フランク・ワイルドホーンの名曲に彩られ、人間の深淵に潜む「光と闇」を描いた傑作ミュージカル『ジキル&ハイド』。2001年の日本初演以来、再演を重ねてきた本作が、2026年3月、キャスト・演出・セットを一新した「新演出版」として上演される。これに先駆け、都内で製作発表記者会見が行われた。
登壇したのは、ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド役の柿澤勇人と佐藤隆紀(Wキャスト)、ルーシー・ハリス役の真彩希帆と和希そら(Wキャスト)、エマ・カルー役のDream Amiと唯月ふうか(Wキャスト)、そして2001年の初演から演出を手掛ける山田和也の計7名。会見では、新キャスト、新演出による新たな“ジキハイ”の誕生を予感させる質疑応答が繰り広げられた。

日本初演から25年、受け継がれる名作が「新演出」で生まれ変わる

ミュージカル『ジキル&ハイド』は、R.L.スティーヴンソンの小説『ジキル博士とハイド氏』を原作に、19世紀のロンドンを舞台としたサスペンス・ミュージカル。医師ヘンリー・ジキルが、精神病の父を救うために人間の「善と悪」を分離する新薬の研究に没頭し、自らの体を使った人体実験によって制御不能な別人格・ハイドを生み出してしまう悲劇を描く。
フランク・ワイルドホーンによる同作の代名詞ともいえる楽曲「時がきた(This Is The Moment)」をはじめとするドラマティックなナンバーは、世界中のミュージカルファンを魅了し続けている。日本では2001年に鹿賀丈史主演で初演され、大ヒットを記録。以降、2003年、2005年、2007年、2012年、2016年、 2018年、2023年と再演を重ねてきた。
舞台美術を「廃棄」して挑む、9度目の新たな挑戦

2001年の初演から25年にわたり演出を手掛ける山田和也は、今回で9度目の上演となることについて「25年もやっていることに自分でも驚いています。精神的にはまだ初演から4〜5年しか経っていない感覚で(笑)。実際はそうではないということを今回の現場で思い知らされるのだろうなと楽しみにしています」とユーモアを交えて挨拶。
今回の上演は「新演出版」と銘打たれている。これについて山田は、物理的にも精神的にも大きな刷新を行うことを明かした。「舞台美術にも耐久年数があり、前回までのセットはその役割を終えました。せっかく予算をかけて新たに作るならば、一度リセットして新しい見せ方を作った方が、この作品の持つエネルギーが爆発しやすいのではないかと考えたのです」と、破壊と再生を経て挑む新たなビジョンを語った。
ジキル&ハイド役、柿澤勇人は「ノイズ」を、佐藤隆紀は「狂気」をどう演じるか

2023年公演に続き2度目の主演となる柿澤勇人は、前回の壮絶な経験を振り返った。 「前回は、体力、精神、そして喉、すべてがボロボロの状態で、千穐楽までなんとか生還しました。ハイドを演じる際、普段の歌唱や芝居の発声とは違う、あえて“ノイズ”を乗せた声を出すことにこだわっていたのですが、それは当然、喉への負担が大きく消耗してしまいます。今回は少しは余裕を持って終わりたいと思っていますが・・・おそらく無理でしょうね(笑)。それくらい、楽をしては演じられない役だと思っています。成長した姿を見せなければやる意味がないので、心して挑みます」と、覚悟と決意を語った。
山田は、柿澤の続投について「前回は石丸幹二さんというずっと演じてこられた方と一緒だったので、寄り添う部分があったかもしれません。今回はリセットなので、やりたい放題やってください」と、柿澤の暴走(!?)に期待を寄せた。

今回初参加となる佐藤隆紀(LE VELVETS)は、「『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンを演じた後、次に挑戦したい役として浮かんだのがこの役でした。それ以来、いろいろなイベントやコンサートで劇中歌の『時がきた』を歌ってアピールし続けてきまして(笑)。今日はまさに、僕にとっての『時がきた』という思いです」と、長年の夢が叶った喜びを爆発させた。
山田とはミュージカルでタッグを組むのは初。山田は「以前、帝劇クロージング関連のイベントでご一緒した時に、素晴らしいトーク力をお持ちだなと思いました(笑)。今回のジキルも、そんな佐藤さんの隠しきれない“ユーモア”が滲み出ることで、逆に狂気が際立つのではないかと期待しています」と分析。佐藤自身も「普段は穏やかだと思われている僕ですが、どれだけテンション高く、狂気的に演じられるか。自分自身のダークサイドと向き合いたいです」と意気込んだ。
真彩希帆・和希そら・Dream Ami・唯月ふうかが語る「変化と挑戦」

ジキル博士の優しさに触れて人間らしい生活を夢見ながらも、ハイドの狂気に巻き込まれていく悲劇の娼婦ルーシー役は、真彩希帆と和希そらのWキャスト。
前回公演より続投となる真彩は、スケジュールの都合でフォトセッションのみの参加となったが、「私自身、出産を経て考え方や感じ方が変わりました。『ジキル&ハイド』という世界の中で、母となった今の自分がどう感じるのかを楽しみにしています」というメッセージを残した。

新キャストの和希そらは、「私は、この作品のような重厚感のあるクラシカルな世界観が大好きでして。こうして『ジキル&ハイド』の一員になれること、本当に嬉しく光栄に思っております。精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いいたします」と目を輝かせる。
そんな彼女に対し、山田は「宝塚をご卒業されてからの活躍ぶりが目覚ましい。多くのクリエイターが『一緒に仕事をしたい』と思う理由が分かります」と絶賛。そして、真彩と和希の宝塚の期についてしっかりと確認をしていた(和希が先輩にあたるとのこと)。

ジキル博士の婚約者であり、周囲の反対を押し切って彼を信じ、無償の愛を注ぐ気丈な女性エマ役もWキャストとなり、前回より続投のDream Amiに加え、唯月ふうかが加わる。
前回がミュージカル初出演だったDream Am1iは「すべてが初めての経験で、緊張が解けたのは地方公演の最後の方でした」と振り返ると、柿澤が「そういえば、山形公演で一緒にプリクラを撮ったのを思い出した!あの時は緊張が解けていたんだね(笑)?今回もみんなで撮れたらいいですね」とその変化が分かるエピソードを挟む。

これに対し、Dream Amiは「今回はもう少し早いタイミングで緊張を解いて、皆さんと和気あいあいと頑張っていきたいです。またプリクラが撮れるように頑張ります」とはにかんだ。
山田から「ご本人がおっしゃるとおり、前回は少しスロースターターな印象でしたが、幕が開くとしっかり仕上がっていました。今回は2度目なので、どの地点からスタートを切ってくれるのか楽しみ」と声をかけられると、「今回は最初からトップスピードでいけるようにしたいです」と意気込んだ。

初参加の唯月ふうかは、「歴代の先輩方が演じてきたエマの背中を追いかけつつ、私もプリクラのメンバーに入れるように頑張りたいです(笑)。皆さんにしっかりついていきたいと思います」とコメント。山田は「唯月さんは20代ですが芸歴が長く、経験豊富なので全く心配していません。むしろ30代のベテランのような安心感がある」と太鼓判を押した。
見どころは?キャストが語る「好きなシーン」と意外な二面性

質疑応答では、作品への熱い思いやキャスト陣の意外な一面が次々と飛び出した。まず「自身が好きなシーン、または楽曲は?」と問われると、柿澤は「自分が演じているシーンは辛いことばかりなので・・・(笑)」と前置きしつつ、ルーシーの登場シーン「Bring on the Men」を選択。「あのシーン、ジキルとしては座って見ているだけなのですが、パフォーマンスが華やかで美しい」と率直な理由で会場を和ませる。
一方、佐藤は名曲「対決(Confrontation)」を挙げ、「二面性を瞬時に切り替えて歌う姿は、これまで演じてこられた先輩方を見ていても『すごいな』と思っていました。自分がどう演じるのか、不安でもあり楽しみでもあります」と難曲への挑戦心を覗かせた。
女性陣もそれぞれの思い入れを語る。和希はなんと「殺人のシーン」をピックアップ。「一観客として見ている時、『次はどんなやられ方をするんだろう?』というワクワク感がありました」と独自の視点を披露。
Amiは婚約パーティーでのデュエット「ありのままの(Take Me as I Am)」を挙げ、「この作品はずっと不穏な空気が流れていますが、ここだけは唯一幸せな時間。ジキルが弱音を吐き、エマがそれを包み込む温かさが好きです」と語り、唯月はエマとルーシーのデュエット「その目に(In His Eyes)」について、「声の重なりが本当に綺麗で、客席で聴いていても感動しました」と楽曲の美しさを強調した。
山田は、作品が長く愛され続ける理由について、初演時に初代ジキル役を演じた鹿賀丈史の言葉を引用した。
「鹿賀さんが『この音楽はとても官能的だ』とおっしゃっていたんです。まさにそのとおりで、どの瞬間の音楽にも圧倒的な力があり、作り手も観客もどこかへ連れて行ってしまう。そして物語には、崇高な目的で始まった実験が悲劇的な結末を迎える残酷さと、そこに織り込まれる愛や信頼といった美しいもの、さらには社会の腐敗といった要素がすべて詰まっている。観る人それぞれに必ずどこかが引っかかる、奥深い作品なのだと思います」
続いて、作品テーマである“人間の善と悪、二面性”にちなみ、「自身の二面性を感じる瞬間は?」という質問が飛ぶと、各々のギャップが露わに。
唯月は「格闘技を見るのが好きで、試合中は普段の自分からは想像できないような野太い声で『行けー!』と叫んでしまう」と意外な趣味を告白。Amiも「大阪出身なので、怒るとコテコテの関西弁でまくし立ててしまいます。自分でも『あ、怖いな』と思う瞬間がありますね」と笑いを誘う。
和希は「仕事の時は荷物も心もスッキリさせていますが、家ではダラダラしています」と親近感のある一面を見せ、佐藤は「昔、剣道をやっていて、試合開始の瞬間に『目で殺す』くらいの気持ちで相手を見ていました。今の穏やかな“シュガー”とは違う一面です」と、勝負師としての過去を明かした。
現在、ドラマの撮影や音楽ユニット「カキンツハルカ」のライブツアーで大忙しの柿澤は、まさに今の状態が“ハイド”的であると発言。「僕はお酒とサウナが趣味なのですが、今はスケジュールの関係でどちらも制限されていて・・・。人間、趣味を二つ封じられてしまうと不機嫌になりやすくなってしまいます(笑)。今、10分サウナに入っていいと言われたら、即座に機嫌が良くなる」と、ユーモアを交えつつ、苦労を明かした。
柿澤と佐藤による圧巻の歌唱披露「時がきた」

会見の最後には、柿澤と佐藤による劇中歌「時がきた(This Is The Moment)」の歌唱披露が行われた。「時がきた」は、ジキルが人体実験への決意を固めるシーンで歌われる楽曲で、ミュージカル史に残る名曲。
柿澤は魂の乗った力強い歌声で会場の空気を一変させ、佐藤は「ずっと歌いたかった」と語ったとおり、一音一音に熱量を込める。本番は二人が並び立つことはないが、タイプの違うWキャストはまさにこの作品が持つ多面的な魅力を象徴しており、2026年版『ジキル&ハイド』への期待を一気に高めてくれた。
最後に、佐藤は「まだ稽古前ですが、あえて大口を叩かせていただきます。観てくださった方の『心の歴史の1ページ』に残るようなステージをお届けしたいと思います」と熱く誓い、柿澤は「鹿賀丈史さん、石丸幹二さんら諸先輩方が紡いできた名作を、この新カンパニーなら、新しく生まれ変わらせることができると信じています。乞うご期待!」と自信を覗かせ、会見を締めくくった。

ミュージカル『ジキル&ハイド』は、2026年3月15日(日)から3月29日(日)まで東京国際フォーラム ホールCにて上演後、大阪・福岡・愛知・山形を巡演する。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
ミュージカル『ジキル&ハイド』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | ミュージカル『ジキル&ハイド』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】 2026年3月15日(日)~3月29日(日) 東京国際フォーラム ホールC【大阪公演】 2026年4月3日(金)~4月6日(月) 梅田芸術劇場メインホール 【福岡公演】 【愛知公演】 【山形公演】 |
| スタッフ | 原作:R.L.スティーヴンソン 音楽:フランク・ワイルドホーン 脚本・詞:レスリー・ブリカッス 演出:山田和也 上演台本・詞:髙平哲郎 |
| キャスト | ヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人 佐藤隆紀(LE VELVETS)(Wキャスト) ルーシー・ハリス:真彩希帆 和希そら(Wキャスト) エマ・カルー:Dream Ami 唯月ふうか(Wキャスト) ジョン・アターソン:竪山隼太 サイモン・ストライド:章平 執事 プール:佐藤 誓 ダンヴァース・カルー卿:栗原英雄 川口竜也 |
| チケット情報 | <東京公演> 【全日料金】 プレミアムシート:20,000円 【平日料金】 (全席指定・税込) |
| 公式サイト | https://www.tohostage.com/j-h/ https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2026/ |
| 公式SNS | https://x.com/Jekyll_2026 |


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