ディスグーニーが3本立てで原点回帰する理由 舞台「Go back to Goon Docks」稽古場レポート

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ディスグーニーが3本立てで原点回帰する理由 舞台「Go back to Goon Docks」稽古場レポート

2024年1月11日(木)よりDisGOONie Presents Vol.13 舞台「Go back to Goon Docks」が上演される。西田大輔率いる「DisGOONie(ディスグーニー)」が、“3作品一挙上演”に挑むこの企画。昨年末、年の瀬が迫る中で繰り広げられていた熱い稽古場を取材した。その模様をレポートする。

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1985年に公開された映画『グーニーズ』の中に存在する町の名前をメインタイトルに据えた本公演では、西田たちがこれまでに上演してきた作品の中から、『十三夜』『桜の森の満開の下』『チックジョ~』の3作品を再創造して上演する。

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劇団「AND ENDLESS」として20年近く活動してきた西田が、「創ることは出逢うこと」をテーマに、演劇界に限らず広い視野でエンターテイナーたちと出逢い、新たな“冒険”を目指すため、2015年に始動させたのがこの「ディスグーニー」だ。その第1弾公演でも、今回と同様に3本立ての上演を行っている。

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第1弾公演も、当時の公式サイトを見るとバラエティに富んだラインナップだったが、今回選ばれた3作品もなかなかに異色の組み合わせ。『十三夜』は、シェイクスピアの「十二夜」を劇中劇として挿入しながら、ある町とその町を愛した人々を描いた人情劇。『桜の森の満開の下』は、坂口安吾原作の「桜の森の満開の下」を西田が脚色し、聖徳太子をモチーフにしたウマヤドを中心とした人間群像劇。そして、『チックジョ~』は、織田信長に無茶ぶりをされた木下藤吉郎が作り上げた「一夜城」の真実を描く戦国シチュエーションコメディ。並べてみると、改めて西田作品のふり幅の大きさを感じる。

取材日は、時間を区切って3作品それぞれの場面作りが行われていた。本記事では、稽古の様子を見ることができた『チックジョ~』と『十三夜』の一部をレポートする。

稽古場は、稽古が始まる前から活気にあふれていた。自主練といっても、一人でやるのではなく、役の関係が深い者同士でグループのようになり、アドバイスしたり意見交換をしたり。そういう些細な時間からもチーム力が感じられた。

いざ、稽古開始。演出卓についた西田から、稽古する台本のページ数が告げられると、一斉に配置に付く俳優陣。迫るピンチの中、築城を急ぐ木下藤吉郎(樋口裕太)のもとに、妻の八重(文音)が殴り込んでくる・・・という、登場人物の入れ替わりも激しく、派手なアクションも盛り込まれる目まぐるしいシーンだ。

少しずつ台本を読み進める中、「シンメトリーになっちゃうとキレイすぎる気がするな~」「全体で5歩早めに」「そこは覇気で吹っ飛んでほしい」などなど、西田の口からはポンポンと演出指示が飛び出す。西田作品は、登場人物が多い。しかし、誰ひとりとして欠けてはいけない。全体の行動を整理しながら、西田の頭の中でイメージが膨らんでいくのを感じる。

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そして、そのイメージを高い感度で共有しようと、西田から出てくる言葉にかぶりつく俳優陣の高い集中力。特に、長年西田と共に作品作りをしている村田洋二郎、佐久間祐人、谷口賢志あたりの反応速度は尋常ではない・・・。

西田自身が実演しながら演出をつけることもあるのだが(特に殺陣)、一つ一つのイメージをしっかりと言葉で共有しているのも印象的だった。おもしろかったのが、あるものを「ちょっとした阿波踊りみたいな感じで避けてほしい」と西田が表現したところ、阿波踊りっぽくなりすぎてしまった。「阿波踊りに引っ張られすぎだね。・・・言ったの、俺だけど(笑)」と、ニコニコしながらセルフダメ出しをする西田の言葉に、稽古場は笑いに包まれた。

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「大事なのは、その状況を必死に生きているということ。笑いを取りにいかなくていいからね」と言いながら、次々に心の動きと身体の動きに強弱をつけていく西田。

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とんでもないスピードで変化していく稽古を見ながら、椎名鯛造が「めちゃくちゃおもろいな・・・」と呟いていた。また、音楽を効果的に使う西田だが、木下藤吉郎役の樋口の見せ場では「あえて無音でいこう」という選択をしていた。どんなシーンに仕上がるか楽しみだ。

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そして、気になるのが追加キャストとして出演が発表されたコウメ太夫。この日は、その登場シーンについても試行錯誤、いろんなパターンが試されていたが、果たして・・・?(※コウメ太夫は1月19日18:00公演/1月20日12:00公演、1月21日13:00公演のみ出演)

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「立体的でいいと思います!」という西田の言葉で、一旦『チックジョ~』の稽古は終了。束の間の休憩時間だったが、その間にも西田の周りに集まる俳優陣。ああだこうだと、結局芝居の話をしているし、何なら階段の踊り場でも稽古が始まる。本当に、(敬意を込めて)芝居バカな人たちだ。

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続いて、稽古は『十三夜』二幕冒頭へ。グローネ役の中西智也とランダー役の星野陽介(学芸大青春)の会話から始まるドタバタシーンは、若手2人のマンツー指導から始まった。同じことを繰り返さないようにと空気を引き締めるながらも、「練習してたアレ、やりなよ」「いいじゃん、コンビっぽい感じ出てきたじゃん」などと声をかけ、フレッシュな2人を稽古場全体で温かく見守る。

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ここから、台本2ページ半。俳優たちは、ひたすら舞台上を走り回ることになる。舞台セットの高低差を使い、「これできる?」と身体をフル活用しながら、時に台詞を足しながら、上手へ下手へとポジションを動かしまくる西田。中西と星野のシーンがうまくいくと、「いいね、あるものを使って芸術を作っているこの感じ」とニヤリ。

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続いてトービー役の佐久間祐人には、「舞台上を転がってほしい」「(持っているものを)ラグビーを意識して投げてほしい」など、さらに難易度の高い要求。また、オーシーノ役の村田洋二郎には、先ほど中西と星野の場面で追加した動きについて「ここはやっぱり、日本古来の重ねが欲しいよね」とポツリ。もちろん、全力で応える2人。

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「舞台上を走るという行為だけで魅せてほしい」という西田の言葉に、全員、全力投球。話の本筋はひとつも進まない。ただ「走って逃げる」という“それだけ”のシーンが、演出の妙を感じられる、これぞドタバタ!なシーンへと変貌を遂げていった。

当たり前だが、3作品一挙上演をするからといって、稽古時間も3倍になるものでもない。それだけに、稽古場は常に高い集中力が保たれていた。西田は、今回の“原点回帰”について、次のように語った。

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「一見、無茶に見えるかもしれないんですけど、生きている時間って限りあるものじゃないですか。僕らは、まだまだ見せたいものも、作りたいものもたくさんあるんです。だから、大変だけど、ディスグーニーを立ち上げた時のようにもう一度原点に帰って挑戦してみよう!と思って、今回また、3本立てで上演してみることにしました」

実際、稽古は大変だが、「悩んでる時間はない、これでいくぞ!と、せめぎ合う感覚は、やっぱり痺れますね。みんなも、大変大変って言いながらもいい顔してるし、活気に溢れているので、作っていて楽しいです」という。そう語る西田自身も、とてもいい顔をしていた。

「創ることは出逢うこと」を掲げるとおり、3作品とも西田は、今、目の前にいる俳優のために手を加えている。「3作品とも毛色が違うので、それぞれ全然違う感情を手にできると思うんです。ぜひ、1本観たら2本目、2本観たら3本目と、観客の皆さんにも、一緒にこのディスグーニーという船に乗って、旅をしてもらえたら嬉しいなと思っています」と語っていた。

2023年、最高に演劇している現場を目撃した。2024年、きっとその熱をより高めて、最高の演劇を届けてくれるに違いない。“生きている時間って限りあるものだから”。今しかできない経験を積み重ねながら、己の中に湧き上がるいろんな感情と出逢いたいと思う。

DisGOONie Presents Vol.13『Go back to Goon Docks』は、2024年1月11日(木)から1月21日(日)まで東京・EX THEATER ROPPONGIにて上演される。

また、1月8日(月・祝)の18時からは、舞台「Go Back to Goon Docks」の緊急生配信が決定した。開幕を直前に控えた進捗、作品の面白さ、熱気を西田大輔とキャストたちが語り尽くす。また、特典付きチケット情報など盛りだくさんの内容となっている。

<舞台「Go Back to Goon Docks」公演直前、緊急生配信!>

【配信出演者】
MC:西田大輔
瀬戸利樹 樋口裕太 谷口賢志 田中良子 椎名鯛造 文音 細貝圭 村田洋二郎 瀬戸祐介 中西智也 平山佳延 長友光弘(響) 佐久間祐人 一内侑 松村芽久未 斉藤瑞季 こぴ 甲斐千尋 書川勇輝 本間健大 星野陽介(学芸大青春) 大澤えりな 窪寺直
(出演者は予告なく変更になる場合あり)

【配信視聴URL(無料)】
https://youtube.com/live/RLvI1wgrOVI?feature=share

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

目次

ミニインタビュー

『十三夜』主演:伊波杏樹

――脚本を読んだ時、どんな印象を持たれましたか?

強く心に残り、それぞれの描きゆく未来に影響していくような作品だと思いました。この『十三夜』を通して、生きる全ての人々が主役であり、物語なんだと改めて、日々を過ごすことの大変さと素晴らしさを実感しています。

――3作品同時に稽古が進むのはとても大変だと思いますが、今回の稽古場ならでは!ディスグーニーならでは!と感じている稽古のおもしろさを教えてください。

AND ENDLESSの方々の人となり、生み出される芝居や笑いの数々に感動する度、このディスグーニーの船の大きさと魅力を実感します。未熟者の私ではありますが、本当に。心から同じ板の上に立てることを光栄に思います。

――ご自身の主演作を思いっきりアピールするコメントをお願いします!

一度観て深く、強く心に刻み込まれ、
二度観て多くを知った先で、
輝くような笑顔が息をする作品だと思います!

とにかく強く、まっすぐに光に手を伸ばすように私自身もこの『十三夜』を届けられたらと思います。
私は登場人物の全員が主役だと思うので、
それぞれの想いを楽しんで頂きたいです!

『桜の森の満開の下』主演:瀬戸利樹

――脚本を読んだ時、どんな印象を持たれましたか?

こんなにも苦しく美しいものがあるんだなと思いました。
台詞の一つ一つに胸を打たれる言葉の数々があり、自分が演じたらどうなるかと共に覚悟をしないといけないなと思いました。

――3作品同時に稽古が進むのはとても大変だと思いますが、今回の稽古場ならでは!ディスグーニーならでは!と感じている稽古のおもしろさを教えてください。

稽古日数が少ないこと(笑)!
圧倒的に他の舞台の稽古より少ないのですが、その分一回一回集中しているなと感じますし、その一回に自分の使えるものを出し惜しみなく使うので、充実度はすごくあります。

――ご自身の主演作を思いっきりアピールするコメントをお願いします!

とにかく美しいです。
美しさの中にある残酷さや声を是非、劇場でご覧ください。音楽合わせのセリフもあり、間に合わなければ終わりです。
観に来てくださったあなたに、なんかわからないけどすごかった!と言わせられたら僕の勝ちだなと思っているので楽しみにしていてください。

『チックジョ~』主演:樋口裕太

――脚本を読んだ時、どんな印象を持たれましたか?

『チックジョ~』は本当に面白い。
このスピード感とかコメディーならではの感じが最高です。
『十三夜』は西田さんの頭の中を覗きたくなるくらい。
どうやったらこんな脚本を生み出せるのか?と、難しくて考えさせられました。

――3作品同時に稽古が進むのはとても大変だと思いますが、今回の稽古場ならでは!ディスグーニーならでは!と感じている稽古のおもしろさを教えてください。

昼12時から17時まで『十三夜』の稽古。
17時から21時まで『チックジョ~』の稽古。
どんどん頭がバグってきますよ。
いや、本当に(笑)。

――ご自身の主演作を思いっきりアピールするコメントをお願いします!

『チックジョ~』で主演を務めさせていただきます。
稽古中、舞台袖から共演者の芝居を見て声を出して笑ってしまうくらい、みんなが本当に全力でコメディーの芝居をしています。
疾走感というか、ブワーッと風を起こす勢いで物語の最初から最後まで、全力で本気で舞台上で倒れるくらいの勢いで生きてやろうと思ってます。
(舞台『Go Back to Goon Docks』の)3作品の最後が『チックジョ~』なので、最後は笑顔の船に乗船しにきてください。キャスト一同で待ってます。

DisGOONie Presents Vol.13『Go back to Goon Docks』公演情報

上演スケジュール

2024年1月11日(木)~1月21日(日) 東京・EX THEATER ROPPONGI

『十三夜』/キャスト

【出演】
伊波杏樹 田中良子 椎名鯛造 村田洋二郎 文音
瀬戸祐介 樋口裕太 中西智也 こぴ 佐久間祐人
平山佳延 一内侑 星野陽介(学芸大青春)/西田大輔

『桜の森の満開の下』/キャスト

【出演】
瀬戸利樹 田中良子 谷口賢志 文音 細貝圭
村田洋二郎 松村芽久未 斉藤瑞季 一内侑
書川勇輝 本間健大 窪寺直/伊波杏樹

『チックジョ~』/キャスト

【出演】
樋口裕太 椎名鯛造 田中良子 村田洋二郎
中西智也/文音/瀬戸祐介 平山佳延 長友光弘(響)
佐久間祐人 甲斐千尋 書川勇輝 星野陽介(学芸大青春))/
谷口賢志

公式サイト

【公式サイト】https://disgoonie.jp/stage/vol13/
【公式X(Twitter)】@disgoonie

(C) 2024・Go back to Goon Docks. ALL RIGHTS RESERVED.

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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