『ブロッケンの妖怪』大貫勇輔インタビュー!「ゾクッとしながら、ウフフと笑っちゃうような舞台にしたい」

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竹中直人と生瀬勝久が送るホラーコメディ『ブロッケンの妖怪』が、2015年10月30日(金)に幕を開け全国12カ所を巡演する。本舞台は、2011年に個性派俳優の竹中と生瀬がタッグを組んで話題となった「竹生企画」が送る第二弾。また、本作で佐々木希が初舞台を踏むことも話題のひとつだ。本作のキャスト中では最年少でありながらも、ダンサーとして華々しいキャリアを持つ大貫勇輔に話を聞いた。

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――出演が決まった時、どう思われましたか?

こんな素敵なキャストの方たちと共演できることがすごく幸せだなあと思いました。僕、竹中直人さんのファンなんですよ。映画の『ウォーターボーイズ』や『Shall we ダンス?』がすごく好きで!だからまず、竹中さんと一緒にお芝居ができることがとても嬉しいです。
生瀬さんも『セカンド・ラブ』というドラマでご一緒させていただきましたが、その時はほとんど絡みがなかったんです。田口浩正さんは同じ事務所ということもあり、2013年のミュージカル『100万回生きたねこ』でご一緒した時によく飲みに連れて行っていただきました。本当に素晴らしい先輩たちに囲まれているなあと思います。

――実際に稽古してみて、竹中さんの印象はいかがですか?

まず竹中さんは、ものすごい引力。僕が偉そうには言えないですけれど、芝居なのかテクニックなのか、存在そのものが相手をご自身のほうに引き寄せる強い魅力を持っています。それに、僕はダンサーなので気になるのかもしれませんが、肉体の動きがめちゃくちゃ面白い。普通じゃなくて、変です(笑)。他の人はしない動きをするのに、ちゃんと芝居が成立しているのはすごいなって思います。

あとはやっぱり顔面の力がめちゃくちゃ強い。笑ってしまいそうになります。あのすごい迫力に慣れることができるといいんですが・・・(笑)。

――表情に迫力があるといえば、生瀬さんもありますよね。

生瀬さんと竹中さんは目の力がすごく強いです。それに生瀬さんは、芝居の受け方が本当に上手で、僕がどんなボールを投げてもうまく拾ってくださる。時には自分のほうに引っ張ってくれたり、反対にバンッとぶつけてくれたり・・・生瀬さんの持っている引出しの多さに驚くばかりです。お二人と芝居するのはドキドキします。

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――大貫さんの役は、高橋惠子さん演じる洋館の女主人に仕える使用人ですね。

高橋さんは品格があって、いかにも霧に囲まれた洋館の奥様という感じで素敵です。僕の役は高橋さんの館の使用人なのでご一緒するシーンも多いんですが、隣りに立っていると安心感があって、とても心地がいいんです。

同じく洋館に仕える田口さんも、立ち姿と居住まいだけですごく笑わせてくれる。もう存在が完結してるんですよね。田口さんを見ているだけで、なんて魅力的なんだろうと思ってしまう。安藤聖さんも舞台経験が豊富で、本当に魅力的な俳優さんばかりです。

――そのなかで佐々木希さんは、初舞台だそうですね。

そうですね。希ちゃんは映像の経験が豊富なのですが、「舞台は本当にわからないことだらけだ」と言っています。竹中さんや生瀬さんがいろいろ教えてくださったり、彼女から聞きに行ったりしています。手の置き所をどうしたらいいのかなどの課題はあるみたいですけど、希ちゃんは顔の力や佇まいがすごく素敵で、彼女の目を見ただけで恋ができる。それはすごいなあと思います。
それに、声もとても綺麗で心地がいいんです! 今回、声の魅力的な役者さんが揃いましたね。

――稽古場の雰囲気はいかがですか?

和気あいあいとしていて、みんなでコアリズムでウォーミングアップしたりしています。でも僕が一番年下なので、はしゃぐのはちょっと緊張しちゃいますけどね(笑)

稽古ではとにかく、いろいろ考えすぎないようにしています。他の役者さんたちが稽古で投げかけてくるものが日々違うので、それをちゃんと敏感にキャッチできるように、その場で感じることを信じるようにしています。身ひとつで、自分の感覚を研ぎすまして、絶好調の状態で稽古場に来るのが一番いいかなと思っています。
そのうちアドリブが入れられるようになったら最高なんですけど、どうかな・・・。みなさんアドリブするのかな、怖いなぁ(笑)

――もしアドリブもあるとすると、とても楽しそうです!ホラーコメディだと謳っていますし、笑えるシーンも多そうですね。

そうですね。ギャグというより、普通に話していることがなんだか面白い、といったコメディです。日常の中にある、人が「ふふっ」と微笑んでしまうちょっとした瞬間が散りばめられていますね。

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――全体的には、どんな作品になりそうですか?

お客さんに対しては、もしかすると不親切な演劇作品かもしれないです。前半は説明しないまま物語が進んでいくので、謎が多いんです。でもその不親切さが「いったい何なんだろう」とお客さんの興味を引いていく。何かが始まるような気がする作品なんですよね。

そのドキドキ感をどこまで引き出せるかが、作品を作るうえで重要なポイントだと思っています。謎めいているなかでも、舞台上で交わされる人と人との交流はリアルで、ぽろっと出る会話の面白さがある。展開が読めない不安定な状態で、いかに登場人物の関係をお客さんに見せていけるかというのが、難しくもあり面白さでもあるのかな。

ですので、観にいらした方には、不思議な体験をしてもらえたらと思います。竹中さんの芸に「怒りながら笑う」というのがありますが、そんなふうに、いくつもの気持ちを同時に感じられるような芝居を見せたいです。ちょっとゾクッとしながら、ウフフって笑っちゃう、っていうことができたら一番理想的ですね。あんまり深く考えずに、キャストたちが奏でる何かを観に来てもらえたらなあと思います。

――大貫さんが踊るシーンもあるんですか?

ちょっとだけあります。踊るというか、動くくらいです。どんな動きにしようかまだいろいろ試している段階です。

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目次

「ダンスの嘘」と「芝居の嘘」、真逆だからおもしろい

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――本格的なストレートプレイなんですね。二役演じるようなシーンもあるとか?

そうです! ネタバレになるので秘密ですけど(笑)

――どんな演技が観られるのか、楽しみです。倉持裕さんの演出はどうですか?

もともと倉持さんのお名前は知っていたんですが、それほど詳しくはなかったんです。でも役者仲間たちが「倉持さんのお芝居に出られるのいいなー!」って言ってくれて、どんな感じになるんだろうと楽しみにしていました。

実際に稽古が始まってみると、とても変わった演出家さんという印象です。今までミュージカルやダンスをしたり、栗山民也さんのお芝居に出演したり、蜷川幸雄さんの稽古場に行ったりといろいろ見てきましたが、これほど何も言わずに何回も通す稽古は初めてです。だから初めはすごく不安でした。ダメ出しはほとんどなくて、倉持さんからはたまに言われるのは、「今のはちょっと止めてみようか」とか「あのセリフの時にちょっとそこに立ってみようか」くらいです。何が正しいかとか何が間違っているかというのがなく、どんどん稽古が進んでいくんです。

でも、最近ではそれを楽しんでいこうと思うようになりました。稽古場では僕からも自由に、「自分はこう思っています」といろいろ提示してみています。

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――役者としての大貫さんに期待してしまいます。でも今回でストレートプレイはまだ2作目なんですよね?

はい、ですのでほとんど初めてのような感じです。今回はオーディションを受けて出演が決まったんですが、今の僕はとにかく芝居がしたくてしたくてしょうがないんです。ストレートプレイに出演できることが決まってとても嬉しかったです。

――ダンスではなく、お芝居をしてみたかった?

こんなに芝居がしたいと思うようになったのは、実は最近なんです。今年の6月に『アドルフに告ぐ』という舞台で初めて役者として舞台に立ったことがきっかけで、お芝居にハマりました。もっと芝居をやりたいと思って勉強している毎日です。
僕にとってお芝居はダンスよりも奥が深くて、この深淵にどこまで踏み込めるか・・・という感覚がすごく面白い。今は暗闇を手探りで歩いているようで、とてもスリリングで楽しいです。

――ダンスとお芝居では、舞台に立っている感覚は違いますか?

全然違いますね。僕にとっては肉体を扱うダンスの方がやりやすくて、自分の心を動かしていく演技のほうがとても難しいです。体を使う方がよっぽど心が動きます。だから今芝居をしていると、体を動かさずして心を動かす作業が大変なんです。

――ダンスは体を動かすけれど、芝居は心を動かすんですね。

はい。たぶん「ダンスの嘘」と「芝居の嘘」って真逆なんですよ。
芝居って最初の前提として「嘘」がある。作られたセリフを言う・・・つまり嘘をつくことで、お客さんにリアルを感じさせるんです。セリフは嘘なので、役者は自分の心に嘘をついて、それを本当だと感じるところにまで気持ちを持っていく。

けれどダンスは逆で、肉体は最初から目の前に存在する“リアル”なんですよ。たしかに日常のなかで突然踊りだすことはないけれど、動きには実感がある。その実感にもとづいて非現実的な動きをしているのがダンスなので、自分に嘘をついている感覚はないんです。
・・・だから僕にとっては逆なんです、やっている作業が。だから面白いです。
最近やっとセリフを言うことへの抵抗がなくなってきました。

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――それが芝居のもっとも難しいところ?

そうですね。もうひとつは、芝居は登場人物が増えるほど人間関係も増えていくから難しいです。たとえば舞台でセリフを話す時は、自分が相手役に対して感じている気持ちと、相手役が自分に対して感じている気持ちを感じながら、覚えたセリフを本当にその瞬間に感じたまま話さなければいけない。さらにそこには、自分と相手役の関係だけではなくて、同じ舞台上にいる他の登場人物のことも意識してやらなければいけない。
日常生活では自然にしていることなのに、あえてやるとなると難しいですね。

――たしかに、普段は意識せずにやっていますね。

そうやってひとつのシーンを自分の中に落とし込んでいくには、自分の役柄も、セリフも、そのシーンにおいての人間関係も理解して納得していかなければいけない。それはダンスよりもすごく手間がかかる作業です。そこがすごく面白い。でも公演日程は決まっているから、時間との戦いですね。

――そんなに難しいのに演技をしたいのはなぜ?

できないことが悔しい。基本的に負けず嫌いなんです!
でもそれだけではなく、芝居をやってみて自分の踊りが良くなった感じがしているんです。踊りそのものや、取り組み方や、人との関わり方が変わった気がします。芝居を始めたことが、自分の人生にとってすごくいい方向に働いているから、ハマっていっているのかもしれないです。

たぶん永遠に、芝居も踊りも「これだ!」と実感することはないとは思うんですけど、芝居がうまくなってもっともっと先に進んで行った時に、どういうふうに自分の感覚や生き方が変わっていくのか興味深いです。

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◇大貫勇輔 プロフィール◇
1988年、神奈川県生まれ。ダンサー。ジャズ、バレエ、ストリート、アクロバット、コンテンポラリーなど、様々な身体表現を極める。2011年、ミュージカル『ロミオとジュリエット』で演出家の小池修一郎に見いだされ、死のダンサー役に大抜擢。2012年、ミュージカル『キャバレー』で藤原紀香の相手役として俳優デビュー。コンテンポラリーダンスの巨匠マシュー・ボーンの『ドリアン・グレイ』主演を務めたほか、最近ではドラマでも活躍している。

『ブロッケンの妖怪』

◇『ブロッケンの妖怪』◇
10月30日(金)~11月1日(日)
東京・北千住シアター1010
11月12日(木)~29日(日)
日比谷・シアタークリエ
ほか、広島、大阪、静岡、名古屋、福岡、
鹿児島、鳥取、新潟、岩手、栃木にて公演。

撮影:高橋将志

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この記事を書いた人

高知出身。大学の演劇コースを卒業後、雑誌編集者・インタビューライター・シナリオライターとして活動。

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