誰もが知っているシェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」がフレンチロックミュージカルとして現代に降臨!宝塚歌劇団での初演以来、さまざまなキャストで再演を重ねている本作が、2017年1月、TBS赤坂ACTシアターにて再び幕を開ける。
エンタステージではキャスト5人のインタビューを敢行!第3弾としてロミオの親友・マーキューシオ役(Wキャスト)を演じる小野賢章に話を聞いた。子役時代は『エリザベート』や『ライオンキング』に出演し、『黒子のバスケ』『遊☆戯☆王 ARC-V』『ユーリ!!! on ICE』等の大人気アニメ作品で声優としても活躍する彼が、なぜ今、ふたたびミュージカルに挑戦しようと決意したのか―。
演出・小池修一郎氏との出会いは『エリザベート』
――製作発表会見では、演出の小池(修一郎)さんから“衝撃”のお話がありました。
そうでしたね(笑)。『エリザベート』に少年ルドルフ役で出させていただいて、その後『モーツァルト!』アマデ役のオーディションも受けたのですが、変声期が始まっていたこともあり、そちらはダメで、悔しくてわんわん泣きながら帰ったと発表されてしまいました(笑)。
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――でも『モーツァルト!』のアマデは、劇中で一言も台詞を喋らない役ですよね?
僕の場合は、変声期のスタートとともに、身長もどんどん伸び始めたので、そこがアマデにはハマらなかったみたいです。幼い頃のことなので、小池先生にお話いただくまで、僕自身はほぼ忘れていたエピソードなんですけど(笑)。ただ、変声期に入って、高音がどんどん出なくなり、それが歌に対する苦手意識に繋がっていったのは確かですね。
――そんな小野さんが、どうして今回『ロミオ&ジュリエット』のオーディションに挑戦されたのかが気になります。
もともと子役時代からミュージカルには出演させていただいていて、大人になってからも興味はあったのですが、なかなか一歩を踏み出す勇気が出なくて・・・声のお仕事もあり、スケジュール調整が難しいということもありましたし。でも今回、小池先生が演出なさり、若手が多く出演する作品ということで、あまり過度な期待を自分に課せずに、オーディションを受けてみようと決めました。
――オーディションでは最初からマーキューシオ役を希望されていたのでしょうか。
正直に言ってしまうと、僕、ミュージカルとしての『ロミオ&ジュリエット』をこれまで観劇する機会がなかったんです。オーディション時期もスケジュールがすごくタイトで、ベンヴォ―リオ役とマーキューシオ役のどちらで受けようか最後まで迷いました。それで2人のナンバーを改めて聴いてみた時に、マーキューシオの歌の方がすっと自分の中に入って来たんです。その時にこの役をやってみたいとより強く思い、マーキューシオで受けました。
――オーディションの現場はいかがでしたか。
それがもう、僕、本当にボロボロだったんですよ(笑)。それで一旦打ちのめされたんですが、このままで終わるのは悔しいし、絶対嫌だと思って、会場を出る前に「稽古をすれば必ずもっと上手くなります!」って宣言しちゃったんです・・・爪痕だけでも残したかったんですね(笑)。それで「あーダメだったー」って落ち込みながら帰ったら、後日、合格の報せをいただいて、本当に驚きました。
自分で「もっと上手くなります!」と言ってしまった以上、これから試練の連続だとも思うのですが、子どもの頃から知ってくださっている小池先生と、大人になった今、ふたたびご一緒させていただけるのはとても光栄なことだと思っています。
マーキューシオの死が物語を動かしていく
――現時点で、小野さんがマーキューシオをどう捉えているのかうかがいたいです。
『ロミオ&ジュリエット』は、とても「死」が近いところにある作品だと思うんです。その中で物語を動かすひとつの発端となるのがマーキューシオの死ですよね。それが周囲にどんな影響をもたらすのかを考えながら、ドラマティックにこの役を演じられればと思っています。ダンスや歌ももちろん頑張りますが、特に演技の部分に関してはこだわって、しっかり役を立ち上げていきたいです。Wキャストの平間壮一さんには、ダンスを学ばせていただきつつ、お互いに良い関係を作れたらいいな、と。
――今回、若手キャストと大人キャストの混成チームになりますが、ご共演経験があるのは?
どちらかというと、大人チームでご一緒させていただいた方が多いです。シルビア・グラブさんとは『エリザベート』で共演しましたし、岡幸二郎さんとは映像でご一緒させていただきました。岸祐二さんも存じていますし、坂元健児さんとは直接の共演ではないんですが『ライオンキング』のシンバとヤングシンバという“同一ライオン”を演じた間柄です。
改めてキャストの皆さんを拝見すると、すごい方たちばかりで不安もありますが「ミュージカルは初めてなので一から勉強します!」くらいの覚悟で臨むつもりです。
声優としても大人気・・・新たな挑戦に向けて
――小野さんといえば、声優さんとして、また俳優さんとしても多くのお仕事をなさっている印象です。例えば『黒子のバスケ』や『ReLIFE』では、アニメと舞台の双方で主演をつとめられていますし・・・これって、スペシャルなことですよね。
そう言っていただけると嬉しいです!ちょっとした“いばらの道”を歩んでいます(笑)。僕自身、声優です!っていうよりは、俳優の一人として仕事をさせていただいている意識が強い気もします。今は本当にやりたいことが多いんですが・・・そこにはスケジュールの壁が・・・(笑)。
――レギュラーでアニメの収録が多い時期は特に。
そうなんですよ。ですから『ロミオ&ジュリエット』の期間中は、ここに照準を絞って、事務所の方とも相談し、他の仕事はなるべく入れないようにしています。この作品で自分の役をしっかり務めることができたら、新たな世界が広がるとも思いますし。
――ミュージカルの現場以外でもご活躍なさっている小野さんが出演なさることによって、新しい観客も『ロミオ&ジュリエット』の世界に足を向けてくれる気がします。
そうなったらいいですね。やっぱり普段舞台を見慣れない方にとって、ミュージカルは敷居の高い部分もあるかもしれませんので、そういうところも払しょく出来たら良いな、と。なんて、いろいろ言ってますけど、まずは自分がミュージカルの舞台にしっかり立てるよう頑張らないといけないんです!
――決意のほどが伝わってきます!『エリザベート』にご出演なさった時は、小池先生、怖かったですか?
いや、全然怖くなかったです。僕・・・ちゃんと出来ていた方だと思いますし(笑)。
――(笑)言いましたね!
はい(笑)。少年・ルドルフや、ヤングシンバを演じていた当時は“自分最強!”だと思っていましたから(笑)。でも、ある時期から、それまで楽に出せていた高音が出なくなり、それがすごいショックで・・・。そのショックが大きすぎて、歌とはずっと距離を置いていたんです。高校の時に、趣味としてバンドをやったくらいで、本格的な歌のレッスンは子どもの時以来受けていませんので、今回の本番に向けて、それこそ死ぬ気で取り組んでいきます。
――お稽古やレッスンはお好きですか?
いや・・・これが・・・実は嫌いなんですよ(笑)。
――小野さん、もしかして極端なご性格だったりします?
まさにそうですね。0か100かみたいなところもありますし、もともとスロースターターなんです。宿題も二学期が始まってから慌ててやるタイプ(笑)。人前で頑張っている姿を見せるのも好きではないので、ひとりでコツコツ練習して、ある程度形になったところでみんなの輪の中に入る感じです。
――率直なお話、ありがとうございます。今、お忙しいと思いますが、リフレッシュはどんな方法でなさっていますか。
買い物、ですね。洋服や靴が好きなので、お気に入りのセレクトショップに良く行きます。最近はスニーカーにハマっていて、先日も清水の舞台から飛び降りるつもりで大物を買いました(笑)。
――買ったスニーカーは飾るタイプですか?それとも履き倒します?
履き倒します。ただ、最初は履きつぶすつもりで買うんですが、1か月くらい毎日履いているとやっぱり飽きちゃって・・・また次のスニーカーが欲しくなってしまうという・・・ダメですね(笑)。
――買い物あるあるですね(笑)。今日お話をうかがって、大人になった小野さんがどうしてミュージカルの舞台に挑戦されるのか、わかったような気がします!
ありがとうございます。先程、スロースターターだとお伝えしましたが、今回はそうも言っていられませんので、早めに走り出すつもりです。また、若手チームのメンバーを拝見しても、良いライバルというか、共演者として楽しく切磋琢磨していける方たちばかりだと思いますので、みんなとエネルギーのやり取りをし、刺激し合いながら『ロミオ&ジュリエット』カンパニーの一員として作品作りに参加していきたいです。
声優としても大活躍の彼がミュージカルに挑戦する・・・最初にその話を聞いた時は驚いた。が、むしろ小野賢章のルーツは舞台にあったのだ。
インタビュー時、ほんの少しうつむき加減になりながら、真摯に言葉を探し、シャイな面と芯の強さとを併せ持つトークに惹きこまれる。この人がエネルギーに満ち溢れるマーキューシオを演じる姿を観てみたいと強く思った。
子役としてミュージカルの舞台に立ち“自分最強”と思っていた少年が、変声期の挫折を経て、大人の俳優としてまたこの世界に帰ってくる・・・その瞬間を楽しみに待ちたいと思う。
◆ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』
2017年1月15日(日)~2月14日(火) 東京・TBS赤坂ACTシアター
2017年2月22日(水)~3月5日(日) 大阪・梅田芸術劇場 メインホール
(撮影/高橋将志)