2023年4月27日(木)にミュージカル『アルジャーノンに花束を』が東京・日本青年館ホールにて開幕した。本作は、ダニエル・キイスが1959年に発表した同名小説を原作としたミュージカル作品。初演・再演に出演した浦井健治が、本作で9年ぶりに主演を務める。初日前には公開ゲネプロが行われ、会見には浦井と共に東山義久、北翔海莉が登壇した。
本作は、2006年2月に日本で初演され、チャーリイ・ゴードン役として主演を務めていた浦井が「第31回 菊田一夫演劇賞」を受賞。2014年の上演でも「第22回 読売演劇大賞最優秀男優賞」を受賞するなど高い評価を得て、浦井の代表作となった。今回、東山、北翔ら新キャストに加え、演出・振付に上島雪夫を迎え、新たな装いで上演する。
会見で、浦井は「9年ぶり3回目の参加となりますが、みんなで紡いできた初演から紡いできた気持ちをたくさん感じていて、感無量です。今回、演出が荻田浩一さんから上島雪夫さんに代わったこともあり、違うアプローチの仕方で役と向き合うこと、今回のバージョンをみんなで作るということに、創作の素晴を感じ、お稽古から充実した時間を過ごさせていただきました」と挨拶。
ストラウス博士役の東山は「僕は初参加となりますが、今回浦井くんが9年ぶりに本作に帰ってきたということで、ストラウス博士という役を崩さないように、また、僕らしくアプローチができるように、出演者一丸となってがんばっていきたいと思います」と意気込みを語った。
アリス・キニアン役の北翔も「浦井さんの代表作でもある本作で、私なんかで失敗するわけにいかないなとプレッシャーがあり、とにかく稽古場では必死でした。でも、上島先生や浦井さんをはじめ、今回の出演者の皆様、似たような波長の方々が集まっていて、とてもあたたかな空気に包まれた稽古場だったので、すごく溶け込みやすくすっと入っていけたので、とてもいい時間を過ごせたと思っております。早く皆様にお届けしたいという気持ちでいっぱいです」と胸いっぱいの様子。
北翔の言うとおり、会見もほんわかとした雰囲気が流れ、浦井が「東山さんはDIAMOND☆DOGSのリーダーでもありますが、この現場でもリーダーと言われていて、すごく場を和ませてくれて、頼もしい兄貴でした。・・・くだらないことを真面目な顔で言うんです(笑)」と言うと、東山は声を上げて笑っていた。
また、浦井は2019年に他界したDIAMOND☆DOGSの森新吾が出演したことに触れ、「アルジャーノン役など森さんが演じていたことを踏まえて、東山リーダーが出演してくださることにも縁を感じています」と語った。
ちなみに、東山はストラウス博士役以外にも、パン屋のドナー役やチャーリイの父役も演じるのだが、「なかなか浦井くんの父親役に見えないところがありまして(笑)。千秋楽に向けて進化していきたいと思っているのですが。ちょっと苦心していますが、エレメントの一つとして彼(浦井)を守っていけたらと思っています」とコメント。
北翔は、役作りについて「キニアン先生として、いろんなことを正確に見届けること、それでいてぶれない、裏切らないことを自分の中のテーマとしております。いろんなシーンで葛藤もありますが、強い女でいたいと思っております」と語った。
新キャストの二人について、浦井は「僕はお二人にすごく感謝しているんです。お二人とも、芝居を越えて、おめめで包んでくださるんですよ。北翔さんは特にその場の感情を大切にされる方なので、涙を流されていたり。チャーリイとして存在するために、お二人と向き合えることは本当に自分の財産だなと思いながらやらせていただいております」と讃えていた。
また、演出家が代わったことで、作品も大きく変化しているという。「上島先生は、振付家としての顔をお持ちで、よしくん(東山)と一緒に踊っていたプレイヤーでもあります。そういう意味で、ショーアップした演出としてダンスが取り入れられていたりして、そこが荻田さんの時とは明らかに違っていると思います」と浦井。なお、東山と北翔は、違う役として少しだけ踊るシーンがあるそう。
最後に、浦井は「僕は、ダニエル・キイスさんが、本作で書きたかったのは“人間”だと思っていて。チャーリイを軸とした物語ではありますが、ストラウス博士の物語でもあり、アリスの物語でもあり、そして、アルジャーノンの物語でもある。みんなが主役であり、想いを重ねられる作品です。観終わったあとに、あたたかい気持ちになって『また明日からがんばろう』と思ってもらえるように。作品の持つメッセージが、お客様の心に色とりどりの花束となって届くように。このメンバーならではの、2023年版としてがんばります」と締めくくった。
9年ぶりとなる浦井のチャーリイは変わらずピュアで、繊細で、優しかった。そして、その魅力を存分に含んだ歌声はさらにパワーアップしており、より愛したくなるチャーリイになっている。さらに、「ダンスで魅せる」と浦井が語っていたとおり、さらに表現の幅が広がった印象を受けた。手術を受ける前のチャーリイの純粋無垢な自由さがより感じられ、手術を受けた後の目まぐるしい変化や感情の起伏や物悲しさが際立つような、深みの増した仕上がりとなっている。
北翔演じるアリスの包容力と東山演じるドナーのあたたかさ。ストラウス博士(東山)、二―マー教授(大山真志)、バート(若松渓太)ら研究まつわる人々や、チャーリイの心を癒したフェイ(渡来美友)、家族など、チャーリイを取り巻くキャラクターたちもより彩りが増し、それぞれの愛の形が色濃くなっているように感じる。
そして、聞き馴染んだ懐かしいナンバーに加え、アルジャーノンに贈る花束のように慎ましくも華やかな新しいナンバーも堪能でき、不朽の名作の新鮮な魅力に引き込まれていくだろう。
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』は4月27日(木)から5月7日(日)まで東京・日本青年館ホール、5月13日(土)から5月14日(日)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホールにて上演。上演時間は2時間45分(途中20分休憩含)を予定。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 3号)
ミュージカル『アルジャーノンに花束を』公演情報
上演スケジュール・チケット
【東京公演】2023年4月27日(木)~5月7日(日) 日本青年館ホール
【大阪公演】2023年5月13日(土)~5月14日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA WW ホール
スタッフ・キャスト
【原作】ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」(ハヤカワ文庫)
【脚本・作詞・オリジナル演出】荻田浩一
【演出・振付】上島雪夫
【音楽】斉藤恒芳
【出演】
浦井健治
大山真志 長澤風海 若松渓太
大月さゆ 藤田奈那 渡来美友
東山義久
北翔海莉
公式サイト
【公式サイト】https://algernon-musical.com/
【公式Twitter】@musicalalgernon
【公式Instagram】musical_algernon