「梅津瑞樹という才能を観てほしい」橋本祥平との二人芝居 言式『解なし』レポート

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2023年10月25日(水)に東京・博品館劇場にて言式『解なし』が開幕した。「言式」は、梅津瑞樹がプロデュースし、橋本祥平と共同企画する演劇ユニット。ユニット名の「言式」とは“「試み」の分解であり、常にやりたいことを試みる”という意味が込められている。記念すべき旗揚げ公演となる本作では、梅津が初の脚本と演出を手掛け、橋本とオムニバス形式の二人芝居に挑む。初日当日に公開ゲネプロと囲み取材が行われ、梅津と橋本が登壇した。

会見では、旗揚げ公演の初日を迎えた橋本が「企画段階から今日まであっという間だったなという感想なんですけど、稽古時間もそこまで取れたわけじゃなく、2人だからこそギュッと最後の一週間で濃いものにして、この作品ができたなと思っています。とにかく早くいろんな方にこの作品と梅津瑞樹という才能を観てほしいです」と思いを語った。

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橋本の言葉を受けて、梅津も「祥平が来る前にもいろいろ組み立てていたものが、祥平が来たことによって色が付いて、短いなりにこれはいいものになるなという実感を日々感じながら稽古ができたので、それ自体は結果として問題ないものが観せられると思います」と短い稽古期間でありながら手応え十分な様子を見せた。

また、囲み取材があるとは思っていなかったという梅津は「コロナが明けて囲み取材が復活してきて、目の前でお話できるのがすごく楽しいという思いがあります。それと同時に、いざ自分が演出・脚本、そして出演という形で囲みで話させてもらうと、今まで自分が役者として出てきた舞台の演出家さんたちが『面白い作品になったと実感しています』というように口々に言われますけど、それのなんと勇気のいることか(笑)。それが今すごく実感していて、それと同時に絶対面白いものができたと確信しているので、あとは皆さんがそれをどう咀嚼するのかというぐらいの心持ちで今は立てているというか(笑)。今回もすでにそういう意味では成功したのかなという実感がわいています」と自信を覗かせた。

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演出家としての梅津に対して、橋本は「演出家としては、進め方とか経験しないと分らないことで、すごくぶつかっているなというのは間近で思っていました。僕にできることは何でもと隣にいたつもりなんですけど、そういうものを知った瑞樹という人間が今後、より濃く深く、いい役者としても、演出家としてもいい人になるんだろうなって思っています」と期待を寄せた。

加えて「アドバイスが的確なんですけど、僕自身、演出家さんの要望にちゃんと答えられているかどうか、そういうドキドキした感じはあるんですけど、不思議なもので、普段は距離感を近くいさせてもらっているんですけど、そういう時は自然と敬語がちょっと出てしまうんです。演出家さんとして接しているからだと思うんですけど(笑)」と裏話を披露しながら、「でも、すごく切り替えていて、本人が一番今回、やるにあたって大変だったと思うんですけど、瑞樹くんのために、そして「言式」というユニットのために必ず成功させたいです」と意気込みを披露。

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初の脚本・演出作品ということに、梅津は開口一番「大変だったぁ・・・」と吐露しつつ、「舞台を作るってこんなに大変なんだなということを改めて実感したというか、いろんな人と一緒に一つのものを作るということの絡み合いかたというか、それをほぐして一本の束にしなければいけないということは、すごく大変ですね」と演出家としての苦悩を明かした。

舞台セットは組み合わせると「言式」という文字が描かれている複数の大きなブロックに、白塗りの書割のみという実にシンプルなものとなっている。そのセットの演出について、梅津は「このブロックが一つの見どころです。僕はボックスがすごく好きなんです。これってどんな形にもなるし、なおかつ何にでもなるということは観ている人の想像力に訴えることができるので、今回このボックスを使ったということもあります」と解説した。

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そんなシンプルなステージ上で、マンパワーによる演劇的表現を駆使して、全く色の違う5つのオムニバスが綴られる。

その構成と物語について、橋本は「今回どれもこれって言いがたいぐらい素敵なものになっております」と自信を見せると、見どころについて「今回、「言式」としてやるとなって、まず何をやりたいかということを相談した時に、最初に瑞樹くんがおっしゃった案をそのまま取り入れて、それだけは揺るがずに進んできました。その仕掛けを観た瞬間。たぶんお客さんはビックリすると思うんです。ひょっとしてトラブルなのかなと思うぐらいのものすごいど派手な仕掛けがありますので、それがいつ来るんだろうとドキドキしながら待っていてほしいです」と挙げた。

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オムニバスとなっている本作の中で、特に稽古場で印象が強かったという4番目の作品について、橋本は「とりあえず全部作って形ができたんですけど、4つめのオムニバスのお芝居がちょっとどうなんだろうということで、ゼロから作り直したんです。しかも、それが稽古の終わり間近ぐらいのところから一日で作り直したんですけど、めちゃくちゃ良くなりました。あの日の一丸となったみんなの集中力は最高でした(笑)」と振り返った。

そのオムニバスの4番目のストーリーの経緯について、梅津も「稽古に至るまでに度重なる打ち合わせを繰り返していて、その打ち合わせの中でここをどう表現するのかとなった時に、『こういうのはどうですか』とか、『こういうのだったらうまくできるんじゃないかな』と話をしていたものを諦めて、『じゃあこういう形で進めましょう』と言って作ってきたものが、実はこれだったらこうできるみたいなものがポンと突然出てきて、じゃあこっちでいいじゃんみたいな(笑)。そういうことがあったりして、それで全部作り替えるに至ったんです」と説明した。

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そして改めて、演出家としての心構えとして、「そういう意味でも、演出家としてこれから世に羽ばたいていこうという気はさらさらないんですけど、そういう演出の知識として知らないことがいっぱいあるし、やっぱり芝居だけではなく、音響、照明、いろんな舞台機構だったり、いろんなことに対して詳しくないと演出家は無理かなと今回強く実感しました」と心境を語った。

また、本作の見どころについて、梅津は「この場所へ観にきてくれている人がいるということをすごく意識した作りになっています。演出もそうだし、お話自体もそうだし。劇場にわざわざやってきてくれて、みんなで一つのものを観るというその体験をすごく特別なものにしたいという愛が随所にちりばめられているので、皆さんが観てお気に入りのポイントを見つけていただければと思います」と呼びかけた。

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梅津が本作で描こうとしているのは、「生きるとは何か」という命題へのアンサーだという。オムニバスとしての様々な物語の中に、梅津と橋本によるそのアンサーが、人間の生きる様や思いとして綴られており、梅津が呼びかけたように観る人によって心を打つポイントが随所にある舞台作品となっている。

W主演を務めたり、共演も多い2人による二人芝居となる本作。演出家として梅津は、役者・橋本に対して「もともと「言式」というユニットを立ち上げるにあたって、役者としての祥平を間近で観ていたことが一番大きくて、彼の素直さだったりとか、すごく自分のその瞬間、あるパッときたインスピレーションとか、感情みたいなものをすぐに表に、しかもいい形で届けられるという瞬発力の高さだったりとかをもとに立ち上げたんです」とユニット結成の理由を明かしつつ、「演出として関わると、『こいうい風なのだとどう?』みたいでも、とりあえずやってくれるし、それはやっぱり自分の中の想像した音だったりとか、見た目だったりとか、想像した祥平をそのままをやってくれるんです。だから、僕はこんなに信頼できる人はいなかったと、改めてこの短い稽古期間で思いました。短かったからこそ、よりこっちのオーダーにすぐ答えてくれたからこそ、この短い稽古期間で完成させれたんだなというのはあります」と信頼を寄せる理由を語った。

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さらに、橋本への演出について「演出家としての俯瞰の目を持たなきゃいけないし、なおかつ共演もしなきゃいけないみたいな、難しいところではあるんですけど。今回、祥平を応援している方が多く観に来られると思うので、皆さんが見たことない橋本祥平を見せたい、俺はこんな祥平を知っているんだけど、お前ら知らなかっただろうみたいな気持ちです(笑)」とアピールした。

その言葉どおりに橋本、そして梅津も含めて、2.5次元作品でも数多く活躍する2人だが、2.5次元作品におけるキャラクターとしての演技とは違う、演劇人、そして役者としての梅津瑞樹と橋本祥平の今までにない2人のむき出しの演技に出会える作品となっている。

最後に、今後のユニットの展開について、橋本は「稽古場の段階からすごく前向きで、『次にこういうことをしたいよね』とか、『次こういうギミックとか使ったら面白いよね』とか、めちゃめちゃ前向きなので、魂が燃え続けるまでずっと続けたいなと思います」と語ると、 梅津が「祥平が突然40歳くらいになったところで農家になろうかなっと言い出すかもしれない(笑)。そうしたら畑で芝居するのもいいかもしれないけどね(笑)」と冗談を交えてコメント。梅津の冗談に、橋本は「でも農家やりたいってなっても、「言式」との二刀流でやっていきたいな(笑)」と乗っかりつつ、改めて「とにかく今回の公演が、未来につながる公演にしたいと思っています」と意気込んだ。

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そして、梅津は「僕はおじいちゃんになるまでやろうと、できる限り一緒に歩いていきたいなと思っています。でもそれは、やっぱり今回いろんな方々からご助力していただいて、しかも配信まで考えていただいてという形になっているんですけど、皆さんが応援してくれるから続けられることだと思っています。もちろん毎回面白いものを出そうとはしますけど、だからこそ、皆様がふるってこのお祭りにご参加していただければ続くんじゃないでしょうか」と展望を語った。

独特の世界観を持つ梅津によって生み出されるものが、橋本とどのような化学反応を起こすのか。記念すべきユニット「言式」の旗揚げ公演を、ぜひ劇場で目撃してほしい。

言式『解なし』は、10月25日(水)から10月29日(日)まで東京・博品館劇場にて上演。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

目次

言式『解なし』公演情報

上演スケジュール

2023年10月25日(水)~10月29日(日) 東京・博品館劇場

スタッフ・キャスト

【脚本・演出】梅津瑞樹

【出演】
梅津瑞樹 橋本祥平

公式サイト

【公式サイト】https://kainashi.com/
【公式Twitter】@genshiki_info

(C) 言式

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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