ブロードウェイミュージカル『レント』25周年記念Farewellツアー来日公演が、2022年5月18日(水)より東京・東急シアターオーブにて上演されている。2020年3月に予定されていた来日公演は新型コロナウィルスの影響によって中止となってしまったが、その後も多くのレントファンから来日を望む声が絶えず、約2年越しに来日が実現した。
ミュージカル『レント』は、1996年にニューヨークの小劇場でオープン後、わずか2ヶ月でブロードウェイに進出。ピューリッツァー賞、トニー賞、オビー賞など各賞を総なめにし、世界中に“レントヘッズ”と呼ばれる熱狂的ファンを生み出した。作詞・作曲家ジョナサン・ラーソンの生き様を綴ったネットフリックス映画『チック、チック・・・ブーン!』のヒットも記憶に新しい。その映画で描かれた焦燥の日々の後、彼が1996年に生み落として熱狂的な支持を受け、以来世界中で繰り返し上演されているミュージカルがこの『RENT』である。
20世紀末のニューヨークで貧困、エイズ、同性愛といった“生きづらさ”を抱えながらも、今この瞬間を懸命に生きようとする若者たちの物語は、初演から25周年迎え、これを記念し昨年アメリカで立ち上がった「フェアウェルツアー」カンパニーが、ツアー最終地となる日本に上陸した。
繰り返し上演されている作品において、何よりも物を言うのはキャストの温度だ。物語と音楽の素晴らしさはとっくに立証されている中で、どれだけ「かの有名な作品を紹介します」ではなく、「これが俺たちの作品だ!」という熱量を醸せるか――。客席がまだ明るい中でカンパニーが静かに登場し、暗くなると同時に一斉に踊り出した瞬間、彼らならば大丈夫だと直感した。
長く続いたツアーの最終地であり、またその前の20周年記念ツアーがコロナ禍により道半ばで終わってしまったことも影響しているのだろう。とにかく「この舞台にすべてを懸ける!」という意気込みがすごいのだ。
果たしてその直感は外れることなく、四半世紀も前に生まれたはずの歌が、振付が、言葉が、いちいち今、そこで生まれているかのように届く。 結果として浮かび上がるのは、命と愛の尊さという痛切なメッセージと、それをどこまでも血の通った言葉とメロディーで音楽化したラーソンの偉大さだ。
例えば「Seasons of Love」は今や誰もが一度は耳に、あるいは口にもしたことがあるであろうスタンダードナンバー。だがこのカンパニーの衷心からの歌声で聴くと「1年=525600分を愛で数えよう」というラーソンの発想に改めて驚かされるとともに、その提案に乗りたくなってくる。そうした現象はすべてのナンバーで起こったが、わけてもコリンズとエンジェルの歌う「I’ll Cover You」は胸に迫った。
優れたミュージカルは、そもそも何度観ても心が潤うものだが、キャストやバージョン違いを“味変”感覚で楽しめるのも醍醐味の一つ。今回の来日版と、直近だと2020年に上演された近年の日本語版は同じマイケル・グライフ演出だが、言語も劇場もキャストも異なり、またセットや振付も少しずつ違う。
『チック、チック・・・ブーン!』でラーソンに興味を持ったミュージカル初心者には衝撃的に、そしてすでに日本語版に親しんでいるファンにも新鮮に映ること間違いなしの『レント』フェアウェルツアー。
ブロードウェイミュージカル『レント』25周年記念Farewellツアー来日公演は、5月29日(日)まで東京・東急シアターオーブにて上演。上演時間は約2時間35分(休憩20分含)を予定。生演奏・英語上演・日本語字幕あり。
(取材・文/町田麻子、撮影/ヒダキトモコ)
ブロードウェイミュージカル「レント」25周年記念Farewellツアー来日公演 公演情報
上演スケジュール・チケット
2022年5月18日(水)~5月29日(日) 東急シアターオーブ
スタッフ・キャスト
【脚本・作曲・作詞】ジョナサン・ラーソン
【初演版演出】マイケル・グライフ
【出演】アメリカカンパニー
※生演奏・英語上演・日本語字幕あり
【公式サイト】https://rentthemusical.jp