WEST.の濵田崇裕&神山智洋がW主演を務めるミュージカル『プロデューサーズ』が2024年11月8日(金)に東京・東急シアターオーブにて初日を迎える。初日前日には公開ゲネプロと初日前会見が実施され、会見にはW主演を務める濱田と神山のほか、ヒロイン役の王林、演出・振付を手掛けたジェームス・グレイが登壇した。
大ヒットブロードウェイミュージカル『プロデューサーズ』を新演出版で上演
1968年に映画として公開された映画をもとに、2001年にブロードウェイで上演されたミュージカル『プロデューサーズ』。メル・ブルックスが脚本・作詞・作曲を手掛けた本作は、ブロードウェイを舞台にしたブロードウェイ作品として大ヒット。同年のトニー賞において、史上最多となる12部門の最優秀賞を受賞した。
日本でもこれまで3度上演されているが、今回は新演出版での上演。ジェームス・グレイが演出・振付を手掛け、翻訳・徐 賀世子、訳詞・森 雪之丞によって、作品に新たな風が吹き込まれた。
主人公の1人で落ちぶれた陽気なプロデューサーのマックスを演じるのは、本格ミュージカル初出演となるWEST.の濵田崇裕。彼とタッグを組むことになる気弱な会計士のレオ役は、同じくWEST.の神山智洋だ。神山は約9年ぶりのミュージカル出演となる。
さらに女優志望のヒロイン・ウーラ役は、本作が初舞台・初ミュージカルとなる王林が演じる。このほか、舞台演出家のロジャー・デ・ブリ役に新納慎也、ロジャーのアシスタントのカルメン・ギア役に神里優希、劇作家のフランツ・リープキン役に岸 祐二、投資家のホールドミー・タッチミー役に、島田歌穂と友近(Wキャスト)が名を連ねる。
実力派俳優からバラエティ番組でも活躍するキャストまで豪華キャスト陣が揃い、“史上最低”なミュージカルで一攫千金を目論む落ち目のプロデューサー&冴えない会計士が繰り広げるユーモアたっぷりのコメディミュージカルが描かれる。
濵田崇裕&神山智洋「阿吽の呼吸を実感」
本作がミュージカル初出演となる濱田は「ジョークを交えつつ楽しい稽古でした」と約1ヶ月の稽古期間を振り返り、「不安もない」と堂々たる姿。W主演を務める神山は9年ぶりのミュージカル出演。「隣には濱ちゃんがいるし、このカンパニーは関西人が多くて稽古場では関西弁が飛び交っていて。すごくいい柔らかくて楽しい雰囲気だったので、それが作品にもいい空気をもたらしてくれるんじゃないかな」と、稽古場で感じた手応えを語った。
ミュージカルも舞台も今回が初めてとなる王林は、スウェーデンからニューヨークへとやってきて英語も上手に話せないというウーラ役を演じる。「稽古は初めて大変でしたが、恵まれた環境で、みなさんに会えるから頑張ろうと思えました」と青森弁のコメントで会場を和ませる。標準語を話せないという王林は、本作ではそれを武器に「王林らしいウーラを演じられたら」と笑顔を見せた。
演出・振付のジェームス・グレイは「初ミュージカルの方々もいるなんて信じられないくらい、才能あふれるカンパニーです。みなさんが自分らしさを生かした芝居を用意して稽古に臨んでくれたので、稽古場でもたくさん笑いました」とキャスト陣を大絶賛。
彼自身、本作のブロードウェイ版やロンドン版、映画版にも出演している。そんな『プロデューサーズ』を知り尽くす男から見ても「オリジナルの振付やおもしろさがありつつも、このカンパニーならではのコピーではないオリジナルな作品」になっているそう。
また、濵田や神山、王林への印象を聞かれると、「美しく、なおかつおもしろい役者さんはあまりいらっしゃらないですが、3人とも演技も歌もダンスも才能にあふれています!」と、またもや大絶賛。濵田や神山らも思わず頬が緩んでいた。
ジェームスからもコンビネーションを褒められていた濵田と神山は、かれこれ20年近くの仲。濵田が「楽屋にコロコロを持参して掃除していた。舞台の現場ではそうするんや」と、今作で初めて知った神山の意外な一面を暴露。
対する神山は「マックス(濵田)はボディランゲージが多いのですが、そういったシーンで条件反射で僕も同じことをやっちゃうんですよ。それは20年の付き合いだからこそなせることなのかなと思いますし、お互いのことをわかっているから最初から遠慮なしでできる。阿吽の呼吸というのを改めて実感しました」と、濵田への揺るぎない信頼を見せる。
最後に、初日に向けての意気込みを問われると「劇場に来てくださたみなさんを別空間にお連れして、帰るときには華やかな気持ちで帰っていただけるように頑張ります」(濵田)、「僕もミュージカルは9年ぶりなので、ゼロから始めるような気持ちです。稽古では毎日ドキドキハラハラして。その毎日が刺激的で楽しかったです。カンパニー全員がキャラクターとして生きていて、お客様に笑顔や胸を打つような感覚を届けられるような作品になっているんじゃないかなと。最後まで走りきれるように頑張りたいと思います」(神山)と会見を締めくくった。
ゲネプロレポート:目指すは“最悪”のブロードウェイ作品!
ゲネプロでは幕が上がる直前に、演出・振付のジェームス・グレイがマイクを持ってステージ前へ。客席に感謝を述べるとともに、「思いっきり笑って、なんなら立ち上がって楽しんで!」とメッセージを送り、マスコミや関係者で埋め尽くされた劇場は一気に温まる。
ジェームスの後押しを受けて始まった本編は、かつてのブロードウェイ大ヒットメーカー、マックス・ビアリストック(濵田)が、いまはすっかり落ちぶれてしまっているところからスタート。
マックスは気弱で真面目な会計士のレオ・ブルーム(神山智洋)を巻き込んで、壮大な詐欺計画を立てる。その計画とは、“最悪の脚本家、最悪の俳優、最悪の演出家”を集めて、“最悪のブロードウェイ作品”を上演すること。
マックスが身を削って資金をかき集め、レオは一歩踏み出せない弱気な自分と決別してマックスの共犯者となることを決意。2人が歩むのは“最悪”を目指す道とあって、次第に出来上がっていくカンパニーはかなりの曲者揃いとなってしまう。果たして2人の目論見通り、上演打ち切りとなるような失敗作を作ることはできるのか・・・。
笑いと怒涛のハイテンションがジェットコースターのように襲い来る本作。まずはその中心で台風の目となっていたマックス演じる濵田に称賛を送りたい。マックスの持つ商魂たくましい雰囲気は、関西出身の濵田にぴったり。軽快なトークで周りを引き込んでいく、人当たりのいい笑顔とほんの少しの胡散臭さのさじ加減が見事だ。
マックスは良からぬことを企んでいる人物ではあるが、濵田の持つノリの良さと愛嬌のおかげか、愛され力の高い人物像に仕上がっていた。終盤のモノローグではアドリブだろうか、実家の農家に思いを馳せるシーンも。膨大なセリフ量があるだけに、どのシーンがアドリブなのか、思わず何度も通って確かめたくなってしまう。
そんなマックスに影響されて、自分の人生を変えていくことになるレオは、芝居の振り幅が魅力だろう。基本的にレオは下を向いておどおどとしている。赤ちゃんの頃から一緒のブランケットを身に着けていないとパニックになってしまうほど、精神的にも不安定な人物だ。
神山は繊細な芝居で、レオの揺らぎを表現。さらに、ずっと内向的に生きてきた人が吹っ切れたときの独特な突き抜け方を、嫌味なく面白おかしく見事に演じきった。
長年培ってきた2人の関係性を、芝居の間合いやデュエットのハーモニーで存分に楽しむことができる。ファンにとっては、思わずニヤリとしてしまうシーンが目白押しだ。
そんな主演2人がドタバタと大騒ぎをする周囲で、彼ら以上に濃い登場人物たちが、さらに作品に賑わいを足していく。
ヒロインのウーラ(王林)は健康的な艶っぽさが魅力的。登場する度に変わる華やかな衣裳にも注目だ。
脚本家のフランツ・リープキン(岸 祐二)、演出家のロジャー・デ・ブリ(新納慎也)とその助手のカルメン・ギア(神里優希)、資産家のご老人ホールドミー・タッチミー(島田歌穂と友近のWキャスト、ゲネプロでは島田が出演)は、全員がコメディならではのアプローチで各キャラクターを濃厚に表現。
芝居での“遊び方”が上手く、フランツと相棒の鳩とのやり取りや、ロジャーとカルメンの勢いのある愛憎劇、下世話な話ばかり口にしているのになぜかチャーミングなホールドミー・タッチミーなど、どれも思わず声を出して笑ってしまった。
とびきりゴージャスで笑えて、じんわり心温まるミュージカル『プロデューサーズ』。冷たい風が吹き始めたこの季節に、きっと観客の心と体を温かくしてくれるだろう。ミュージカル『プロデューサーズ』は11月8日(金)から12月6日(金)まで東急シアターオーブにて上演。上演時間は3時間5分(休憩30分)を予定。
(取材・文・撮影/双海しお)
ミュージカル『プロデューサーズ』公演情報(チケットなど)
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