2024年6月20日(木)に東京・帝国劇場にて『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』が開幕する。昨年夏に日本初演を迎え、演劇界を真っ赤な世界に染め上げた本作。大千秋楽公演に告知されていた“1年後の再演”がついに始まる。初日前には、同劇場にて取材会が行われ、望海風斗・ 平原綾香、井上芳雄・甲斐翔真、橋本さとし・松村雄基、伊礼彼方・Kが登壇し、意気込みを語った。
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』1年ぶりの再演に向けて
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』は、バズ・ラーマン監督による名作映画を、アレックス・ティンバースの演出で煌びやかなマッシュ・アップ・ミュージカルに仕上げた革新的な作品。19世紀のオペレッタを創始したオッフェンバックから、ザ・ローリングストーンズ、エルトン・ジョン、マドンナ、レディ・ガガまで、160年以上にわたるポピュラーミュージック約70曲が散りばめられている。2019年に開幕したブロードウェイ公演は2020年のトニー賞で10冠を達成した。
日本版には、オーディションで選ばれた日本のミュージカルシーンを代表するスターたちが集結。さらに、世界発の試みとして松任谷由実を筆頭に、現在の日本のミュージックシーンで活躍する総勢17名の豪華アーティストが訳詞を提供している。
サティーン役の望海は「日本での初めての上演ということで、こちらも初めてのことが多く、お客様と楽しめるポイントを一緒に作っていった感覚がありました。こちらがエネルギーを出し切るというよりも、お客様からもエネルギーを出してもらって、一緒に熱く盛り上がれる作品だということを、今年は知った状態でお互いスタートできるのがとても楽しみです」と挨拶した。
同じくサティーン役の平原は「去年は『終わっても来年があるから』という気持ちだったのですが、今は『もう来年はないんだな・・・』と始まる前から寂しさを感じてしまいました」と作品への思い入れの強さをにじませつつ、「去年、オーストラリアとニューヨークでこの作品を観てきました。どちらも本当に素晴らしく、同時に、日本版の良さを感じることができました。去年、バズ・ラーマンさんが観に来てくださった時に『日本版は世界で一番泣けたかも』とおっしゃってくださったんです。今年は、さらに日本版ならではのものができるような気がして、楽しみにしています」と開幕への期待を見せた。
クリスチャン役の井上は「去年は、きっと皆さん『チケット代も高くて、どれだけ豪華なんだ?』と思いながら来ていたと思うんです。こういうことはちゃんと言っておいた方がいい。今年、ちょっとだけまた値上がっています。ただ、僕たちはそれ以上のものをお届けしようと思っていますし、落ち着いて稽古もできたのでより深められていると思います。今、演出のノートの時間もほとんどお芝居への言及なので、よりドラマとしてパワーアップしていると思います。この『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』を、この帝劇でやるのは最後になるので寂しいですね。この夏、思う存分僕たちも楽しみたいと思います」と語る。
そして「あとは、ロンドン(で公演中)の舞台『千と千尋の神隠し』に負けないように!」と付け加えると、隣にいた橋本が「今、チクッとした!」と胸を押さえる(橋本は、舞台『千と千尋の神隠し』のキャストでもあるため)。「今はこっちに集中してもらって」と井上が告げると、「もちろんです!」と即答していた。
そして、クリスチャン役の甲斐は、昨年の公演の終了後、実際にフランスへと赴き、実際の「ムーラン・ルージュ」に足を運んだという。「想像でやっていた部分が、今年は視覚的、感覚的に、具体的にイメージできるので、よりパリの物語をお客様に届けられるのかなと思っています。120年前からあれをやっているのは、エンターテインメントの先駆けであり、すごい発想力だなと思いましたが、この現代で作ったムーラン・ルージュも負けていないなと思いました!」と、経験がさらに自信につながったようだ。
改めて、ハロルド・ジドラー役の橋本は、初日に向け「今まで、再演はあっても1年後というのは経験したことがありませんでした。だから、なんだか不思議ですね。1年ぶりとはいえ、ずっとやり続けてきたような感じで。ただね、1年経って、僕、体型にもグレードアップしまして。衣裳も少しサイズアップしていただきました。人間って成長するんですね!」とコメント。
成長したのは、体型だけではないそうで「ジドラーとしてもグレードアップしたジドラーをお見せします。脂身たっぷりの、こってりとしたジドラーを!」とアピールした。
同じく、ハロルド・ジドラー役の松村は「昨年は、帝劇初めて、Wキャスト初めて、そして海外のスタッフによるリモートオーディションも初めてと、初めてづくしでした。がんばっていれば道は開けるということを実感できた経験でした。今年はとにかく楽しみ。僕もまあまあそれなりの経験し、還暦も迎えまして・・・。さとしさんよりは、あっさり目のジドラーを(笑)。それでも、去年よりは猥雑な部分を出していけたらと思っています。皆さん期待していてください」と語った。
デューク(モンロス公爵)役の伊礼は「去年は、客席から歓声が上がるのを嬉しく聞いていました。なかなか日本のミュージカルで歓声が上がることってないじゃないですか。この作品をきっかけに、新しいミュージカルの観劇の仕方が根づいていけばいいなと思います。1年後に再演があるって、なかなかないことだと思うので!真っ赤な世界に浸っていただいて、忘れないうちにどんどん違う作品でも広めていっていただければと思っております」と挨拶。
同役のWキャスト、Kも「演者ですが、お客さんとして何回か本番を観たんですが、自分の中のミュージカルに対するイメージが変わりました。韓国のスタッフと話をしたんですが、帝国劇場を見てすごく感動したとおっしゃっていました。劇場の雰囲気や椅子の色で、まさにムーラン・ルージュだ!と言われて、誇りに思いました」とエピソードを語りながら、「僕らの役は悪役なので、僕らの動きで物語も動いていきます。がんばって動かしていきたいと思います!」と意気込みを見せた。
キャストたちが感じる去年との違いは?
去年との違いについて、問われると井上と橋本が「さとしさんが太った・・・」「それさっき言うた!」とボケツッコミを見せる。また、井上が「甲斐くんも大きくなったよね。(鍛えると)すぐ身体が大きくなっちゃうんだよね?」と指摘すると、甲斐は「このセットに負けないように・・・」とポツリ。これに対しても井上は「え、どこと張り合って・・・?象?」とツッコんでいた。
ちなみに、甲斐だけでなくダンサー陣も身体を大きくしているそうで、望海が「ダンサーさんたちは動きがすごくハードなので、去年、どんどん痩せていってしまったんです。だから、皆さん意図的に身体を大きくしていたようで、衣裳もサイズアップされていました」と解説してくれた。
自身は何も変化していないという井上は、“若さ”の秘訣を聞かれると、「作品を通してやりきると(自然と)“若さ”が出せているんじゃないかな・・・」と回答。また、以前から「世界最年長のクリスチャンである」と言っており、「オーストラリアスタッフと話した時も否定されなかったんですよ。もしかしたら40代のクリスチャンもいたかもね、ぐらいの感じで。だから、もうちょっと僕のこと大切に扱った方がいい(笑)」と訴えていた。
今回、稽古のやり方は大きく変わったそう。「チーム・ウィンドミル(望海・甲斐・松村・伊礼)」と、「チーム・エレファント(平原・井上・橋本・K)」に分かれ、完全にグループ分けされ、一緒に稽古をすることもなかったそう。伊礼が「初めてチームをMIXしてやった時、さとしさんとやったら崩壊しました!身体も大きくなってるし、芝居も濃厚になっているし(笑)」と暴露し、笑いを誘う。
演出側からのノートも、チームごとに異なっているようで「何を言われているか、お互いまったく分からない状態」。「こってりやりすぎちゃうエレファントとさっぱりなウィンドミル、混ざったらちょうどいいかも」「どんな化学変化が起きるのか、僕たちも楽しみ」と口々に言っていた。組み合わせの妙は、去年以上かもしれない。
今回は、東京公演のほかに大阪公演が行われる。甲斐は「梅田芸術劇場が大好き(雰囲気と音がいいとのこと)」と言い、「今年もサティーンからもらった大きな愛を、皆さんに届けるクリスチャン役を任されました。大阪公演の最後まで楽しみです」と期待を寄せた。
井上も「舞台の見え方なども調整して、できるだけたくさんの方に楽しんでいただけるように演出を加えたりしています。始まったら、去年のようにどんどん盛り上がっていくと思うので、皆さんお早めに!」と加えた。
最後に、再演に向け、平原は「私は今年、ちょうどミュージカルデビュー10周年の年なんです。こうして素晴らしい作品と共に迎えられるのが嬉しいです。人は、最後を迎える時が一番力強いという話を聞いたことがあります。心臓の一音一音まで、最後までかっこよく生きるサティーンを演じられるように、応援してもらえたら嬉しいです」とコメント。
望海は「去年と同じメンバーで帰ってこられました。一人一人がパワーアップしていますし、携わっている人たちが心から楽しんでやっているのが素敵なところです。このエネルギーが皆さんに伝わって、劇場の中で爆発するようなエネルギーを感じられたらいいなと。私たちも日々熱く過ごしていきたいと思いますので、大阪の大千秋楽までよろしくお願いいたします!」とメッセージを贈り、会見を締めくくった。
(舞台写真/『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』2023年公演より 写真提供:東宝演劇部)
(取材・文・取材会撮影/エンタステージ編集部 1号)
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』公演情報
<上演スケジュール>
【東京公演】2024年6月20日(木)~8月7日(水) 帝国劇場
【大阪公演】2024年9月14日(土)~9月28日(土) 梅田芸術劇場メインホール
<キャスト>
※各役50音順)
サティーン:望海風斗/ 平原綾香
クリスチャン:井上芳雄/甲斐翔真
ハロルド・ジドラー:橋本さとし/松村雄基
トゥールーズ=ロートレック:上野哲也/上川一哉
デューク(モンロス公爵):伊礼彼方/K
サンティアゴ:中井智彦/中河内雅貴
ニニ:加賀楓/藤森蓮華
ラ・ショコラ:菅谷真理恵/鈴木瑛美子
アラビア:磯部杏莉/MARIA-E
ベイビードール:大音智海/シュート・チェン
[アンサンブル(E)/スウィング(S)]
ICHI(E)/乾直樹(E)/加島茜(E)/加藤さや香(E)/加藤翔多郎(E)/酒井航(E)/篠本りの(S)/杉原由梨乃(E)/仙名立宗(E)
高橋伊久磨(E)/田川景一(E)/田口恵那(E)/茶谷健太(S)/富田亜希(E)/平井琴望(E)/堀田健斗(S)/三岳慎之助(E)
宮河愛一郎(ダンスキャプテンE)/米島史子(S)/ロビンソン春輝(S)/和田真依(S)
『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』あらすじ
1899年、パリ。
退廃の美、たぐいまれなる絢爛豪華なショー、ボヘミアンや貴族たち、遊び人やごろつき達の世界。
ナイトクラブ ムーラン・ルージュの花形スターであるサティーンとアメリカ人作曲家クリスチャンは、ムーラン・ルージュで出会い、激しい恋に落ちる。
しかし、クラブのオーナー兼興行主のハロルド・ジドラーの手引きでサティーンのパトロンとなった裕福な貴族 デューク(モンロス公爵)が二人の間を引き裂く。
デュークは望むものすべて、サティーンさえも金で買えると考える男だった。
サティーンを愛するクリスチャンは、ボヘミアンの友人たち(その日暮らしだが才能に溢れる画家トゥールーズ=ロートレックやパリ随一のタンゴダンサーであるサンティアゴ)と共に、華やかなミュージカルショーを舞台にかけ、窮地に陥ったムーラン・ルージュを救うことでサティーンの心を掴もうとするのだが――。