2016年7月28日(木)に東京・Zeppブルーシアター六本木にて、演出家・西田シャトナーの作品を上演する“シャトナー of ワンダー”の第4弾『ソラオの世界』が初日を迎える。本作では、夢の中に閉じ込められた青年・ソラオの冒険を中心に、西田の幻想的な世界観を描く。開幕が間近に迫る中、主人公のソラオを演じる多和田秀弥に話を聞いた。
日々、ソラオの世界に影響されて
――まもなく本番ですが、稽古場はどんな雰囲気ですか?
熱いですね。シャトナーさんがとてもユーモア溢れる方なので、みんなで笑いながら稽古しています。もちろん、ピリッと緊張する時もありますよ。シャトナーさんが熱く僕らと接してくださるので、自然とこちらの心も開いていくんです。この間は、キャストの千綿勇平くんのバースディサプライズをしまして、スタッフさんが用意してくれたケーキにシャトナーさんがイラストを描いてくれました。
――楽しそうですね!久々の舞台、かつ、主演ということで緊張はありませんでしたか?
ここ1年半くらいは映像のお仕事が続いていたので、稽古当初は少し戸惑いました。「こんなに身体で表現しなきゃいけなかったっけ?!」と思いましたね。でも、やるしかない!何より、ずっと舞台をやりたかったこともあり、嬉しいです。もともと、仲のいい俳優がシャトナーさんの舞台に出ているのを観ていたので、出演が決まった時から「舞台ですごい空気感を創る関西出身の演出家さんだ!」と興奮して、ご一緒できることを楽しみにしていたんですよ。
――『ソラオの世界』はこれまでも何度か上演されていますが、今回、台本がかなり改訂されていると聞きました。
全体的に書き変えているみたいです。もちろん出演者も違うので、過去の公演にはない空気感ができていると思いますよ。僕らがやるからこそおもしろい、という魅力がたくさん詰まった作品になりそうです。
――どんな物語なんですか?チラシやHPを見ると、美しく幻想的な作品なのかなという印象ですが・・・。
事前に公開されているビジュアルからは想像できないほど笑えると思いますよ!チラシを見ると「どういう話なのかな」「ちょっと難しいのかな・・・」と思うかもしれないですけれど、すごく分かりやすい物語です。
物語としては、大学生のソラオが夢の世界に閉じ込められてしまうんですが、作品の一本軸になっているのは、僕らが普通に生きている中で感じるようなこと。そこに、それぞれのキャラクターのストーリーが見え隠れしています。ただただ笑えるシーンもありながら、メッセージ性も感じていただける作品です。過去のシャトナーさんの作品を観た方にとっては、世界観や笑いなど、通じるものを感じるはずですよ。
――主人公のソラオがかなり能天気な性格なこともあり、物語も明るいですね。
そうなんです。いい奴なんですけど、どこかバカなんですよね。僕はあんまり似ていないと思います・・・ソラオに似ていたら、ものすごくダメな人間になっちゃう(笑)。
夢の中に閉じ込められて大変なことになっても、なんだかんだ楽しんでますからね。でも、僕もよく分からない状況になったら、悩んでも解決できないと思ったらソラオみたいに開き直るかも。考えてもどうしたらいいか思いつかない時は、とりあえずワアーッと動いてみて、ダメならまた考えればいいやっていうところは、ちょっとソラオに似ているのかな。ソラオほどじゃないですけどね(笑)。ただ演じていて違和感はないので、自然とソラオに近づいていっているのかもしれないし、もしかしたらシャトナーさんが僕の個性とソラオを近づけてくださっているのかもしれません。
――ソラオみたいに、自分に都合のいい夢を見たり?
いえ、僕はもともとあまり夢を見ないんですよ。でも最近は、夢に対する考え方も少し変わったかな。『ソラオの世界』って、「今って現実なの?夢なの?どっち?」と分からなくなったりもするんですが、その感覚って現実でもあるんだろうなと思うようになりました。今までは「夢と現実がごちゃごちゃになるなんて、あるわけないだろ~」って思っていたのに、ふと「もしかすると今ここで喋っているのも夢なのかな・・・」なんて考えちゃいます。他にも、現実に近い夢を見て「これって正夢?なんかソラオっぽい!」と思ったり、稽古中の夢を見るようになったり。今までそんなことなかったのに、不思議ですよ。ソラオの世界観に感覚が寄っていっちゃったのかな。
客席で想像していた何倍もやることがあった
――稽古が始まる前は「シャトナーさんのお芝居はどこまでアドリブか分からない」と言っていましたね。
客席で観ていた時はそう思っていました。実際に稽古に入ると、もちろん台本はあるんですよ。それをベースに、シャトナーさんが役者の良さを活かしてくださっているから、演技をしているのではなく自然に見えるのかな。
稽古場でもよく、そのキャストの特技をどこかのシーンに入れられないかと考えてくださるんですよ。シャトナーさんが「こうしてみよう」と提案することもあるし、演じる側が「これはどうですか?」と意見を出すこともあります。一度決めたことでも、「昨日はおもしろいと思ったけど、今日は違うな」とまた変わっていく。たくさん変化を重ねながら、キャラクターに本人の魅力が加わって、その役がボリュームアップしていくんです。その人にしかできない役ができ上がっていくのを見ていると、「だからこの人は、この役なんだろうな」と納得しちゃいます。だからこそ僕も、お客さんに「あれは演技なのかな?素なのかな?」と感じてもらえるくらい、自然に演じたいなと思うようになりましたね。
――役者の個性を活かすということは、多和田さんの特技を披露したりも?
特技というわけではないんですけど、歌を歌いますよ。音楽のジャッキー池田さんが今回のために書き下ろしてくださったんです。歌詞はシャトナーさんが書かれています。ソラオはバンドをやってるので、そのメンバーと歌うロック調の曲です。ストーリーに沿った歌詞なので、たぶん舞台を観た人が聴くとかなりグッとくるんじゃないかな。バンドメンバー(小野健斗、平牧仁、桑野晃輔)もそれぞれかっこいいので、役者それぞれに注目して観ていただきたいです。
――役者さんたちは、ソラオの夢の中に出てくるいろんな人間や動物たちなど、一人何役も演じるそうですね。
それも見どころですね!みんないろんな役を演じていますよ。僕はソラオだけなんですが、1ヶ所、あるシーンだけ、別の役をやることになりました。結構インパクトがあると思いますので、それは観てのお楽しみということで・・・がんばります(笑)。
――楽しみです。またシャトナーさんの演出は、小道具を使わずマイムで表現するのも見どころなのかなと。
そうなんです!バイクに乗る動きや、その場の状況を台詞とマイムだけで説明したりします。初めての経験なので、みんなで試行錯誤しています。乗り物に乗ったり、人間じゃないものを演じたりする時は、とにかくなりきってやってますね。かなり動きまわるしストーリーも目まぐるしいので、スピード感があって観ている方は楽しいはずですよ。
――観客の想像力を刺激する作品になりそうです。
そうですね。シャトナー ofワンダーの前作『ロボ・ロボ』もそうでしたが、普通の空間じゃないんです。登場人物は、人間じゃなかったり、目に見えないものをマイムで表現したり、風船を果物に見立てたりしている。楽しむには想像力が必要なんだろうなと思っていたんですけど、それ以前に、僕たちがお客さんに想像してもらうための空間を創らなければ伝わらないということが、稽古を重ねていくうちに分かってきました。お客さんに夢の世界を想像してもらうには、僕たちが「ここはこういう世界なんだ」と、ちゃんと想像して表現しないといけない。観客として観ている時はただただ笑っていたけれど、思っていたより何倍もやらなきゃいけないことがありました。マイムも実際にやるとすごく難しいし、僕ら次第で良くも悪くもなるんだなというのを実感しています。
――特にシャトナーさんの作品は、役者さんが“そこにいる”ということを楽しめる舞台だと思います。
その感覚は強いですね!僕も客席で観ていて、そう思ったことがあります。生身の人間が目の前にいるからこそ、毎公演、空気が変わるんでしょうね。その時来てくださっているお客さんの雰囲気でも変化するはずですから、本番中に気づけることや楽しめることも、まだまだあるんだろうと楽しみです。映像とはまた違う、いい経験ができそうです。
――とはいえ、まだ稽古場では稽古着ですし照明などもないですよね。
そうなんですよ。稽古中は衣装も着ていないし、舞台セットも仮だし、照明もない。実際のステージも稽古場より横幅が広いから、まだ分からないことだらけです。すべてがそろった劇場に入ると、きっと驚くんだろうなあ。もちろんお客さんにも驚いていただける空間になるはずですから、一緒に体験して欲しいですね。ぜひ劇場で『ソラオの世界』を味わっていただけると嬉しいです!
◆公演情報
シャトナー of ワンダー#4『ソラオの世界』
7月28日(木)~7月31日(日) 東京・Zeppブルーシアター六本木
◆プロフィール
多和田秀弥(たわだひでや)
1993年11月5日生まれ、大阪府出身。2010年FINEBOYS専属モデルオーディションにて特別賞受賞。2012年から2014年までミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズンの青学(せいがく)7代目・手塚国光役を務める。この他、TVスーパー戦隊シリーズ『手裏剣戦隊ニンニンジャー』、ドラマ『不機嫌な果実』などに出演。また2016年4月より『めざましテレビ』モアセブンにてリポーターを務める。