EPOCH MAN新作『The Closet Revue』通し稽古レポート!阿部顕嵐、山崎一らが魅せる華やかなショーと切実な人間ドラマ

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小沢道成が脚本・演出・美術を手がける演劇プロジェクト「EPOCH MAN」の新作公演『The Closet Revue』が、2026年4月4日(土)から5月4日(月・祝)まで下北沢のザ・スズナリにて上演される 。

2023年上演の『我ら宇宙の塵』で第31回読売演劇大賞の「優秀作品賞」および「優秀演出家賞」を受賞し、大きな話題を呼んだEPOCH MAN。その千穐楽からわずか4か月という短期間で、早くも新たな物語の幕が開く。上演が間近に迫った3月末に行われた、本作の通し稽古の模様を紹介する。

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目次

EPOCH MAN『The Closet Revue』通し稽古レポート

※作品の内容に触れる表記があります

稽古場には本番さながらの舞台セットが組まれていて、その華やかさに心ひかれた。キャバレーのステージを思わせる円形の台と、タイトルにある「クローゼット」を彷彿とさせるたくさんの衣類。スタンドライトや猫足の椅子、レコードが回る様子からはレトロな雰囲気が醸し出されている。どんな物語が始まるのだろうとわくわくしたのも束の間、ダンサブルだが怪しさを伴う三拍子のピアノ曲が鳴り、ステージに登場した出演者が音楽に合わせて身体を動かし声を発すると、一瞬で彼らに目を奪われた。

出演は、ある悩みを抱える会社員の皓斗(ひろと)に阿部顕嵐、皓斗が訪れる店の店主・メルキーゼに山崎一、そしてBOW、花島令、リンノスケ、神野幹暁の4人がクローゼリムと呼ばれる踊り子を演じながら、皓斗やメルキーゼによって語られる様々な人物に扮し、小沢道成が演じる人物は皓斗とメルキーゼにとって非常に大切な役割を果たす。

EPOCH MANのこれまでの作品を振り返ると、『我ら宇宙の塵』での池谷のぶえ演じる宇佐美の語り口が記憶に新しく、言葉の力で見る者の心に訴えかける印象が強かったが、本作は身体表現にも重きを置いているように感じた。歌唱やダンスを効果的に用い、まるでショーを見ているかのような没入感に引き込まれる。

この世に生まれた瞬間に選択の余地なく「身体」が与えられる現実は残酷だ。そして、その身体を携えて生き続けなければならない日々は、ときに苦しくもある。それでも、彼らがステージで声や手足を存分に使って、飛び跳ね、動き回り、歌い踊り演じる姿から、その身体で生きていることに対する力強い肯定を感じた。

ありのままに生きたいという思いと、それを受け入れない社会のあいだに生まれる乖離は本作にとって重要なテーマの一つだ。劇中ではセクシュアル・マイノリティのエピソードがいくつか描かれる。当人にしかわからないしんどさがあることを承知で言うならば、彼らの経験や感情には、私にも通じる部分があると感じた。

どんな人だって人間関係でつまずくことも、恋愛がうまくいかないこともある。一つとして同じ愛し方や愛され方はなくて、誰かと出会う度に相手の言動にも自分の気持ちにもいちいち戸惑うし、人と深く関わることはときにトラウマやコンプレックスを生む。

しかし同時に、これは決して“誰にでもある話”に回収できるものではなく、その背景には、セクシュアル・マイノリティであるがゆえに直面する固有の困難や社会的な壁があることも、本作は丁寧に描いている。

そうした現実を抱えながらもなお、出会いと別れを繰り返してきた皓斗が勇気を出してメルキーゼの店のドアを叩いたように、出会い続けることは人が生きる糧となり得る。切実に自らのことを語り伝えようとする登場人物たちを見ていて、そんなささやかな希望を覚えた。

現在、LGBTQ+の人は特別な存在ではないという認識が広がりつつある、ちょうど過渡期とも考えられる。しかし、今後また別の存在が世間によってカテゴライズされ、マイノリティと呼ばれる時代になるかもしれない。名前を与え、分類することは、理解や連帯につながる一方、新たな線引きや葛藤を生むこともある。

そうした揺らぎの中にある社会で、私たちを救ってくれるのはエンターテインメントなのかもしれない。辛辣なせりふこそコミカルに、悲しいエピソードこそあっけらかんと明るく、そういった昇華が巧みな本作は、エンターテインメントの素晴らしさを再認識させてくれる。

ここでは細かいニュアンスは伏せるが、メルキーゼの「火災の時しか押せない非常ベルって何?」という台詞が印象的だった。日常には実は非常事態が蔓延していて、心の中のことに限れば尚更だ。もう無理とあと少しだけ頑張れるの狭間で戦っている人間のどれほど多いことか。

物語とは、現実のしがらみをひと時忘れて逃げ込める場所である反面、他人事を自由に自分のことに置き換え、自らを見つめ直すこともできる芸術だ。

皓斗がメルキーゼのパフォーマンスに心動かされたように、また、メルキーゼがステージで心の内を吐露し毎日の生活を乗り越えているように、鑑賞する側、創作する側の双方にエンターテインメントは力を与えてくれると本作を通して実感した。

この日は、音楽のオレノグラフィティをはじめ、照明や音響などクリエイティブに関わるスタッフが数多く参加していた。通し稽古が終わると互いに感想を話し、舞台にどのような工夫を施すか想像を巡らせていく。音響や照明の効果が加わることでどう作品が進化するのか、期待が高まる。さらに、舞台上だけでなくザ・スズナリの劇場自体に作品のコンセプトとなる仕掛けを創る計画があるようで、どのような空間が表現されるのか楽しみだ。

チケットは、チケットぴあとローソンチケットで座席を選択して公演前日まで購入可能。当日券の販売も予定している。22歳以下を対象とした割引や、4月11日(土)、4月18日(土)、5月2日(土)の14時公演では、鑑賞サポートとしてバリアフリー字幕タブレットの貸し出しを実施する。約1ヶ月に渡り、全35公演。ザ・スズナリでのロングランというEPOCH MANの新たな挑戦に、より多くの観客が出会えることを願う。

(取材・文/村田紫音、写真/小岩井ハナ)

『The Closet Revue』公演情報

公演情報
タイトル EPOCH MAN『The Closet Revue』
公演期間・会場 2026年4月4日(土)~5月4日(月・祝) 下北沢 ザ・スズナリ
スタッフ 脚本・演出・美術:小沢道成
キャスト 阿部顕嵐、山崎一、BOW、花島令、リンノスケ、神野幹暁、小沢道成
チケット情報 取り扱い:ぴあ、ローソンチケット
公式サイト https://epochman.com/
公式SNS X:@MichinariOzawa
Instagram:@michinariozawa_official
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