2025年3月10日（月）に東京・日比谷シアタークリエにてミュージカル『ボニー＆クライド』が開幕。初日前日にフォトコールと囲み取材が行われ、柿澤勇人、矢崎広、桜井玲香、海乃美月、瀬戸山美咲（上演台本･演出）が登壇し、初日を迎える心境やそれぞれの印象などを語った。
伝説のギャングカップルの物語をミュージカルで描く！
1930年代、世界恐慌下のアメリカ中西部で銀行強盗や殺人を繰り返した実在の人物、クライド・バロウとボニー・パーカー。今も語り継がれる名作『Bonnie and Clyde』／邦題「俺たちに明日はない」で描かれたこの伝説のギャングカップルを題材に、『ジキル＆ハイド』『笑う男The Eternal Love -永遠の愛-』『デスノートTHE MUSICAL』など､名だたるミュージカルを手掛けた作曲家､フランク・ワイルドホーンが、ジャジーなサウンドとポップなリズムで新たに創造したミュージカルが本作。
2011年12月にブロードウェイで上演。2012年には日本で初演後、ブラッシュアップされた本作は2022年ロンドン･ウェストエンドで再演し、2023年には宝塚歌劇団雪組で上演された。そして2025年3･4月､シアタークリエにて､瀬戸山による新演出版が上演される。
クライド役（Wキャスト）に柿澤と矢崎､ボニー役（Wキャスト）は桜井と海乃が演じ､鬱屈した時代に刹那を生きる“アンチ・ヒーロー”カップルを演じる。
そのほかにバック役を小西遼生、ブランチ役を有沙瞳、テッド（Wキャスト）役を吉田広大／太田将熙、エマ／ファーガソン州知事役を霧矢大夢、シュミット保安官役を鶴見辰吾、チャーリー／コック役を焙煎功一、カミー／クライドの母役を安田カナ、ヘンリー／クライドの父役を広田勇二が演じる。
ミュージカル『ボニー＆クライド』は、2025年3月10日（月）から4月17日（木）まで東京・シアタークリエにて、4月25日（金）から4月30日（水）まで大阪・森ノ宮ピロティホール、5月4日（日）から5月5日（月･祝）まで福岡・博多座、5月10日（土）から5月11日（日）まで愛知・東海市芸術劇場大ホールにて上演される。
フォトコールレポート：Wキャストの組み合わせで世界が変わる瞬間を垣間見せるフォトコール
フォトコールでは2シーンが公開された。最初に公開されたのは、クライド役に柿澤とボニー役に桜井、テッド役を吉田、そして焙煎が登場する1幕第二場「アメリカン・カフェ」から第三場「舗装されていない道」。
ボニーが働くカフェのシーンに続いて、ボニーが自分の車が立往生して困っている中、クライドに出会う。クライドは「俺にはプランがある。ここから抜け出して有名になる」と語り、ソングナンバー「残すのさ 名前を」を披露。
ワイルドホーンが熱望したクライド役へ臨む柿澤と、これまでとは違う新たなヒロイン像に挑む桜井によるボニーとクライドの運命的な出会いのシーン。若さゆえの向こう見ずな荒々しさと危険な男の香りを漂わせる柿澤と、まだ犯罪に手を染めていないボニーのあどけなさとチャーミングさを振りまく桜井のコンビが印象的となっていた。
次に公開されたのは、クライド役に矢崎とボニー役に海乃、カミー／クライドの母役に安田、ヘンリー／クライドの父役に広田が登場する2幕第四場「バロウ・ガソリンスタンド／隠れ家」。
食料品店を襲った際に警官を射殺してしまったクライドは両親を訪ねるが、追っ手から逃れてボニーと隠れ家へ行く。クライドとボニーは「自分の父親／母親のような人生は我慢できない、満足できる人生を2人でつかみとろう」と、ソングナンバー「満足できる人生」を歌うシーン。
満を持してシアタークリエ初主演となる矢崎、宝塚歌劇団トップ娘役を退団後の初出演作となる海乃によるボニーとクライドは、犯罪を犯し、刹那に生きるギャング・カップルでありながら、落ち着いた大人な雰囲気とクールさも醸し出している組み合わせとなっており、柿澤×桜井のボニーとクライドとは全く違う魅力を見せつけていた。
囲み取材レポート：桜井の天然ぶりに登壇者たちも笑顔の連続で、カンパニーの親密さを感じさせる
囲み取材では、まず本作のイチ押しシーンを尋ねられると、柿澤は、クライドがバスタブの中でウクレレを持って歌うシーンを挙げ、「強盗をして、人も殺めて、逃げている最中の隠れ家みたいなところで歌うんです。（隠れているので）音をあんまり立てちゃいけないんですけど、ボニーに対するラブソングを熱唱するわけですね。そういうところも本当に馬鹿だなと思うんですけど（笑）。でも、これはボニーとクライドの関係性、それから型にはまらない2人を象徴してるシーンだなと思います」と説明した。
クライドとボニーがしょっちゅう喧嘩するシーンと答えた矢崎は、「Wキャストの時に、組み合わせが違うと本当に違うんですみたいなことを言いますけど、今回は本当に全然違うんです！ 組み合わせによって違いがたくさん起きているので、いろんな喧嘩のシーンが見どころです」と熱弁していた。
桜井は「ストーリーの後半にクライドと、バック、テッドの3人がそれぞれの思いを歌うナンバーがあるんですけど、それが本当にかっこよくて、『ボニクラだ！』とアガるんです」と挙げた。その言葉に、柿澤が「ボニーはそこにいないから、“ボニクラ”じゃないじゃん」とツッコむと、桜井も「そうだね、“クライド”だね（笑）」と思わず同調し、柿澤は大爆笑。
1幕と2幕の両方のラストシーンをイチ押しシーンと挙げた海乃は、「1幕は、ボニーとクライドが出会って、犯罪に手を染めたクライドが協力して一緒に進んでいく爽快感とスリリングがあって、1幕の終わりにはすごく“ザ・ボニクラ”という感じがします。2幕は、ボロボロになって、自分たちもこの先どうしていくかも分からないけど、とにかく進んでいかなきゃいけないという2人の世界をすごく繊細に、2幕の終わりでお見せできると思います」と理由を説明した。
初日を迎えた心境として、瀬戸山は「Wキャストそれぞれの組み合わせで全く違う化学反応が起きています。キャストの皆さんに盛り上げてもらいつつ、私は最後のバトンを渡して、今の日本に旋風が起こせるような作品になればと思っています」と明かした。
そして、Wキャストの組み合わせへの演出について、瀬戸山は「組み合わせによって関係性がすごく変わるので、このボニーとクライドは、ちょっとクライドが強いんじゃないかとか、ボニーの方が強いんじゃないかとか、もしくは、ちょっとお母さんと息子みたいになってやしないかとか、そういう2人の関係性に対してのことをたくさん言ってきました」と振り返り、「各組み合わせで稽古した後に、その組み合わせを最も良く見せる方法はなんだろうということを話し合いました」と語った。
瀬戸山からの稽古中における演出の思い出を質問されると、矢崎は2人のボニーとの関係性を改めて考えさせられたことを挙げ、柿澤は、瀬戸山が舞台セットの模型を使って演出を説明していた時の笑顔が、本当に演劇が好きなんだと感じたとコメント。
2人のクライドによって全然違うボニーを作ろうと当初は考えていたという海乃は、瀬戸山の「クライドとボニーの体温を一緒にしたい」という言葉で、「違いをしっかりつけなきゃっていうよりかは、お二人の体温に寄り添えていたら何か生まれてくるものがあるんじゃないかと感じて、役作りも定まった」と思い返していた。
一方、桜井はボニーとクライドが言い争うシーンが多く、舞台中でキレてばっかりだったと前置きし、「キレ癖みたいなのが出始めてきてるような気がして、演出を付けていただくんですけど、『いや、できない！、無理だよ！』みたいなことも言っちゃうぐらいになってました（笑）。めちゃくちゃ美咲さんには甘えさせていただき、のびのびとやらせていただいていました」と感謝を述べると、瀬戸山もニッコリ。
そんな桜井に、柿澤は「最後は『もう分かんない！』って言ってたよね（笑）」と、その時の桜井の様子を倒れこみながら再現すると、会場は笑いに包まれた。
それぞれの相手役に対する印象の話題では、柿澤のクライドに対して、桜井が「もうクライドだ！、クライドだ！、クライドだ！みたいな印象。いい意味でです」との独特な言い回しに、柿澤が「絶対にいい意味で伝わってないじゃん！」と笑顔でツッコミ。改めて、桜井は「勢いがすごくて、テンポ感も必死についていかないと置いていかれそうで、なんか好きになってくれなさそうで、好きにさせなきゃいけない感じ」と答えるが、再び柿澤が「僕は大好きなんだけど」とつぶやき、桜井は思わず照れ笑いを浮かべていた。
さらに矢崎のクライドに対して、桜井からの「包容力がすごくて、お父さんみたいな……」という予期せぬコメントに、思わず矢崎が崩れ落ちる一幕も。そんな桜井の言い回しに、瀬戸山は「矢崎さんと玲香ちゃんの組み合わせだと、ボニーはクライドに見守ってもらっている感じはします」とフォロー。桜井の天然ぶりな回答に、登壇者たちも爆笑の連続だった。
海乃は、柿澤のクライドに対して「とにかくワイルドで、生きてる熱量がすごい。ボニーとクライドが一目惚れするんですけれども、本当に一目惚れできちゃうオーラと熱量を持ってらっしゃる」と絶賛すると、柿澤は「ありがとうございます」と海乃に感謝しながら、「玲香ちゃん、こういう風に言ってください」と桜井にダメ出し。桜井も「これが言いたかったんです！」とはにかんでいた。
また、矢崎のクライドに対して、海乃は「繊細さがあって、ボニーの一瞬を絶対に見逃さない。自然と温かい気持ちが生まれてくるようなクライド。それと、ボニーだったら笑わないだろうと思うシーンでも、思わず笑いそうになってしまうくらいユーモアのセンスもあって、心の振れ幅が広いクライドです」と語った。
桜井のボニーについて、柿澤は「恋人の役で何回か共演していて、その時は王道なヒロインだったのですが、今回のカップルは完全にアウトローで、ちょっと特殊。だから、初めて見る玲香の顔がたくさん見れましたし、おそらく明日からもどんどん変わっていくと思います。自分が踏み入れてない領域に行こうとしていて、悩んで苦しんでる稽古場での姿は美しくかっこよかったです」と褒め讃えた。
続けて、海乃のボニーに対しては、海乃が宝塚歌劇団卒業後の初舞台ということも踏まえて、「芝居のやり方とか見せ方とかもおそらく全然違うわけで、稽古場に男性キャストがいるのも初めてなわけですよね。最初は戸惑っていたのは分かっていますし、でも、元々持っているエネルギーや精神性がすごく強いから、もう何があっても食らいついていくというか。だから、ファンの方も初めての方もこんなこともできるのかとびっくりすると思います」とアピール。
2人のボニーに対しての印象を、矢崎は「稽古前は、玲香ちゃんがダークサイド、海（海乃）ちゃんはライトサイドが似合うと思っていたんですけど、稽古に入ったら印象が逆転しました」と打ち明け、桜井のボニーについては「女の子らしくて繊細で、キュートなハートの持ち主で、コミカルな部分もたくさん持っています」とコメント。
また、海乃のボニーに対して、矢崎は「宝塚の印象があったので、すごく華やかなイメージでしたが、ある日に突然、海ちゃんが役作りも兼ねて髪をロングヘアからバッサリと切って、イメチェンしてからスイッチが入った気がします。もともと真面目で、ストイックな方だと思うんですけど、そのストイックが突き抜けるとダークサイドにグンっていくんですよね。その止められない怖さみたいなところがどんどん出てきて、『この女優、怖い……』ってちょっと思っちゃうぐらいの感じでした（笑）」と語った。
（取材・文・櫻井宏充）
