろ出てきたアイデアを全部受け止めてから、ぽろっと「こうして行きましょうか」と方向を示す。一歩引いた目線というか、俯瞰の視点を持っているのかな。何より、遼が発言すると稽古場が和むんですよ。頭を使い切ったところで、遼の一言がそういう空気を作ってくれるので、また「よし、じゃあやろう!」という気持ちになれる。これもまた、一つの座長の形なんだなと思ったよ。
畠山:僕・・・正直、周りを引っ張っていくタイプではないんです。決して、そこに甘んじているわけではないんですが。だから、座長として大丈夫かなとずっと不安に思っていたところもあったので、今の佑介くんの言葉はとても嬉しかったですし、佑介くんがこの座組にいてくれて良かったと改めて思いました。
――一生に一度しかない“初”ですからね。
畠山:共演者の皆さんもそうですし、演出の鈴木さんも、制作チームの皆さんも、僕の役者人生において、一生忘れることのないメンバーになると思います。
――そして、物語はコメディ作品です。別媒体さんのインタビューで、柏木さんが「コメディはスポーツ」とお話しされていたのが印象的でした。稽古場ではアイデアの出し合いが常に“対戦”だったのでしょうか。
柏木:対戦というよりは、“作戦会議”かな。本番に向けて「ここはディフェンスに回ろう」「じゃあ俺がオフェンスに」というような。得点を取り合うのではなく、ポジション取りを常に皆で考えている感じでしたね。
畠山:稽古場では、物語を届けるためにフォーメーションのバランスを考え続ける感じ。そういう意味では、毎日が作戦会議でした。
柏木:実際にステージに立ったら、よりポーツになっちゃうんだと思います(笑)。コメディは(台詞のタイミングが)半間遅れただけで崩れてしまうので、自分の台詞だけでなく誰かに何かが起こった時はすぐにフォローに回れるように、常に構えていないといけないですから。
畠山:それぐらい集中しているから、皆の汗の量がすごい(笑)。通し稽古をしている時に、ふと周りが目に入って、額や頬を伝う汗が本当にすごかったんです。皆、がんばってるんだなあと思えて、自分自身にも気合が入りました。
――今回、畠山さんはドッキリ番組の仕掛け人となる俳優さん、柏木さんはドッキリを仕掛けられる側の芸人さんを演じられますね。
畠山:チラシのビジュアルをご覧になった時は、驚かれたかもしれないんですが、僕の演じる叶谷という男は、この作品の中で一番まともな人間です(笑)。ヤクザな身なりをしているけれど、とても普通の男。
柏木:俺、ずっと気になっていたことがあって。
畠山:なんですか?
柏木:叶谷って、30歳までに売れるとご両親に約束して上京してきたっていう背景があるじゃん。自分と重なったりしない?売れなかったら家業を継ぐ、みたいな設定は、遼にはないと思うけど。「30歳までに芽が出なかったら・・・」とか、言われてる人もいそうじゃん。役者を始めた頃に、自分自身でも「30歳までに、これぐらいまでにはなっていたいな」みたいなイメージを思い描いたことも、きっとあったと思うし。
畠山:30歳というのは、区切りとして視野に入りますよね。叶谷は、僕自身としても根本的なところが似ている役だなと思っています。ご覧になってくださる皆さんにもそれぞれ応援されている俳優がいると思うんですが、そういう人たちの気持ちを代表する部分もあるんじゃないかなと。そういう意味でも、叶谷がこの物語の中でどう成長するか。それは、佑介くんが演じるお笑い芸人の安納ポテ男もそうですし。それぞれの役の立場を踏まえて、物語を通して僕らがそれをどう見せるかが、大事なんじゃないかなと思っています。
――俳優さんもそうですし、ご覧になるお客様も、30歳というのは一つのターニングポイントでしょうから、重ねて思うことも多そうですね。
畠山:そうですね。でも、基本はコメディですから!楽しんで観ていただければ。まともな人間は僕だけなので(笑)。
――ちなみに、お二人はドッキリを仕掛けられたことはありますか?
畠山:ドッキリというか、サプライズが多いかな・・・。中でも、一番記憶に残っているのは、僕がデビューしてすぐの頃にやらせていただいたイベントでのことです。部屋が暗くなったと思ったら、その日集まってくださった皆さんが、青いサイリウムを一斉につけてお祝いしてくださったんですよ。それがめちゃめちゃキレイで!いまだに忘れられない光景で、嬉しかったサプライズですね。
柏木:俺は~・・・なんだろうな~。一番最近やらせていただいたバースデーイベントで、いつどうやって入ってきたか分からない鈴木勝吾くんが急にステージに上がってきて「佑介、おめでとう!」ってお祝いしてくれたのには、びっくりしましたね。でも・・・俺、わりと気がついちゃうタイプなんですよ。あれ?これなんかあるなって。その想像を超えてくるサプライズにはあったことがないから・・・待ってます(笑)。
畠山:(笑)!
――(笑)。もう一つ、畠山さん演じる叶谷は「アドリブがきかない」という難を抱えていますが、お二人は舞台上でとんでもないハプニングに合ったことはありますか?
柏木:これはあるな・・・(笑)。
畠山:俺もあります(笑)。忘れられないハプニングが二つあるんですが、どっちも「音」関係でした。一つ目は『最遊記歌劇伝 -Reload-』という作品の中での出来事だったんですが、ある公演で、クライマックスの一番盛り上がる曲が流れなかったことがあって。「これはヤバい!どうするんだろう?!」と思っていたら、主演の鈴木拡樹くんが、アカペラでその曲を歌いだして、それを皆で繋げていって、無事に最後までやり遂げたられんです。座長の覚悟を感じましたし、絶対に途切れさせてはいけないと、舞台上で皆が一つになって集中していたと思います。
もう一つは、PREMIUM 3D MUSICAL『英雄伝説 閃の軌跡』での出来事だったんですが、その作品は、3D映像と俳優が芝居をするシーンがあったんですね。でも、映像とうまく合わなくて、台詞の掛け合いがぐちゃぐちゃになってしまったことがあったんです。その時は、反橋宗一郎くんがうまく繋げてくださって、切り抜けることができました。
舞台は生ですから、どうしてもハプニングが起こる可能性があるんですけど、そういう先輩たちの姿を見て、どう切り抜けるのかも、役者の大切な技量なんだなと思いましたね。
柏木:俺のは、『BANANA FISH』という舞台での出来事なんですけど・・・。演じていた役はヤク漬けになっていて、親友にナイフを突きつけながら、声を絞り出すようにして「俺を殺してくれ・・・!」というのが、一幕ラストのシーンだったんです(柏木さん、実演)。そのナイフをポケットに入れていたんですが、ある公演で、それがポロッと内幕に落っこちてしまって。
その瞬間から「これはどうしたら・・・!」「どうやって親友を襲えばいいんだ?!」「首を締めれば・・・でもそれだとイマイチかっこつかない」みたいなことが、頭の中をぐるぐるしていたんですが・・・“舞台の神様“っているんだなって思うことがあったんですよ。
畠山:舞台の神様?
柏木:そう。その公演、その1回限りのことだったんですが、たまたまアンサンブルさんがハケるべき銃をハケ忘れていたんです!これ、すごくない?!
畠山:すごい!すごい偶然だ!!
柏木:それを見つけた瞬間、奇跡だ~!!と思って、急いでその銃を拾って「俺を殺してくれ・・・!」のシーンが出来たの。
畠山:その一回を観た人は、ハプニングだって分からないね。
柏木:ナチュラルに銃を拾ったからね(笑)。お互いのミスだったんですが、それに本当に救われて。いろんなハプニングを経験しましたが、これがダントツ。舞台の神様っていらっしゃるんですよ。
――すごいエピソードを聞かせていただきました。この作品もお話が意外な方向に転がっていくので・・・舞台の神様、いるといいですね。
畠山:まさかそうなっていくとは・・・という、皆さんを想像のできないところにお連れします(笑)。
柏木:この作品、どのキャラクターを中心に観るかによって、全然見え方が違ってくると思うんです。何度かご覧になる方は、まずは遼の役を中心に観てもらって、次は視点を変えて。そういう見方をしてもらえたら、よりこの作品を楽しんでいただけると思います。本当に、キャラクター全員が濃いので(笑)。それぞれのキャラクターの気持ちになって、このドタバタコメディを楽しんでいただけたらと思います。
畠山:少しずつ歯車が噛み合わなくなっていく中で、僕の演じる叶谷は焦っていくのですが(笑)。とても普通の男だった叶谷が、どんなにヤバい状況になっても諦めない、一人の人間として成長していく姿がドラマティックに描かれていると思います。笑える作品であり、人物の成長を追った話でもある。その上で、すごい人たちの中に普通の人が巻き込まれるとこうなるんだ・・・ということが、とても感じられると思います(笑)。観終わったあとに「あ~、おもしろかった!」と言ってもらえる作品だと思うので、気軽に観に来てください。よろしくお願いします!
◆公演情報
『OUT OF FOCUS!』
2019年2月9日(土)~2月17日(日) 東京・シアターサンモール
【演出】鈴木智晴(劇団東京都鈴木区)
【脚本】葛木英
【出演】
畠山遼/北村健人・正木郁・柏木佑介・石井由多加・村田恒/
岸本卓也・向野章太郎/髙木俊・増田裕生
【あらすじ】
とある田舎の山奥の廃墟。アイドルとの熱愛を報道されてしまった芸人が強面の男に縛られている。命の危機を感じ怯える芸人と、怒り狂う強面の男。しかしよく見るとあちこちにカメラが・・・??そして廃墟へと集まってくる様々な人たち。嘘と勘違いと人情が交差する、バカ騒ぎが始まる――!
◆バレンタインチョコレートのお渡し会&お見送り会
2月10日(日)14;00公演 畠山・北村・岸本・増田
2月10日(日)18:00公演 畠山・北村・岸本・増田
2月11日(月)14:00公演 畠山・柏木・石井・向野
2月11日(月)18:00公演 畠山・正木・村田・髙木
2月12日(火)19:00公演 畠山・正木・村田・髙木
2月13日(水)19:00公演 畠山・柏木・石井・向野
2月14日(木)19:00公演 全キャスト
2月15日(金)19:00公演 畠山・正木・村田・髙木
2月16日(土)14:00公演 畠山・北村・岸本・増田
2月16日(土)18:00公演 畠山・柏木・石井・向野
【トライフルエンターテインメント公式HP】http://trifle-stage.com/
【トライフルエンターテインメント公式YouTubeアカウント】
https://www.youtube.com/channel/UCpq1lg4BInjj_JUWPNzJM3w
【『OUT OF FOCUS!』公式ブログ】http://outoffocus-stage.blog.jp/
【『OUT OF FOCUS!』公式Twitter】@outoffocusstage
(撮影/エンタステージ編集部)