現在公開中のディズニー・アニメーション・スタジオの最新作『ミラベルと魔法だらけの家』。“魔法”に溢れる世界に住む新ヒロイン・ミラベル(声・斎藤瑠希)の活躍を描く待望のミュージカル・ファンタジーとなる本作は、活気溢れる南米コロンビアの奥地に佇む、魔法の力を持つ不思議な家―マドリガル家の物語が描かれている。“家族”について考えさせられる濃厚な物語と共に、聞くと体が自然と動き出すような魅力的な楽曲が魅力的だが、今回その楽曲制作の裏側に迫った。
『ミラベルと魔法だらけの家』は魔法の力を持つ不思議な家―マドリガル家に生まれた3姉妹の末っ子・ミラベルが主人公。マドリガル家の子供たちは、5歳の誕生日を迎えると1人1人違ったユニークな“魔法のギフト(才能)”という特別な力を家から与えられていたが、ミラベルだけはその“ギフト”を授けられなかった。
“花のギフト”やどんなもので持ち上げることができる“力(パワー)のギフト”や“動物と話せるギフト”など、多種多様な力を使って家族だけでなく町の人々を支え守る母や姉たちを誇りに思いながらもほんの少し劣等感も抱くミラベル。そんなミラベルがある日家に大きな亀裂があることに気づき、魔法の力が失われていく危機から救うべく家族の為に奮闘する姿が描かれている。
ディズニーらしい幻想的かつ迫力のある映像と胸にズキンと刺さるストーリー、何度でも聞きたくなる楽曲が美しく織り交ぜられている本作で、ミュージカル部分の音楽を担当しているのは『モアナと伝説の海』(2016)の「どこまでも How Far I’ll Go」などを手掛けてきたリン=マニュエル・ミランダ。
今作ではミラベルが家族に与えられたそれぞれの魔法を紹介する軽快なオープニング楽曲「ふしぎなマドリガル家」 や、唯一1人だけ魔法が与えられなかったミラベルの本当の気持ちや葛藤を歌うメイン楽曲「奇跡を夢みて」 、魔法に溢れ仲睦まじく過ごす家族の中で、なぜか1人だけ“その名前を口にしてはいけない”と言われる謎めく人物ブルーノを歌った心躍るミュージカルナンバー 「秘密のブルーノ」、そしてストーリーと相まった歌詞が涙を誘う珠玉のバラード 「2匹のオルギータス」などを手掛けた。
「ふしぎなマドリガル家」はラテン調のメロディに載せてミラベルの家族が持つギフトや名前を陽気に教えてくれる、ノリノリになれるかつ本編を見るにあたってとても大事なナンバーとなっているが、実は物語の第2章、第3章が書かれるよりも前に作られていたという。ミランダは「キャラクターの名前が変わるかもしれない、授かるパワーも変わるかもしれない。でも、僕らにはガイドが必要で、ミラベルが僕らのガイドになるのは分かっていた。だから、『その歌を最初に書こう』となったんだ」と明かし、物語を書き上げる上でのガイドの役割も果たしたようだ。
主人公がいかに自分の人生に満足していないなど、自分が求めていることを歌う楽曲を「I Want」と呼ぶとのことだが、今作ではそれが「奇跡を夢みて」になっている。家族に対する劣等感や焦燥など、小さい頃から抱えてきた葛藤とそれでも踏ん張ろうとするミラベルの強さが詰められたこの楽曲は斎藤のエンルギッシュで清廉な歌声と美しく織り交ざって、観る者の心を掴む珠玉のナンバーとなっている。
ミランダは「『I Want』の楽曲はいつも、僕にとって一番時間がかかるんだ。これは登場人物が経験するジャーニーを理解する必要があって、全体の映画を理解することが大事だからね」と語り、「僕が『奇跡を夢みて』を書いた時には、時間が非常に重要だった」と明かす。
実は本国版のミラベルの声を担当しているステファニー・ベアトリスが妊娠8ヶ月半で、時間がなかったという。「『この歌を仕上げないといけない。本当に時間が押し迫っている』といった感じだった。このナンバーでステファニーのヴォーカルのパワフルさは妊婦だったことも影響しているかもしれない。実際、彼女が『奇跡を夢みて』を歌っている時、彼女は本当にミラクルを待っていたんだ。僕はそのことを決して忘れないよ。彼女が歌うのを見るのと、彼女の人生のその瞬間を見ることが出来たと感じているよ」と語り、本作のテーマでもある“家族の絆”をステファニー自身からも感じたようだ。
また、ミランダが手掛けた「2匹のオルギータス」は、本作で吹き替えデビューを果たしたナオト・インティライミが本編で披露しているが、この楽曲は本編のビジュアルにインスピレーションを受けて作られているという。ミランダは「ろうそくの火が蝶になったり、蝶が次々と出てくるようなミラクル(奇跡)を具現化した表現が大好きだった。それは、家族の歴史のちょっとパーソナルな部分を明かす瞬間なんだけど、キャラクターがリアルタイムで歌うことが正しいとは感じられなかった。だから僕はフォークソング(民謡)が必要だと思った。ずっと存在してきたように感じる歌が必要だとね」と、楽曲制作の裏側を明かした。
また、主要キャラクターが歌っているナンバーではないものの物語においてとても大事な楽曲とのことで「蝶のイメージを借りることで、蝶が蝶になるのでさえミラクルを経験しないといけないと考えたんだ。それで僕は、2つのイモムシが愛し合っていて、お互いに離れることを怖がっている歌を書いた。彼らが次の自分たちになるのに、離れないといけない。これはミラベル家が経験することについて話しているんだ。彼らがお互いに次のレベルに行くために変わらないといけないことや自分自身が変わることを受け入れないといけないということを描いたんだ」と楽曲に込めた思いを語っている。
ディズニーらしいキラキラとファンタジックな世界観の中で、身近に感じるストーリーが描かれている本作。キャラクターたちの熱い思いが込められた情熱的なラテンのリズムが、よりスムーズに映画の世界に誘ってくれている。きっと楽曲を聞くだけで、ミラベルの強く美しい志しと魅力的なミラベル家の面々をいつでも思い出すことが出来るだろう。
『ミラベルと魔法だらけの家』公開情報
公開日
全国映画館で大ヒット公開中。
スタッフ
監督:バイロン・ハワード(塔の上のラプンツェル」「ズートピア」)、ジャレド・ブッシュ(「ズートピア」)
音楽:リン=マニュエル・ミランダ(「モアナと伝説の海」)
日本版声優
ミラベル/斎藤瑠希
アルマおばあちゃん(ミラベルの祖母)/中尾ミエ
ブルーノ(ミラベルのおじ)/中井和哉
フェリックス(ミラベルのおじ)/勝矢
ルイーサ(ミラベルの次姉)/ゆめっち(3時のヒロイン)
フリエッタ(ミラベルの母)/冬馬由美
ペパ(ミラベルのおば)/藤田朋子
イサベラ(ミラベルの長姉)/平野綾
アグスティン(ミラベルの父)/関智一
カミロ(ミラベルのいとこ)/畠中祐
アントニオ(ミラベルのいとこ)/木村新汰
ドロレス(ミラベルのいとこ)/大平あひる
マリアーノ(イサベラの婚約者)/武内駿輔
ほか
【公式サイト】https://www.disney.co.jp/movie/mirabel.html
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