2023年9月2日(土)に東京・新橋演舞場にて開幕する舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』の製作発表会が8月7日に都内にて行われ、大竹しのぶ、薮宏太(Hey! Say! JUMP)、美村里江、風間杜夫、齋藤雅文(演出)が登壇した。
本作は、1972年に有吉佐和子によって書かれた戯曲で、杉村春子が主演・お園役で初演され、これまで新劇や歌舞伎、新派、音楽劇など、さまざまな形で繰り返し上演されてきた名作。
今回、主人公である芸者お園を大竹が演じ、通訳として働く実直な青年・藤吉を薮、藤吉と恋仲で噂の中心人物となる遊女・亀遊を美村、そして、亀遊が働く岩亀楼主人役の風間と豪華な顔ぶれが揃っている。また演出は、劇団新派文芸部に所属し、歌舞伎や現代演劇、ミュージカルなど幅広い作品を手掛ける齋藤が務める。
製作発表では、まず齋藤が「とても懐が深い作品で、社会批判もあり、人間の表も裏も善悪さだかならぬところの人間の深い魅力を描いてあまりあるものがあります。今の社会の鏡のような作品になると思っておりますので、このスタッフとキャストで新しく作りたいと志しております」と意気込みを披露。坂東玉三郎の初演版から演出部としてついていたという齋藤は「基本的な形はずっと継続されてきました。それを悪いじりするつもりはありません。良いところはきちんと継承したいと思います。このメンバーですので、新しく考えていることもあります。転換なども待たせずにすべて見せてやっていこうと思っています。装置も明かりも、音楽も変えていきたいと思っています」と演出プランを説明した。
また、本作について、「この作品はちょっと不思議な作品で、主人公にラブロマンスがなくて大劇場で成立している作品というのはこのぐらいではないかというぐらい珍しい。だけど、難しくなくて、面白くて笑えて、泣けるし、切ない話です。誤解があるかもしれないですけど、『ムーラン・ルージュ』みたいな、色と芸で女たちが男たちを喜ばせる遊郭の中で閉じ込められて女たちが精一杯生き延びるために自分たちなりの努力をする、一生懸命、悪あがきをするんです。その一生懸命さがとても心を打つ作品で、そこに追い詰めているのは男社会なんですけど、それは幕末でも現代でもほとんど変わっていないぐらい通用する物語になっています」と解説し、「そういう意味で、鏡のように映る作品になっているので、現代劇として捉えて頂いて、観ていただけると嬉しいです」と期待を寄せた。
大竹は、本作の魅力について「お話を頂いて初めて戯曲を読んで、玉三郎さんが歌舞伎座で上演したものを観させていただいて、すごい戯曲だなと思いました。笑って泣いていろんなことを考えさせられて、やっぱりいい戯曲というのは、何十年も前に書かれていたとしても現代の問題をきちんと描いていると思います」と語った。続けて、初めての芸者役ということに「稽古をやっていても楽しいですけど、芸者という今までやったことない役で、三味線という今までまったく興味を持ったことのなかったものに一から挑戦しています。私にとっては初めての戯曲と向かい合って、このお芝居がいかに面白いものかをみんなと一緒に作り上げたいと思います」と意気込んだ。
薮は「この歴史のある何度も上演されてきた本作品の一人として参加できることを本当に光栄と思っております。自分自身も本格的な時代劇のお芝居は初めてなので、いろいろ毎日、勉強をさせていただいている日々でございます。自分なりの藤吉を精一杯演じさせていただきますので、皆さんどうぞよろしくお願いいたします」と挨拶。
美村は「こんなに歴史のある、素晴らしい先輩方が演じてこられた演目になぜ参加できるのかと考えた時に、戯曲を読み始めたら、日の当たるところに立ったことがないぐらい白いという表現がありまして、もしかしたらこれかもしれないと思うぐらいです」と笑うと、本作について「今までご覧になった方も、そうではない私たちと同世代の若い方にも楽しめる要素もたくさんあるということは、本当に私も強く感じております」とアピールした。
横浜の遊廓「岩亀楼」の主人役の風間は「恋に傷ついた花魁の死を、攘夷論者とか国民感情が大変な英雄に仕立ててしまうというフェイクニュースみたいなものです。一つのただの失恋の事件を美談として仕立てあげていくということを、岩亀楼の主は先頭に立ってそういうことをやっちゃうような、口から先に生まれたような私にはピッタリの役です」とおどけると、会場は笑い包まれた。
さらに気心のしれた大竹との共演について、風間は「しのぶちゃんも普段はだらだらしているんですけど(笑)、いざ稽古に入ると、セリフが全部入っているんです。普段はだらだらしているんですけど、いざとなると力を出す大竹しのぶさんとの共演を、とても楽しみに毎日稽古場に通っております」と冗談を交えて話すと、大竹も「風間さんはもっとだらだらしています(笑)」と反撃し、「2人でずっとだらだらしています(笑)。でも、セリフを言う時は風間さんもすごいです」と褒め称えた。
8月から始まっている稽古について、薮は「昨日、大人数での稽古を始めたんですけど、美村さん演じる亀遊さんが身請けされてしまうというところで、亀遊さんが、僕をすごいさみしそうな、そして少し怒りが勝っているような眼光で見つめてくるんです。僕はそこで何もできないという、その儚さみたいなものを感じて・・・、でもつらいというようないろんな感情が入り交じる中、初めての稽古が終わりました。緊張感と、何もできないもどかしさなど、いろんな感情が入り交じってしまって、クラクラしてしまいました(笑)」と振り返った。
また、大竹の印象について尋ねられた薮は、「物腰が柔らかくて、いつも初めての僕にもニコニコ接していただくので、最初は緊張していたんですけど、しのぶさんもこの作品を初めてやるということで、同じ目線でいてくださることがすごく助かります」と答えると、その薮について、大竹は「本当に初めて同士だし、みんなこのメンバーでやるのが初めてなので、ともに一緒にスタートして頑張りたいと思うから、仲良くやっていきたいです。素直な若者で、今のクラクラしたというお話を聞いて余計にいいぞと思いました(笑)」と答えた。
稽古場の雰囲気については、「出演者が42名なので、すごいにぎやかですね。新派の方たちもたくさんいらして楽しいです。私、その前が一人芝居で、スタッフも入れて10人ぐらいだったので、今はにぎやかで楽しいです」と笑顔を見せた。
稽古用の浴衣を家の近くにあった呉服屋で購入したという薮は、その際に、店の主人から購入理由を尋ねられたそうで、「舞台のお稽古用に買いにきたと話したら、お店のご主人が、若い方が呉服屋に来る機会がないからと喜んでくださったんです。それで、帯はいいものを提供をしていただいたんですけど、今から頑張る若者だからということで少しお安くしていただきました」とエピソードを披露した。
舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』は9月2日(土)から9月26日(火)まで東京・新橋演舞場にて上演予定。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
あらすじ
幕末、開港前の横浜。遊廓「岩亀楼」の花魁・亀遊は店お抱えの通訳・藤吉と恋仲でしたが、アメリカから来た商人のイルウスに見初められ身請が決まってしまいます。
藤吉との恋が成就しないことを嘆いた亀遊は、自ら命を絶つのでした。
亀遊の幼馴染であった芸者・お園はその死を深く悲しみますが、ある日目にした瓦版に驚きます。
そこでは「異人に身体を許すならば自らの命を絶つことを選んだ“攘夷女郎”」として、亀遊の死の真相が捻じ曲げられていたのです。
瓦版は大変な評判を呼び、岩亀楼には連日攘夷派の武士たちが訪れることとなり、お園は真実を知りながらも、創り上げられた亀遊の最期を歌って語るようになります。
攘夷論が吹き荒れる世で、亀遊の死を巡りその渦中に巻き込まれるお園。
重ねられる嘘の先に待つものとは――
舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』公演情報
上演スケジュール
2023年9月2日(土)~9月26日(火) 東京・新橋演舞場
スタッフ・キャスト
【作】有吉佐和子
【演出】齋藤雅文
【キャスト】
お園:大竹しのぶ
藤吉:薮宏太(Hey! Say! JUMP)
亀遊:美村里江
思誠塾の門人 岡田:山口馬木也
イルウス:前川泰之
大種屋:徳井優
岩亀楼主人:風間杜夫
ほか
公式リンク
【公式サイト】 https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202309_enbujo/
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