2025年4月から上演されるミュージカル『ウェイトレス』の製作発表会見が2024年12月15日(日)に都内で行われ、高畑充希、森崎ウィン、ソニン、LiLiCoが登壇した。
コロナ禍で初演され、高い評価を得たミュージカル『ウェイトレス』
本作は、アメリカ映画『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』(2007年)をベースに製作されたブロードウェイミュージカル。楽曲はグラミー賞ノミネート歴を持つサラ・バレリス。さらに、脚本、作曲、演出、振付の主要クリエイティヴを全て女性クリエイターが担当したことがブロードウェイ史上初の出来事として話題となった。
2016年3月から始まったブロードウェイ公演では瞬く間に記録的興行成績を上げ、全米ツアー公演、及び、ロンドン・ウェストエンド公演も大盛況となった。日本では、2021年に初演されている。
物語の主人公は、アメリカ南部の田舎町で「とびきりのパイ」を売ると評判のダイナーのウェイトレス・ジェナ。夫からのモラハラにもめげない“前向き”なジェナが、“オタク”と“姉御肌”のウェイトレス仲間の助けや、ジェナに手を差し伸べる医師との出会いを経ながら、望まない妊娠という問題に立ち向かう。
妊娠・出産・離婚・自立・養育など、女性にとって人生の大きな岐路を、ジェナと人間味豊かなキャラクターたちがミュージカル・コメディとして描く。
主人公宇ジェナを演じる高畑は、ブロードウェイやウェストエンドに赴き同作を観劇し、出演を熱望したという。そんな彼女の熱意が実り、2021年の日本初演が実現。コロナ禍の影響のある中での上演だったが、高畑はジェナの演技により、第46回菊田一夫演劇賞を受賞するなど、大成功を収めた。
4年ぶりの再演となる今回では、ジェナが予想しなかった妊娠により訪れた産婦人科で出会うポマター医師役に森崎ウィン、ジェナを温かい目で見守るウェイトレス仲間のドーン役にソニンが新キャストで出演し、ウェイトレス仲間で、姉御肌としてジェナに時に厳しくアドバイスを与えるベッキー役はLiLiCoが続投する。
さらに、ジェナを束縛するダメ夫のアール役は新キャストの水田航生、ドーンに想いを寄せる粘着質なオギー役はおばたのお兄さんが、新キャストの西村ヒロチョとWキャストで演じる。そして、3人のウェイトレスに囲まれて働く、店長兼シェフのカル役には田中要次、ダイナーのオーナーとしてとても厳しい一方誰よりもジェナのパイを評価し自立の後押しをするジョー役には山西惇を新キャストとして迎える。
結婚発表の高畑充希が祝福を受けながら作品の魅力を語る【会見レポート】
色とりどりのパイが飾られたバーカウンターのある会場で、「ジェナ!」と呼ばれると登壇者たちがカウンターから顔を出して登場し、製作発表会見がスタート。そして、高畑が「コロナ禍の中で、みんなで一生懸命に作り上げた日本版『ウエイトレス』が、前回すごく喜んでいただけて、またこうやって再演として声が出せる状況で楽しくお届けできることがすごく楽しみです。新しいメンバーも参加してくれたので、みんなでワクワクでまた作っていけたらいいなと思います」と挨拶。
11月に岡田将生との結婚を発表した高畑は、会場から大きな拍手で祝福されると、感謝を述べながら結婚について「なんか自分事じゃない感じがずっとしていて、ちょっとふわふわしています」と打ち明けながら、「この間『FNS歌謡祭』に出たら、このジェナの役の指輪が本人の指輪だというニュースになって、全部そういうことになるのかと思って、テレビってすごいなと思ったりもあったんですけど(笑)」と裏話を披露して笑いを誘った。
さらに、「また新たな気持ちで同じ役を自分が結婚して臨むとなると、また違う感覚も得られるのかなと思うんですけど。新婚最初の仕事がお医者さんとダブル不倫するという『ウェイトレス』なのはなかなか面白い流れだなと思いました(笑)」と茶目っ気たっぷりにコメントした。
日本版『ウェイトレス』初演を観に行ったという森崎は「コロナ禍とはいえ、すごく感動して、男性である僕が見ても、本当に持ち帰るものがたくさんある作品です。宮野真守さんが演じたポマター医師を引き継げるという喜びは本当に計り知れないなと思いでいっぱいです」と喜びを露わにし、「しかも、充希ちゃんがご結婚されたということで、そのダブル不倫の相手を演じるということで、ちょっと面白くなりそうだなと思いながらも(笑)。作品の一部となれることを本当に楽しみにしております」期待に胸を膨らませた。
ブロードウェイ版『ウェイトレス』を観て大ファンになったというソニンは、「今回、お話を頂いた時は、あの世界に入れるんだという喜びでいっぱいでした。ドーンはちょっと冴えないオタクな役で、なかなか最近演じることがなかったタイプの役なので、久しぶりにちょっとアウトゴーイングじゃない役を楽しみに、そしてみんなとこの『ウェイトレス』の世界を作り上げることを楽しみにしています」と期待を寄せた。
初演で50歳の時にミュージカルデビューをしたLiLiCoは、前回、膝の皿を割るという大けがを負い、膝に釘やワイヤーを入れながらの出演だったという。そのことを思い返しながら「今回、それを抜きまして、1キロぐらい軽くなっていると思います」と笑顔を見せ、「今回、やっぱりベッキーらしく堂々と、そしてみんなをまとめていけたらいいなと思っています。新キャスト等もどういう空気が作れるか、とても楽しみにしています」とワクワクが止まらない様子。
本作の魅力について問われると、高畑は「やっぱり最初は圧倒的に楽曲の魅力がすごかったです。全編ポップスで作られていて、本当にとてもキャッチーで耳に残る。1回観ただけでちょっと口ずさみながら劇場を後にできるような楽曲ばかりで、明るいナンバーも多いんです」と挙げ、続けて「だけど、ストーリー自体は女性が生きていくにあたって、いろんな悩みだったり、いろんなことに巻き込まれながら、その中で自分を発見していくというストーリーで、いろんなものを混ぜ込んだパイを作る天才のジェナ自身も人生のいろんな辛いことや悲しいことや悩みも全部混ぜ込んで、なんとか美しいパイにしていくっていうキャラクターだったので、すごく特別な人じゃない人たちが作り上げる特別な物語だなと思いました。それがすごくグサッと刺さりましたし、何度も見たくなる作品になりました」と語った。
そんな魅力的な楽曲について、お気に入りの楽曲の話しとなると、LiLicoは「偶然よ」、森崎とソニンは「Bad Idea」と挙げていた。
トークテーマが変わり、この1年をパイにちなんで例えるとどんなパイかと尋ねられた登壇者たち。スウェーデン出身のLiLicoは「今年、スウェーデンでもタレントデビューをして、里帰りが休みじゃなくて仕事になってしまったんです。それで結局、ずっと働いていて、今年は本当にずっと走り回っていたので、スウェーデンのブルーベリーとリンゴンベリーと、日本の小豆とか豆類をいっぱい入れたパイですね。それを切らずに一気食いという感じです(笑)。そのぐらい詰まっていた1年でした」と回答。
高畑は「私は逆にスカスカのパイでした(笑)。芸能生活で1番お休みを取った年だったからです」と答えつつ、「でも、家族との時間とか猫を飼ったり、仕事だとずっとアドレナリン全開で大好きで夢中でやっているんですけど、普段感じられない、ささやかなことをすごく感じられた年でした」と振り返った。
ソニンは「今年は新しい仕事を結構やったので、クワトロピザのようなバイですかね」と挙げて、その理由を「今年初めて声優業やミュージカルの訳詞担当をしましたし、ヘルスコーチの資格を取ったのでカウンセラーみたいなことを始めたり、今やっているフィールドじゃないジャンルの仕事を今年は始めることが多かったので、本当にいろいろとまとめたパイみたいだったかなと思います」と説明した。
森崎の「ミートパイな1年だったかな。というのも、いろんな方にお会いできた1年。つまりミート”meet(会う)”です」とのコメントに、登壇者たちも感心して「記事の見出しだ!」と声を上げると、森崎は「いやいや、絶対に見出しにはならないから」とはにかんだ。
高畑は、改めて作品の魅力について「ポスターのビジュアルイメージはすごくポップで明るいガールズミュージカルみたいに見えるかと思うんですが、実際内容はそれこそ家庭内暴力とか、望まない妊娠であったりとか、女性がどう生きていくかという話だったり、介護の問題だったり、そういう、社会問題がすごく盛り込まれています。それをパイみたいに、目を背けたいような出来事、でもみんなのいつも隣にあるような出来事を混ぜ込んで甘く焼き上げたような作品です」と解説。
そして会見の最後に、高畑は「初演では、テーマパークに行ったみたいで楽しかったっと言ってくれる方もいれば、自分の人生を見直して考えたと言ってくれる方もいらっしゃいました。本当に老若男女が楽しめる作品です。ただ、小さいお子さんには難しいかもしれませんが(笑)、ある程度年齢を重ねた人たちにはグサグサ響くような作品になっています」と語り、「初演から再演も参加するのは初めての経験なので、それぐらい私ももう1回やりたい作品ではありました。だから本当に何の先入観もなく、あらすじも読まなくていいぐらいで、ぜひ劇場に体験しに来てほしいなと思います」と呼びかけて会見を締めた。
ミュージカル『ウェイトレス』再演は、2025年4月に東京・日生劇場、5月に愛知・Niterra 日本特殊陶業市民会館フォレストホール、大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座にて上演される。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)