アングラ演劇の旗手として知られた劇作家・演出家・俳優・小説家の唐十郎が、5月4日に急性硬膜下血腫により死去した。84歳だった。本日5月5日、劇団唐組の公式ブログにて発表された。唐は5月1日午前中に自宅で転倒し、東京都中野区内の病院に緊急搬送されていた。通夜と葬儀は近親者のみで行われるとのこと。
唐は1940年、東京都生まれ。1958年に明治大学文学部演劇科に入学し、学生劇団「実験劇場」で俳優として活動する。卒業後には1963年に劇団劇団「状況劇場」(当初は「シチュエーションの会」)を旗揚げし、既存の演劇に異議を唱えるために1967年に東京・新宿の花園神社境内にて初の紅(あか)テント公演を行う。この公演が後の「状況劇場」の方向性を決定づけ、1989年に「劇団唐組」を旗揚げ後も独特のスタイルを貫いた野外上演を各地続行。「天井桟敷」の寺山修司らと共にアングラ演劇の旗手と呼ばれるようになり、逸話も多い。
「状況劇場」からは、麿赤児、根津甚八、小林薫、佐野史郎、六平直政、渡辺いっけいらといった名優たちを輩出。1988年に「状況劇場」を解散したあとは、1989年には劇団唐組を旗揚げ。1997年以降は横浜国立大学、近畿大学。明治大学で教授・客員教授なども務めた。
代表作は、岸田國士戯曲賞を受賞した「少女仮面」や鶴屋南北戯曲賞などを受けた「泥人魚」など。1983年に執筆した小説「佐川君からの手紙」では芥川賞を受賞。2021年には、文化芸術に多大な影響を与えたとして文化功労者に選ばれた。
なお劇団唐組は、本日5月5日より花園神社にて、第73回公演『泥人魚』の幕を開ける。