2022年9月27日(火)よりMixalive TOKYO(ミクサライブ東京)内Theater Mixaにて、演劇版『稲川怪談』が開幕した。本作は山崎洋平が脚本・演出を務める劇団江古田のガールズの13周年を記念する作品として、稲川淳二の名作を初めて舞台化したもの。伊崎龍次郎、健人、山内優花らが参加し、“怖楽しい!”演劇に仕立てた。
初日前日に行われた取材会で、山崎は「この作品は“大人の文化祭”といった感じで、お化け屋敷に来た感覚で楽しんでいただければと思います」と挨拶。続けて伊崎は「ただ怖がらせるだけなら簡単かもしれません。しかし本作は『怖楽しい』ということがキーワードになっています」と従来の怪談ライブとは少し違った角度からアプローチをしていることを明かした。
怪談を扱うということで、稽古中に「怖い体験」をしなかったか、気になるところ。これに対し、山内が「稽古場の女子トイレで謎の声が聞こえるという事件がありました」と衝撃的な告白をした。実際は怪奇現象ではなかったようで、「(生きている)人の声だということが分かって解決はしたんですけれど、もし分からないままだったら(本作の)怪談の一つになっていたかもしれませんね」と振り返った。
どうやら怪談を題材として取り扱っていると身の回りの出来事に敏感になるようで、健人は稽古が始まってから「変な夢」を見るようになったと明かす。「よく分からない集団に誘われ、『この虫に刺されると病気にならない』って言われるんです。僕、そのまま虫に刺されまして。『なんだったんだろう・・・』と思ったところで目が覚めました(笑)」と、影響を受けている様子。
本番開始とともに披露されたのは稲川怪談屈指の名作「ゆきちゃん」。その作り込み具合から、江古田のガールズの「怖い」という表現への探求心が伺えた。
本作は、稲川淳二の「稲川怪談 昭和・平成傑作選」の中に収められているエピソードを組み合わせ、一つの作品にしている。物語の舞台は、雷雨の夜。あるサークルの合宿にやって来た5人の男女が、まだ来ぬ2人を待ちながら怪談話をしている。あんな話、こんな話。男女は怖がりつつも楽しい時間を過ごしていた。
そこへようやく現れる2人。「待ってたよ」「雨大丈夫だった?」などと、2人を迎え入れる男女。すると、男女の内の一人にある電話が掛かって来る。その電話の内容はとても信じられず・・・。
舞台上で、さらには生でホラー演出を確立させるというのはなかなかに難しい。しかし、そこに真正面から取り組み、演劇らしいギミックを駆使して不気味さを際立たせ、背筋がゾクゾクとするような臨場感溢れる空間が作り出されていた。
伊崎は物語の進行役的な立ち位置。お調子者のように場を盛り上げたかと思えば、ときに状況をとりまとめて観客の頭を整理してくれる、そんな役どころだ。注目したいのは伊崎の「目」。お調子者の時と進行役の時と、それぞれ目つきに変化をつけており、舞台上の温度感を自在に操っていた。彼が鋭い眼差しで語る際、凍りつくような緊張感が漂うのだ。
そんな伊崎、健人、山内は関西圏出身。物語はあるサークルの合宿にやって来た五人の男女が、遅れているメンバー二人の到着を待ちながら怪談話をしている・・・というところから開始するのだが、劇中ではわきあいあいとしたノリで関西弁を操っていた。彼らのネイティブな関西弁が聞けるというのもなかなかに珍しい。
少し怖がりなサークルのメンバー役の健人は、とにかく感情表現がダイレクト。全力のリアクションで「観客がもし実際に恐怖体験の現場にいたら」という環境をリアルに代弁し、見ている側が追体験をできるように立ち振る舞う。
伊崎とは対象的に、山内は観客と同じ目線でストーリーを追っていく存在だ。観客の心にしっかりと寄り添いながら、観客の代わりにしっかりとツッコミを入れてくれるので緊迫した空気を一蹴し笑いを誘う。一方で朗読口調の際には彼女の透き通るような声と演技が恐怖を5倍増しにするため、良い意味で裏切られたと感じるだろう。
カンパニーが一丸となって「稲川怪談」の世界観を構築し、徹底的に“怖さ”で勝負。山崎の練った脚本と、予想外な演出からは「怪談」へのリスペクトを強く感じることができる。そして、「怖いだけではなく、演者とともに楽しめる」というのが空間を共にする演劇ならではのウリ。最初から最後まで、趣向を凝らした演出が施されているので、恐怖体験の現場に迷い込んだような感覚に陥るかも。
緻密な演出は、果たしてそのすべてが本当に“用意された”ものなのか・・・。最後の最後まで気を抜けない“怪場”となっている。
なお、「怖い話だからといってお客様を突き放すような作品では決してなく、あたたかく『こっちおいで』と抱きしめるような、身近な怖さを体感できる作品です」と伊崎。「一緒に驚いたり共有できるお話ばかりなので、怖い話が苦手な方でも、隙間から覗くような感覚で来ていただければなぁと思います」と呼びかけた。
健人も「本作に登場する怪談を知る方ももとから知っていた方も、皆さん楽しんでいただけると思います。劇場にお越しいただける方にはぜひ生で体感いただきたい!とは思うのですが、配信もございますので、お好きな方法で本作をご覧ください」とコメント。
山内は「怖い話のオチをわかったうえで演者たちがどのように反応をしながら演じているのか、というのを見ていただく楽しさもある作品かと思います。二度、三度、配信も・・・と繰り返し見ていただければ嬉しいです」と呼びかけた。
演劇版『稲川怪談』は、9月27日(火)から10月2日(日)まで東京・Mixalive TOKYO Theater Mixaにて上演。上演時間は約2時間を予定。
なお、コメントにあるようにオンライン生配信も決定している。配信が行われるのは、10月1日(土)13:00公演と18:00公演の2公演。ライブ配信終了後から10月8日(土)23:59までアーカイブ視聴が可能。
配信チケットはこちら▶http://r-t.jp/inagawa-kaidan2022
また、500円の値引きとともに次回観劇席を選んで購入することができる「リピーターチケット」や、2人でまとめてチケットを購入するとお得になる「ペア割」なども用意されている。詳細は公式サイト・公式Twitterにてご確認を。
演劇版『稲川怪談』公演情報
2022年9月27日(火)~10月2日(日) 東京・Mixalive TOKYO Theater Mixa
スタッフ・キャスト
【原作】稲川淳二(『稲川怪談 昭和・平成傑作選』講談社刊)
【脚本・演出】山崎洋平(江古田のガールズ)
【出演者】
伊崎龍次郎/健人/山内優花
真心/塚原直彦/大西一希/角島美緒
(江古田のガールズより)佐野剛/カトウクリス/山田瑞紀/桑田佳澄/高瀬あい
<日替わりゲスト>
9月27日(火)14:00/19:00 田中俊行
9月28日(水)14:00/19:00 吉田悠軌
9月30日(金)14:00/19:00 松原タニシ
10月2日(日)16:30 島田秀平
【公式サイト】https://www.ekoda-no-girls.com
【公式Twitter】@ekoda_no_girls