本日2025年2月28日をもって、“日本ミュージカルの聖地”として親しまれてきた現・帝国劇場が、建て替えのために一時休館に入った。現帝劇ラストを飾ったのは、帝劇の歴史をもりもりに詰め込んだ豪華なコンサート公演、CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』。その千秋楽日のカーテンコールを取材した。
多数の豪華キャストが駆けつけた帝劇コン
CONCERT『THE BEST New HISTORY COMING』は、山田和也の構成・演出、塩田明弘の音楽監督・指揮で、現・帝国劇場で上演されたミュージカル53作品とを中心に豪華キャストと共にその歩を振り返ったコンサート公演。
一部公演はau Live StreamingおよびTELASAでライブ配信(アーカイブ・見逃し配信の実施は予定はなし)され、2月28日の千秋楽は全国の映画館でライブビューイングも実施された。
堂本光一、北大路欣也らサプライズゲストもステージへ!
最後の楽曲が終え、一度コンサートが締めくくられたあと、再び緞帳が上がり、出演者らがステージに登場。全公演を通じて出演したレギュラーキャストの井上芳雄、浦井健治、小野田龍之介、甲斐翔真、佐藤隆紀(LE VELVETS)、島田歌穂、三浦宏規、宮野真守に加え、D・E・F・Gプログラムキャストの一路真輝、木下晴香、瀬奈じゅん、花總まり、屋比久知奈、Gプログラムゲストの市村正親、今井清隆、鳳蘭、笹本玲奈、田代万里生がずらりと並ぶ。
さらにサプライズで、現帝国劇場の最後のステージを客席や袖から見守っていた俳優たちが呼び込まれた。代表して、佐藤と浦井が経歴と共に読み上げたゲストは総勢48名にのぼった。
【登壇したゲスト】
相葉裕樹、彩吹真央、石丸幹二、泉見洋平、市毛良枝、伊東弘美、入絵加奈子、上口耕平、上野哲也、梅田彩佳、凰稀かなめ、岡幸二郎、岡宮来夢、鹿賀丈史、加藤清史郎、加藤和樹、上白石萌音、上山竜治、神田恭兵、岸田智史、北大路欣也、香寿たつき、佐久間良子、沢口靖子、白木美貴子、城田優、鈴木壮麻、鈴木ほのか、竹内幸子、堂本光一、中川晃教、西田ひかる、橋本じゅん、林与一、東山義久、平野綾、福井晶一、藤真利子、別所哲也、前田美波里、真琴つばさ、南野陽子、宮川浩、未来優希、村田美佐子、唯月ふうか、横澤祐一、吉野圭吾(50音順)
井上芳雄「また新しい帝国劇場でお会いしましょう!!」
舞台セットの階段にずらりと並ぶ、そうそうたる顔ぶれ。井上が、代表して北大路欣也にコメントを求めると、北大路は思わず「え!」と驚きの声を上げた。井上に「コメントをもらうって聞いていなかったですか?!」とツッコまれつつ、自身と帝国劇場の想い出を語った。
北大路は、三島由紀夫・作の『癩王のテラス』やミュージカル『スカーレット』で主演を務めた。「(今日のコンサートを)聞いていたんだけど、まあ素晴らしかったです。いろんなことが思い出されました」と一言。北王路がミュージカルに出演したのは26歳の頃だったという。「私も恥をかきながら歌いましたね。がんばりましたよ(笑)」と当時を振り返った。
そして、『唐人お吉』『滝の白糸』『長崎ぶらぶら節』あど、数多くの座長芝居で20年以上に渡り主演を務めた伝説の女優、佐久間良子も「私は映画から出てきたんですけれども、菊田一夫先生からお声をかけていただいて、シアタークリエの前身である芸術座で、三島由紀さんが書いた『春の雪』に出演させていただきました。それから20年近く、こちらにお世話になってきたので・・・今は胸がいっぱいです」と感慨深げにコメントした。
そして、井上が全員に「今から皆さんに『民衆の歌』を歌っていただきます!大丈夫ですか?」と呼びかけると、全員が力強く頷く。井上は続けて「両サイドに歌詞も出るそうです!客席の皆様、配信のをご覧の皆様、ライブビューイング会場の方も勇気を出して歌ってほしい!皆さんで一緒に歌いましょう!!これが本当に、最後の最後の歌になります!!」と客席に呼びかけ、劇場一体となって『民衆の歌』を歌い上げた。
鳴りやまない拍手の中、井上が“帝劇の住人”堂本光一にマイクを向けると、堂本は「「絶対俺じゃない、絶対俺じゃない!」と拒否しつつ、「ここにいられるだけで光栄です。本当にありがとうございました!」と一言。
困ったような堂本を見て、井上はいたずらっ子のような笑みを浮かべながら「本当にありがとうございました!また新しい帝国劇場でお会いしましょう!!」と、最後の幕を下ろした。
3代目・帝国劇場は2030年度オープンを目指す
3代目となる新・帝国劇場の設計を手掛けるのは、建築家の小堀哲夫氏、「THE VEIL」をテーマに、日比谷の街に溶け込みながら、皇居に面した劇場が水や光、豊かな緑などの自然に包み込まれる劇場作りを目指す。
メインエントランスは現在と同じ向きとなるが、劇場内のステージと客席の位置が90°回転し、エントランスから客席への動線を一直線に確保。見やすさとゆとりを兼ね備えた座席だけでなく、トイレの個数増、楽屋などの裏動線など、全体的にアクセシビリティの向上を目指すとのこと。オープンは2030年度を目指す。
別れを惜しみつつ、ステージ上からも客席からも、感謝と愛が飛び交った現・帝国劇場最後の日。劇場を出ると、チケットを持たないファンが今の姿を目に焼きつけようと、「帝国劇場」の看板を見上げていた。新たに熱い命が吹き込まれ「帝国劇場」にまた会える日まで、しばしのさよならだ。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)