2022年4月29日(金・祝)より東京・よみうり大手町ホールにて上演されるMusical『The Parlor(ザ・パーラー)』。演出家の小林香が長年温めてきた構想をもとに描く「女性たちの物語」を描く本作の中で、3世代の家族を演じる美弥るりか、花乃まりあ、剣幸の3人から作品への想いや公演への意気込みを聞いた。
Musical『The Parlor』は、「オリジナルミュージカル」の創作も得意とする演出の小林が、“今一番伝えたいもの”として「女性たちの物語を描きたい」と企画した作品。コロナ禍で窮屈さをこれまで以上に感じている今だからこそ、過去から現代へと繋がれ、そしてこれからも繋がっていく物語として描く。そして、「3世代の母娘」をそれぞれの時代で宝塚を牽引してきた美弥、花乃、剣の3人が演じることにも注目だ。
物語の舞台は、様々な人の思いが交差してきた場所「ザ・パーラー」。LA在住のゲームクリエイター・円山朱里(美弥)は、祖母の阿弥莉(剣)に呼ばれて数年ぶりに帰国する。朱里は、母の千里(花乃)がある悲劇によってこの世を去ってから、育ててくれた祖母に複雑な思いを抱えていた。久しぶりの再会と同時に、阿弥莉はパーラーを閉店すると朱里に告げる。
しかし、パーラーの常連である、幼い娘を育てるシングルファーザーの巧(植原卓也)、クロスドレッサーのザザ(舘形比呂一)、ゲーマーの主婦アリス(北川理恵)はパーラー閉店に反対していた。そこへ、千里にそっくりな女性が現れる。
千里の死後すぐに、大手おもちゃメーカー・トイッスルの社長で父親である草笛遊史(坂元健児)に引き取られた、朱里の妹の灯(花乃/二役)だった。灯は朱里にトイッスルの人気ボードゲーム 「Toi・Toi・Toi」のPCゲーム版の制作を依頼するが、事態は思わぬ方向に・・・。
美弥は、2020年7月に『SHOW-ISM』で小林の演出作品に出演している。しかし、当時はコロナ禍に突入してすぐの頃だったため、マスクをつけたまま歌ったり演じたりと、制限された環境で手探り状態。公演もダイジェスト版という形での上演となった。
まだまだ制限はあるが、再び共に創作の機会を得たことに、美弥は「ずっと香さんが描きたかった物語に参加できること、嬉しく思います」と意欲たっぷり。ストーリーについても「自分自身にもリンクしそうだし、誰もが持っている心の葛藤などが盛り込まれていて、宝塚退団後のこの時期に、こういった役を演じられることはとてもありがたいお話だなと思いました」と語った。
また、宝塚歌劇団月組トップ時代の剣の大ファンという美弥は「私が剣さんと同じ板の上に立つ日が来るなんて!とあの頃の自分に言ってあげたい!剣さんの人柄が本当に優しく、神様みたいな大きな心で受け入れてくださっています。まだお稽古が始まったばかりですが、親子3世代の日々をすごく幸せに過ごしています。(共演できて)すごく嬉しいということが言いたいです(笑)」と喜びを爆発させていた。
花乃は、「演出の小林香さんには以前ご一緒した時も学びの多い時間を過ごさせていただきまして、ぜひまた演出を受けたいと思っていました。香さんが長年温めていたテーマで描いた作品に携われることがとても嬉しいです。素晴らしい先輩方とご一緒できると分かった時はとっても緊張したんですが、家族の役というのがまたすごく嬉しくて!毎日ウキウキしながらお稽古させてもらっています」とにっこり。
そして「同じところ(宝塚歌劇団)で育ってきたからこそ、親・子・孫という関係性を一から構築しなくてもそこにいる雰囲気が似ている”同じ”になるみたいで。稽古場で香さんが3人並んでいたら『なんだか本当に家族みたいだね』って言ってくださったのがすごく嬉しかった!」と剣。
また「香さんはオリジナル作品の中で“人間”を描くこと、普通に暮らしている人たちの傷が再生していく様を必ず物語に織り込んでくださるんですよね。その”あたたかさ”が大好きで、どんな役でも香さんが新作を作るなら出たいなと思うんです」と演出家の小林に対する厚い信頼を垣間見せた。
その時々で「宝塚歌劇団」を牽引してきた3人だが、それぞれ共演はこれが初。剣の心のあたたかさと包容力を語る中で、花乃は感極まったのか思わず涙目に。美弥も、嬉しそうに幸せを噛み締めているようだった。
剣はそんな二人を「稀有で唯一無二の存在」と言う。「3人ともベクトルは同じ。年代は離れていて性格も考え方も違うと思いますが、宝塚という伝統で繋がっている家のなかで過ごしたからでしょうか、芝居の作り方にしても、普段の居かたにしても向かっている所が同じだから、みんなで座って稽古していても同じ空気が流れるんです。一体感が感じられるお2人です持てるのはこの2人だから」と互いに尊敬の念をにじませていた。
「今までナチュラルな役を演じたことがほとんどなかった」という美弥は「香さんに『普通に、普通に』と言われて『普通ってなんだ~!』とカチカチのロボットのような状態で(笑)。もっとリラックスした状態で朱里という人生を演じられるようになりたいです」と、等身大の役で新境地に挑む心境を明かした。
一方、役について2役を演じる花乃は「お客さんが見た時にちゃんと入り込んで理解してくださるように2人を演じ分けることもがんばらなきゃいけないことだと思うんですが、千里と灯に受け継がれていているもの、阿弥莉と朱里とも繋がっているもの、ベースでつながっている根っこの部分を演じたいです。お二人のお芝居を側で見させていただきながら大切に作っていけたら」と意気込む。
「シザーハンズみたいに!」と演出の小林からハサミ捌きに要望があったという剣は「ゴッドハンドの美容師役なので(笑)。拳銃を回すみたいに軽やかにできたらと思ってやってみたんだけど・・・」と、稽古場で見事なハサミ捌きを披露していたそう。それを目撃していた美弥と花乃は「回ってましたよ!見逃してない!」とファン視点で興奮気味に答えるという微笑ましい会話も繰り広げられていた。
公演に向けて、花乃は「宝塚の先輩方と“家族”という関係性を演じることは2度とないかもしれないので、そのつながりにも注目して欲しいですし、香さんが大事にしてきたこの作品のテーマを何か考えるきっかけをさらっとつくれたらいいなと思っておりますので楽しんでいただけたら嬉しいです」とコメント。
剣も「人生って何を選択するかということ。どちらに行くかは自分で決められる。そして決めた時に、女性が強く一歩を踏み出せる勇気や、繋がっていく絆を感じていただければ嬉しいですどっちを取るかということで進んでいく、考えようによってはどっちにいくかは自分で決められるもので。そうやって決めながら『前向きに女性が明るく元気になれる』ことが作品のテーマだと思うので、観た後に勇気を持って、明日もがんばって生きていこうと思っていただけたらいいなと思っています」と熱い思いを述べた。
最後に、美弥は「大事件が起こる話ではないですが、見終わった後に自分にとっての常識や固定概念を考え直すきっかけになったらいいなと思います。じんわりと心に響くミュージカルにしたいと思いますので、まだまだ油断のできない状況ではありますが1人でも多くの方に見ていただけたらなと思います」と締めくくった。
本当に仲の良い家族のような和やかな空気をすでに作り出していた3人。それぞれの道や世代は違えど、同じベクトルで進む3人からは確かに”受け継がれている”何かを垣間見た気がした。
Musical『The Parlor』は、4月29日(金・祝)から5月8日(日)まで東京・よみうり大手町ホール、5月14日(土)・5月15日(日)に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演される。
Musical『The Parlor』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日) よみうり大手町ホール
【兵庫公演】2022年5月14日(土)・5月15日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
チケット好評発売中
スタッフ・キャスト
【作・演出】小林香
【作曲・編曲】アレクサンダー・セージ・オーエン
【出演】
美弥るりか 花乃まりあ 植原卓也 舘形比呂一 北川理恵 坂元健児 剣幸
【公式サイト】https://theparlor.jp/
【公式Twitter】@theParlor_jp