12月20日配信!梅津瑞樹が“静”と“動”の間で生むドラマ性「読奏劇」『太宰治・作/猿ヶ島』収録レポート

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約1年ぶりに新作が制作された『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』。12月20日(月)に配信される第3弾には、梅津瑞樹が登場する。梅津が読んだのは、太宰治の「猿ヶ島」。若手俳優の中でも屈指の読書家である彼が、『読奏劇』という作品の中で、梅津が“文学”とどう向き合ったのか。撮影現場の模様をレポートする。

『読奏劇』は、パブリックドメインとなった国内外の名作小説・童話を題材に、音楽のMusic Videoのような映像に仕立てる配信特化型朗読劇。コロナ禍で、昨年は8作品を発表。今年春には“聴く読書”サービス「ListenGo(リスンゴ)」にて音声版がスピンオフとして制作され、今回は梅津のほか、櫻井圭登、伊万里有、田村心が参加した。

梅津には、このシリーズ再始動にあたり真っ先に白羽の矢が立った。読書家であるという情報だけでなく、SNSに綴るウィットに富んだ文章などからも、自分から湧き出る“言葉”をたくさん持っていることを伺わせる。最近では、雑誌でのコラム連載を持ったり、店舗の企画で選書を行ったりと、知識を活かして活躍の場を広げている。

そんな梅津に、どの作品を読んでもらうのか。梅津は音声版で「天衣無縫(織田作之助・著)」を読んでいたが、「耳で聴く」ことと「目で観る」ことの特性を考えて、音声版とは作品を変更することに。いくつかの提案の中から、梅津が「これしか考えられない」と選んだのが、太宰治の「猿ヶ島」だった。

「猿ヶ島」は、太宰の処女作である「晩年」に収められた短編の一つだ。物語は「私」と「彼」のふたりのやりとりの中で進んでいく。「私」と「彼」がどういう状況に置かれているのか。何者なのか。何を選択するのか。叙述トリックとも言える視点の転換を用いながら、ユーモラスかつアイロニーに満ちた言葉で綴られている。最後の一文のその先にまで、想像を巡らせる楽しみが待っている。

はるばる海を越えて、その“島”に辿り着いた「私」。その心は憂鬱に沈んでいた。深い霧に包まれたその島をめぐった「私」は、岩山の滝口に生えていた木で、「彼」と出会う。言葉を交わすと、ふたりは同じ“日本”からこの島へ連れられてきたことが分かった。

この島には彼らのほかにも、同じように連れられてきた者がいる。苦労しながらこの木を勝ち取ったという「彼」は、自分はひとりぼっちで、今から「ここをふたりの場所にしてもいい」と言う。

霧が晴れると、彼らの前には青い目の人たちがぞろぞろ歩いてきた。それを自分たちの「見世物」だという「彼」は、その姿を様々批評し出す。そんな中、「私」はある疑念を抱く。「彼」は「私」に嘘をついていた。真実を知った「私」の中に湧き上がったのは・・・。

「読奏劇」シリーズは、作品の世界観に合わせた撮影スタジオで行われるため、映像ならではの視覚的なおもしろさも魅力の一つ。梅津の撮影は、都内のあるカフェで行われた。「猿ヶ島」でカフェ?そう思いながら迎えた当日、撮影現場に行って驚いた。朗読する梅津の周りには、様々な椅子がバリケードのように積み上げられていたのだ。

監督を務める鎌田哲生(ミュージカル『刀剣乱舞』のMVなどを担当)は、カフェにあったアンティークの椅子を、「猿ヶ島」の表現の一部に取り込もうとしていた。もくもくと焚かれるスモークが深い霧となって、椅子の“島”を包み込んでいく。梅津も「どういう絵で撮られているんだろう」と、音声版との違いがどうなるのかなど、興味深げに見回していた。

映像作品だが、梅津はあまりカメラの存在を意識することなく、台本に書かれた言葉と真っ直ぐに向き合っていた。発音は現代と違うのか。どの台詞を立てるのか。監督の演出を受けて、即座に応じていく。

撮影は、地の文を読む「語り手」と、「私」と「彼」に分けて行われた。積み上げられた椅子に囲まれて行った「語り手」の撮影では、梅津は“読む”ことに徹し、あまり身体や視線に動きをつけることはしなかった。何故か。それは、撮影後半がより活かすためだったことに、筆者は後から気づくことになる。

「私」と「彼」は、フロアを変え、椅子を組み替えて行われた。こちらは椅子ではなく、テーブルを積み上げ、よりふたりが置かれた「状況」が視覚的に分かるようになっていた。このために用意されたのではない場所でよくぞここまでマッチした絵が作れると、クリエイターの発想力に目をみはった。

「私」と「彼」は、同ポジ(カメラを同じポジションに置き、同じ画角で人や物を複数カット撮影する手法)で撮影されていった。つまり、梅津は編集された映像の中で自分自身と相対することとなる。

「読奏劇」は映像作品なので、カット割りがあり、ヘアメイクで雰囲気をガラリと変えているが、梅津の芝居がその「像」を際立たせる。「私」と「彼」に求められる芝居。監督がOKを出したカットでも、梅津自身が何か足りないと感じた時には「もう一回いいですか?」と自らリテイクを求める。短い時間の中でも「私」と「彼」それぞれの輪郭を色濃くするために模索し続けていた。

「私」と「彼」の撮影シーンでは、短いながらも舞台を観ている時のような、作品に飲み込まれる感覚に陥った。「語り手」の静が、「私」と「彼」の動をよりドラマティックに映し出す。映像作品であり、朗読であり、一人芝居。そのどれをも満たす、梅津らしい「読奏劇」だ。

そんな職人気質を見せつつも、撮影が終わるとすぐにニコニコでピースサインを出してしまう梅津。俳優として、平熱の奥で燃やす芝居への情熱と、素顔のお茶目さがどうにもアンバランスで目が離せない。配信当日、スタジオトークで梅津自身がプロデューサーと共に撮影を振り返る。どんなことを語るのか、そちらも楽しみだ。

梅津瑞樹による読奏劇 #11『太宰治・作/猿ヶ島』は、12月20日(月)21:00より配信される。チケットは、配信プラットフォーム「イマチケ」(https://ima-ticket.com/dreamstage02)にて販売。アーカイブあり。

目次

『Dream Stage -読奏劇-』配信概要

【出演者】伊万里有/梅津瑞樹/櫻井圭登/田村心
※50音順

#11 梅津瑞樹『太宰治 作/猿ヶ島』
配信日:12月20日(月)21:00~
チケット:https://ima-ticket.com/event/310

イマチケ:https://ima-ticket.com/dreamstage02
チケット代:各回3,000円(税込)
※アーカイブ配信あり

<販売中>
#09 櫻井圭登_朗読『新美南吉・作/手袋を買いに』
配信日:10月23日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/301

#10 伊万里有_朗読『江戸川乱歩・作/日記帳』
配信日:11月6日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/302

<今後の予定>
田村心『芥川龍之介 作/杜子春』
配信日:未定(後日発表)

<Twitter>
【読奏劇 公式サイト】https://twitter.com/dokusogeki
【企画制作・ドリームライン公式Twitter】@dreamline_inc
<YouTube>
【ドリームライン公式】
https://www.youtube.com/c/Dreamlineinc

※2020年「読奏劇」ダイジェスト&予告
※音声版・読奏劇「読奏劇×ListenGo」試聴音源
各種コンテンツ公開中

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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