舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』の東京公演が、2023年11月9日(木)に東京・品川プリンスホテル ステラボールにて開幕する。靴職人を目指す少年・秋月孝雄役を岡宮来夢、謎めいた年上女性・雪野百香里役を谷村美月が演じ、万葉集の一編から始まる“孤悲(こい)”の物語を舞台で表現する。稽古が続く中、取材会が行われ、岡宮と谷村が作品作りについて語った。
本作は、新海誠監督の『言の葉の庭』を舞台化した作品で、イギリスと日本で2つのカンパニーがそれぞれ制作する英日連携企画となっている。9月には、先んじてロンドン公演が行われ、原作のテーマに忠実でありながら、舞台芸術として繊細かつスタイリッシュに昇華したと好評を得た。
舞台の脚本は、アニメーションと小説の両方がベースになっており、より立体的に物語が描かれているという。アニメーションから作品に触れたという岡宮は「小説を読むとバックボーンなどがすごく鮮明に書かれていて、アニメーションを観た時にどこか感じた寂しさは、こういう背景があったからなんだと思いました。それを知るのは少しつらくもありましたが、ただの恋の物語ではない人間くささみたいなものが、本作の魅力になっているんだなと、今、舞台の稽古をしながら感じています」と語った。
谷村も、雪野という役を知れば知るほど「ミステリアスという言葉だとかっこよく収まりすぎていると思うぐらい、私自身、この役を演じるのは重いなと感じています」と、真摯に役と向き合っているようだ。また「雪野が仕事を選んだきっかけも小説には描かれていたので、そこはぜひ舞台で描いてほしいなと思いながら参加しました。現段階ではあるんですが、日々脚本にも手が加えられているのでカットになるかもしれないんですけど・・・(笑)」と希望していた。
本作はロンドンと東京で別カンパニーとして上演されるが、演出はどちらもイギリスの演出家アレクサンドラ・ラターが手掛けている。ラターの演出について「アレクさんは、僕らに『アイデアを教えてほしい』『一緒に作りたい』と言ってくれています。だから、僕らからも小説やアニメから感じたこと、こう演じてみたらどうでしょうかと質問させてもらったりして、一緒に作り上げている感がすごくあります」と岡宮。
また、これまではストレートプレイに出演することが多かった谷村は「今まで、台詞中に音楽がかかるという経験もしたことがなかったので、新しいスタートをこの作品で切れそうな気がしています。表現も、言葉ではない身体を使ったパフォーマンスが加えられたりして。場面転換も一つのパフォーマンスみたいです」と、新たな挑戦になっているようだ。
なお、岡宮はロンドンで公演を直接観たそうで、「ロンドンでは、劇場に入った瞬間『ここは新宿?』と思うような空気づくりがされていたんです。休憩中にはJ-POPが流れたりもしていました。舞台の中でも、挨拶だけは台詞が日本語になっていて、僕はそれがすごく嬉しかったです。海外で生まれた作品が日本で来ることはたくさんありますが、日本のポップカルチャーがもっともっと世界に広まって、日本オリジナル舞台が世界に羽ばたいていったらいいなと思いました。このプロジェクトがその一つとなるといいです」と期待を寄せた。
ロンドン公演版と東京公演では、少し表現などが異なっているそうで、岡宮は「ロンドン公演は、日本を紹介するような描写も含んでいましたが、東京公演は日本のお客様に観ていただくので、その辺りは結構違っています。ロンドンでは通じるジョークや日本では分からなかったり。反対に、日本だからこそ通じる表現もあったり。アレクさんは、雪野さんの『明日天気になあれ』が分からなかったと言っていました。説明したら『おもしろい!』と言っていました(笑)」と、共同企画ならではの面白さを明かした。
稽古場には、ロンドン公演で相沢祥子役を演じた伊藤梢子が見学に訪れていたそうで、いい刺激をもらったという二人。谷村は「私は映像でロンドン公演を拝見したのですが、ロンドン版の雪野さんが海外的ではないお芝居ではなく、湧き出る感情から日本人らしいと感じるように演じてくださっていたので、私も引き継ぎたいと思います」と語った。
注目してもらいたい演出に、岡宮は“OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)”を挙げた。「実際にリアルタイムで、スクリーンと映像を重ねて作っていく演出があります。毎回違う景色になるので、その時によってお客様の感じ方も違うんじゃないかと思います。僕らも実際に劇場でどうなるのかドキドキしています。ダイナミックな演出というよりは繊細です。息を吞むような瞬間が多いと思います。僕はそういう静寂がとっても好きなんですけど、神秘的な感じがずっと漂うんじゃないかな」と、また見ぬ景色へと思いを馳せた。
一方、谷村は「自分が想像していたよりも、パフォーマンスに参加しているんです。ソロみたいな部分もあって。今まで身体表現で感情を見せるという経験をしたことがないので、どうなるのか・・・」とに不安と期待が入り混じる様子だった。
日本版のカンパニーは陽だまりのような憩いの場になっているという。岡宮は、谷村と初対面時に、急遽本読みもすることになり、大変緊張したそうだが、「最近、谷村さんのかわいらしい一面を知ったんですよ。ふと見たら子どものようなかわいい動きをされていたり。フランクに接してくださるので嬉しいです」とニコニコ。
谷村は「私はカンパニーの中で年上の方なので、皆さんが気を遣ってくださるし、シリアスな場面も多いので、(子どもみたいな動きは)場を和まそうと思いまして・・・(笑)」と照れ笑い。岡宮が「そうだったんだ~!みんな、谷村さんのことめっちゃ好きなんですよ。話しかけに行きたくてウズウズしてます」と告げると、「皆さんにどう思われているかようやく分かりました。こういう場をいただけてよかったです(笑)」と谷村。さらに「岡宮さんは好青年という言葉がぴったりな座長さんです」と、座組の雰囲気の良さを感じさせた。
最後に公演に向けて、谷村は「私自身もこの作品のファンであり、人がこれだけ表現できるんだと、作り上げられている過程を眩しく見ています。本番を迎えたら、本当に胸がいっぱいになりそうだなと感じています」と現在の気持ちを吐露。
岡宮は「舞台ならではの表現で、アニメーション、小説、どちらとも違ったものでありながら、原作をリスペクトして、みんなで一生懸命作っています。つらくもあり、温かくもある物語を、一緒に心に留めながら過ごしてもらいたいです。アニメーションを観たことがない方も、小説を読んだことがない方も、期待して観に来ていただけたらと思います」と呼びかけた。
舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』東京公演は、11月9日(木)から11月19日(日)まで東京・品川プリンスホテル ステラボールにて上演される。
舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』公演情報
上演スケジュール
2023年11月9日(木)~11月19日(日) 東京・品川プリンスホテル ステラボール
スタッフ・キャスト
【原作】劇場アニメーション「言の葉の庭」(監督:新海誠)/「小説 言の葉の庭」(著者:新海誠)
【演出】アレクサンドラ・ラター(Whole Hog Theatre)
【東京公演 出演】
岡宮来夢 谷村美月/
石村みか 吉川純広 山﨑紫生/
有川拓也 飯嶋あやめ 甲斐祐次 三小田芳樹 翔野葵
新橋和 藤村リュウト 本間健太 松尾悠 良田麻美
あらすじ
靴職人を目指す高校生・タカオは、雨の朝は決まって学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。ある日、タカオは、ひとり缶ビールを飲む謎めいた年上の女性・ユキノと出会う。ふたりは約束もないまま雨の日だけの逢瀬を重ねるようになり、次第に心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノに、彼女がもっと歩きたくなるような靴を作りたいと願うタカオ。六月の空のように物憂げに揺れ動く、互いの思いをよそに梅雨は明けようとしていた。
公式サイト
【東京公演 公式サイト】http://gardenofwords-stage.jp/
【公式X(Twitter)】@tgow_stage
(C) 舞台『言の葉の庭~The Garden of Words~』 2023