2023年5月27日(土)から東京・世田谷パブリックシアターでイッセー尾形、小日向文世、大泉洋が出演する舞台『ART』が開幕する。3年ぶりとなる本公演の、初日前日に行われた公開ゲネプロの模様をお送りする。
1994年にパリのシャンゼリゼ劇場で初演、極上のコメディとして賞賛された舞台『ART』は、同年のモリエール賞で最優秀作品賞を受賞。1996年にはウエストエンドで上演され、オリヴィエ賞の最優秀新作コメディ賞を受賞し、1998年にはブロードウェイでも上演してトニー賞最優秀作品賞を受賞する等、世界各地で絶賛を博した。
2020年に上演された小川絵梨子版『ART』は志半ばで公演中止を余技なくされたが、3年経った2023年の5月、同じキャスト、スタッフが再び結集して上演されることとなった。
物語の主人公は15年来の大親友同士であるマルク(イッセー尾形)、セルジュ(小日向文世)、イヴァン(大泉洋)。ある日、皮膚科の医師で現代アートが趣味のセルジュがやっとのことで買った白い背景に白い線が斜めに入っただけの絵をマルクに見せるところからストーリーが展開していく。
セルジュはマルクが一緒に喜んでくれると思っていたが、マルクは不思議な顔をするばかりか、しまいにはセルジュお気に入りの絵を「クソだ」と評してしまう。そのことがきっかけで2人の間にわだかまりが生まれ、結婚を間近に控えなんだか追い詰められた様子のイヴァンを挟んで妙なやり取りを交わしていく。マルクもセルジュもイヴァンも3人の関係を何よりも大事していたため、“大人”として心穏やかにしてお互いの関係を何とか保とうとするが、一生懸命になればなるほど、会話はおかしな方向にズレていく。
エスカレートしていくうちにお互いに相手に求めていることが全く違っていたことに気付いた3人は関係修復を試みるが事態は思わぬ方向に・・・。イッセー尾形のマルクは親友との仲を守るためにプライドを抑えてトゲトゲとした言葉を飲み込もうと頑張り、セルジュも“ART”の価値観の違いで仲が拗れることを嫌って柔和な笑顔でやり過ごそうとし、イヴァンは妻となる女性と“母親”たちに振り回されながらも“ふらふら”とたゆたうことでどうにか均衡を保とうとしている。
3年の歳月を経て、前作よりもキャラクターが深堀され仲もより濃密になっており、イッセー尾形、小日向、大泉が大人の男性3人の等身大な感情をナチュラルに舞台上で魅せる姿は素晴らしい。器用なのか不器用なのかわからない大人たちが1枚の絵を巡ってやきもきしている様子は、もどかしくもなんだか愛おしくなってくるだろう。
そんな舞台『ART』は6月11日(日)まで世田谷パブリックシアターで上演。その後6月15日(木)から大阪・サンケイホールブリーゼ、6月29日(木)から福岡・キャナルシティ劇場、7月7日(金)から愛知・東海市芸術劇場、7月15日(土)から長野・まつもと市民芸術館で上演を予定している。上演時間は約1時間40分を予定。
コメント
◆イッセー尾形
滑稽でもあるし辛辣な内容でもあるけど 1 回壊れたものが思いもよらないかたちで再生していく、そういうキラキラした可能性を色々投げかける作品にしたいですね。きっとご覧になる人たちによって見方が変わるかもしれない作品かなと思います。
3年前とくらべて濃度が上がっている分、頭で考えることと身体を使うことが増えて疲れますが(笑)、この3年という時間も作品に反映させていきたいです。小日向さんも大泉さんも3年ぶりに共演できてすごく楽しいです。人となりがお互いにわかっている分やりやすく、配役がそれぞれに合っているなと改めて思います。
大千穐楽に向けて新たな発見もあると思うので、1ミリ1ミリがんばりたいです!
◆小日向文世
3人が元気で揃ったってことがやっぱり嬉しいです。3年前の初演はセルジュの役どころを生真面目な人として捉えてたので、貶されることに対してものすごい反発心やマルクに対してもっと神経質だったんですが、今回はもう少しラフな感じに役作りして、気持ち的にすごく楽になれました。
初演はほんとうに大変で余裕がなかったんですが、今回はイッセーさんの表情を見ていたり、大泉くんとセリフを交わす時に余裕ができて楽しいですし、年齢を重ねたことで役に対しての力が抜けた分見え方もだいぶ変わっている気がします。
3年越しに稽古をしてそれぞれが役を楽しんで出来ている部分があると思うので、三人三様を楽しんでみてもらえたらと思います!
◆大泉洋
3年ぶりにまた同じメンバーで芝居が出来ることに幸せを噛み締めながら稽古しました。
前回の公演のときよりも深く解釈できた部分もあり、3年前とは明らかに違う『ART』になりました。イヴァンという役もさらに深めることが出来たと思うし、3年前とはみんなビジ
ュアルも含めていろいろと変わっているので(笑)、初演を観た方も違いを楽しんでいただけるかと思います。
演出の小川さん、イッセーさん、小日向さんと、芝居を作っていく過程は相変わらず居心地が良くて幸せな気持ちでした。1時間半の舞台を1か月稽古して「セリフの一言一言にどういう背景があるのか」っていうことを話し合いながら創っていく作業は役者にとっても大切な時間だなと思いました。
今回は東京から始まって、大阪、福岡、愛知、松本と巡るのでいろんな土地で『ART』がどんな風に受け入れられるのか楽しみです。
舞台『ART』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年5月27日(土)~6月11日(日) 世田谷パブリックシアター
【大阪公演】2023年6月15日(木)~6月25日(日) サンケイホールブリーゼ
【福岡公演】2023年6月29日(木)~6月30日(金) キャナルシティ劇場
【愛知公演】2023年7月7日(金)~7月9日(日) 東海市芸術劇場 大ホール
【長野公演】2023年7月15日(土)~7月16日(日) まつもと市民芸術館
スタッフ・キャスト
【作】ヤスミナ・レザ
【翻訳】岩切正一郎
【演出】小川絵梨子
【キャスト】
イッセー尾形
小日向文世
大泉洋
【公式サイト】 https://art2023.jp/