【観劇レポ】大橋和也&寺西拓人W主演の舞台『AmberS-アンバース-』加藤シゲアキが放つ完全オリジナル作が開いた新劇場の扉

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2026年春、東京・有明南地区に誕生した新たなエンターテインメントの殿堂「東京ドリームパーク」。その中核をなす新劇場「EX THEATER ARIAKE」が、ついに華々しい産声を上げた。こけら落とし公演として上演されているのが、大橋和也と寺西拓人がW主演を務める舞台『AmberS-アンバース-』。本作は、クリエイティブプロデューサーとして原作・脚本を手掛ける加藤シゲアキが、この新たな劇場の幕開けのために書き下ろした完全オリジナルの意欲作。AI技術が社会に深く浸透した近未来的な世界を舞台に、伝説の秘薬を巡る人間たちの抗争と思惑を、圧倒的なスケールで描き出している。

出演者には、猪狩蒼弥、嶋﨑斗亜、川﨑皇輝ら気鋭の若手から、真風涼帆、市川右團次といった確かな実力を持つベテランまで、多彩なキャスト陣が集結。重厚なSFファンタジーの世界観と、生身の人間がぶつかり合う普遍的なドラマは、いかにして舞台上に現出されたのか。新たな歴史の「はじまり」を告げる熱気と、深い没入感に満ちた本公演の模様をレポートする。

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目次

加藤シゲアキ原作・脚本の舞台『AmberS-アンバース-』のあらすじ:伝説の秘薬を巡る壮大なストーリー

真紅の幕が上がり、岩肌を感じさせる重厚なセットが現れる。おごそかな幕開けに、「未知の物語」への期待は自然に高まっていく。舞台『AmberS-アンバース-』はそうして”始まる”。

物語は、大橋和也演じるイヴルが営む町はずれの酒場から始まる。酒場がある地方都市「ミトキオシティ」では、AI技術を有する大企業「ロメロタンク」のCEO・ヴィンガス(市川右團次)が巨大国家『パジャーリ』からの独立運動を扇動し、情勢がきな臭い。

一方イヴルの酒場には、両足が不自由なイヴルの弟・ルイ(嶋﨑斗亜)のほか、反政府活動組織「ユラリリス」のメンバー、お忍びで訪れたヴィンガスの令嬢ノア(山﨑玲奈)など多様な人物が集まっていた。そこに流しのピアニスト・アラン(寺西拓人)が現れる。ノアに絡んだ酔客を軽くあしらうなど、アランはめっぽう腕が立ち、ミステリアスだ。

そんな騒ぎのなか、突然ルイが車椅子から崩れ落ち、「虎が鳴いた。・・・クラッシュがおこる・・・」と呻く。その言葉を聞くや否や、イヴルは大急ぎで酒場を飛び出していき・・・。そうして、伝説の秘薬「AmberS-アンバース-」を巡る壮大なストーリーが動き出す。

EX THEATER ARIAKE こけら落とし公演!新劇場を生かした河原雅彦の演出と「虎」の造形

本作の見どころは、何と言ってもファンタジックで重厚な作品世界と、そこで描かれる普遍的な人間ドラマだ。国家や都市をはじめ架空の用語が飛び交う作品だが、細部まで作り込まれた設定は軽さを感じさせない。物語の余白を想像させる構成で、イヴルとアラン以外の登場人物や組織にも、それぞれの背景があるのだろうと感じさせる。表層をなぞるにとどまらない物語構成は作品に奥行きをもたらし、観客は自然に物語の世界へと入り込むことができる。また、舞台設定こそファンタジックだが、そこで描かれる人間たちの物語は、現実世界に通じる不条理、思想、対立、喜びをはらみ、リアリティがある。AIが深く浸透したその社会は、現代社会の未来のようでもあり、AIと人間の在り方にも深く考えさせられた。

加藤シゲアキが描き出した緻密で壮大な世界観を、舞台上に鮮やかに現出させたのは、演出を手掛ける河原雅彦だ。本公演がこけら落としとなる「EX THEATER ARIAKE」の劇場としての特性を、全面的に生かした大胆な手腕も公演の醍醐味となっている。場面転換の多い本作だが、セットと映像表現が巧みに組み合わされ、異なる空間が次々と立ち上がる。場面が切り替わるたびに、劇場全体の空気も一転し、その変化が心地よい。作品のファンタジックな世界観を視覚的・聴覚的に支え、没入感をさらに高めてくれる。

物語の鍵となる「虎」の造形にも息を呑んだ。精緻に作り込まれた造形美と、現実に息づくかのような自然で滑らかな動き。本作の世界を形づくるうえで欠かせない特異点となっている。脚本と演出、想像と創造の可能性は無限大だ。

大橋和也と寺西拓人、対照的な魅力で作品を牽引するW主演

重厚な物語と洗練された舞台演出。そのステージに立つ俳優陣も、確かな実力を備えた顔ぶれが揃っている。

主人公のひとり、イヴルを演じる大橋和也は、本人の持つ魅力そのままに、明るさと芯の強さを感じさせる。ときに息苦しさを伴う展開の中で、イヴルの視点は観客の羅針盤のように機能する。大橋のまっすぐで影のない演技、力強い眼差しはストーリーだけではなく、登場人物の心をも前へと押し出していくようだ。気持ちが丁寧に込められた歌声には大空を思わせる温かな包容力があり、心に余韻を残した。

まさに盤石、ともいうべき力量を示したのは、もうひとりの主人公・アランを演じる寺西拓人だ。数々の舞台で培われた表現力により、このミステリアスな難役を無理なく造形した。セリフ運びや間の取り方、ときに明るく、ときに切ない表情を帯びる歌唱、そして落ち着いた深みのある佇まい。寺西の確かな実力は風格さえ漂う。役柄とも相まって大橋の明朗さと対照をなし、作品全体のバランスをも支えている。身のこなしも伸びやかで、鮮やかな足技の光る殺陣にも注目したい。

猪狩蒼弥、嶋﨑斗亜ら若手から実力派まで、物語に奥行きを与える多彩なキャストたち

ユラリリスのリーダー・オルッカを演じる猪狩蒼弥は、軽妙で安定感ある演技を堂々と披露した。オルッカは、リーダーとしての軸と信奉者としての熱を併せ持ちながら、バランス感覚や余裕も失わない、洒脱な人物だ。猪狩はそのクールな魅力を、全身の動きや声音で見事に描き出した。

嶋﨑斗亜は、イヴルの弟・ルイを繊細かつ丁寧に演じた。明晰な頭脳や理想を持ちながらも、思うように動き回ることができないもどかしさ。ルイの複雑な心境を、緩急ある演技で息づかせた。車椅子での所作に加え、身体の制約を伝える表現も巧みで、ルイという人物に説得力を与えている。

川﨑皇輝演じるユラリリスのエンジニア・エンリケは、本作の中でもひときわ清涼な印象を残す。端正な立ち居振る舞いからは、川﨑の舞台経験の豊かさと、涼やかな魅力がうかがえる。聡明で澄んだ印象ながら、どこか脆さや儚さもにじませ、キャラクターにさらなる奥行きを与えていた。

巨大国家パジャーリに属する最強の兵士・ウォルフを演じる松尾龍は、高い身体能力を存分に発揮し、その人物像を全身で体現している。バレエやアクロバットなど多彩な表現方法を駆使し、冷静で鋭い兵士像を立ち上げた。パジャーリ軍の圧巻のダンスシーンも見逃せない。

大企業ロメロタンクの令嬢・ノアは、作品全体に差し込む明るい光のようなキャラクター。演じる山﨑玲奈の確かな歌唱力と演技力、明るく愛らしい佇まいが、ノアの持つ光を鮮やかに印象づけている。明るさだけでなく、音楽を愛する心の豊かさ、聡明さを宿した輝きで、物語と観客に和らぎをもたらしていた。

渡部豪太演じるノアの執事ロボット・ケンは、作品のテーマの象徴の一つになっている。ケンとノアの関係はAIの善性、人格の有無、人間との違いといった命題を観客に問いかける。渡部はロボットらしい動きや表情、話し方を表現しつつ、眼差しや声音でノアに向ける感情のようなものものぞかせる。ときにコミカルな役割も担い、作品に豊かな温度差を生んでいた。

パジャーリの軍最高司令官・ヒルダを演じる真風涼帆は、凛然とした佇まいで場を圧倒した。ヒルダの堂々たる身のこなしには、確かな威厳が宿り、彼女が登場するだけで劇場の温度が変わるかのよう。一方で、真風はヒルダの威圧感の裏にある人間性や信念も垣間見せる。ヒルダを主軸とした物語も観てみたいと思わせる、魅力的な人物像を提示した。

そして、市川右團次が演じるAI企業・ロメロタンクのCEO、ヴィンガスは実に複雑な人物。強いリーダーシップに加え、狡猾さ、冷徹さ、優れた判断力を備え、さらに娘への愛情も失っていない。作中でもとりわけ人間くさい。市川の円熟味ある芝居は、ヴィンガスの多層的な人物像を際立たせる。イヴルやアランが物語の表側を担う存在とすれば、ヴィンガスは暗部を担う存在ともいえ、作品全体の重心となっていた。

有明で生まれる、五感を刺激する濃密なエンターテインメント体験

その他、打楽器奏者のみで構成される”熱狂的打楽器集団”ラセーニャスによるパーカッションの響きも印象的だった。打楽器の音色が力強く響き、舞台にどこかオリエンタルな空気をもたらし、観客の意識を現実から物語の中へと強く引き込んでくれる。

濃密な演劇体験だ。本作はイヴルとアランの物語であると同時に、群像劇としての広がりも備えている。壮大な叙事詩の断片に触れたような余韻があり、既存の枠には収まりきらない意欲作だと感じた。

一方で、エンターテインメントとしての熱量も申し分ない。物語そのものの面白さに加え、歌、ダンス、殺陣、華やかな舞台効果が次々と押し寄せ、観客を飽きさせない。観る者を全力で楽しませようという、カンパニーの気迫がまっすぐ伝わってくる作品だった。

終演後、一冊の歴史書を読み終えたかのような心地よい疲労感があった。
「おとぎ話」はこの劇場から始まる。

(取材・文/飴屋まこと、撮影/エンタステージ編集部 1号)

EX THEATER ARIAKE OPENING LINEUP『AmberS -アンバース-』公演情報

公演情報
タイトル 『AmberS -アンバース-』
公演期間・会場 2026年4月25日(土)~5月24日(日)
東京・EX THEATER ARIAKE(東京ドリームパーク内)
スタッフ クリエイティブプロデューサー・原作・脚本:加藤シゲアキ
演出:河原雅彦
音楽監督:岩崎太整
キャラクタービジュアルディレクター/衣装デザイナー:柘植伊佐夫
キャスト イヴル:大橋和也
アラン:寺西拓人
オルッカ:猪狩蒼弥
ルイ:嶋崎斗亜
エンリケ:川崎皇輝
ウォルフ:松尾龍
ノア:山崎玲奈
ケン:渡部豪太
ヒルダ:真風涼帆
ヴィンガス:市川右團次
ほか
チケット情報 一般発売:2026年3月7日(土)AM10:00
公式サイト https://tdp.tv-asahi.co.jp/ambers/
公式SNS 公式X:@ambers_stage
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