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白井晃「記念碑的、先鋭的な作品を」2020年度KAAT神奈川芸術劇場ラインアップ発表会

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2020年度のKAAT神奈川芸術劇場のラインアップ発表会が2月4日(火)に行われ、小野寺修二、桐山知也、清水恒輔(mama!milk)、多田淳之介、谷賢一、冨安由真、松原俊太郎、森山開次、長塚圭史(KAAT神奈川芸術劇場参与)、白井晃(KAAT神奈川芸術劇場芸術監督)が登壇。『アーリントン[ラブ・ストーリー]』など計19作品が発表された。

2016年から同劇場の独自性構築を目指し芸術監督を務めてきた白井にとって、本年は芸術監督としてのラストイヤーとなる年。さらに、同所が創立から10周年を迎えることから、今回発表されたラインアップの複数作品が10周年記念プログラムの位置付けとなった。

白井晃

白井は2020年度の作品について「前半は、否が応でも7月にオープンする東京オリンピック、パラリンピックで盛り上がっていく時期に入っていきます。日本も世界も監視社会、コンプライアンスという言葉の元に進んでいき、7月に向けて熱狂的な雰囲気が取り巻く中で、私たちが見逃しがちなことに目を向けて作りました」と説明。

一方で、後半は嗜好を変えて「10周年のアニバーサリー機関としてプログラムを組みました。これまで再演はしてきませんでしたが、この時期には記念碑的な作品の再演を並べたり、一方で 先鋭的なものも打ち出していきたいと思っています」とその構想を語った。

そして「この劇場が音楽、そして現代美術、演劇、ダンスのコンプレックスでありたいと思っていて、それは今年も変わらずプログラムの中に組み込ませてもらっています」と改めて力を込めた。

以下、白井の口から、「美術・ダンス作品」「演劇作品」に分けて2020年度のラインナップが紹介され、クリエイターから自身が手がける作品についての説明がなされた。

■美術・ダンス作品
【KAAT EXHIBITION 2020 冨安由真展 漂泊する幻影(展示)】
日時:6月1日(月)~7月5日(日) 11:00~18:00(木曜休場)
会場:中スタジオ

冨安由真

◆冨安由真
科学では解明されていない事柄や現代社会では非合理的だと考えられている事柄、例えば心霊現象や超常現象といった事柄に興味があり、それらをモチーフにして製作しております。現実と非現実の境目があいまいになるような体験をしていただきたいという思いから、そのような体験ができるようなインスタレーション作品を制作しており、今回もそういった作品になると思います。

舞台芸術には演者がいるものですが、私の作品には演者がいない。あるのは人の痕跡だけ。不在性が大事な要素になっています。劇場という特殊な空間において、それをどう表現できるかを考えて、制作発表をしていきたいです。

【KAATキッズ・プログラム2020『二分間の冒険』】
日時:7月
会場:大スタジオ
原作:岡田淳
上演台本・演出:山本卓卓(範宙遊泳)
アニメーション:ひらのりょう(FOGHORN)
音楽:加藤訓子
出演:百瀬朔、佐野瑞稀、下川恭平、亀上空花、小林那優、埜本幸良、青山勝、犬山イヌコ(声の出演)

【KAATキッズ・プログラム2020『さいごの1つ前』】
日時:8月
会場:大スタジオ
作・演出:松井周
出演:白石加代子、久保井研、薬丸翔、湯川ひな

◆松井周 ※ビデオメッセージ
ある認知症の老婆が、亡くなった直後に行く飛行場で、天国に行く飛行機に乗ることができずにいるという物語です。天国に行くには条件があり、それを満たさなければなりません。その老婆を白石加代子さんに演じてもらい、会場にきてくれた子どもたちと一緒に、彼女の記憶を探してもらいます。

これは僕が初めて作る子ども向けの作品です。僕は「人類全滅」「地球滅亡」というような作品が多いので、今回は、基本は楽しいものを、楽しい場を作るということををやろうと思っています。

【KAAT DANCE SERIES 2020『星の王子さま ―サン=テグジュペリからの手紙―』】
日時:11月中旬 KAAT神奈川芸術劇場〈ホール〉/11月21日(土) まつもと市民芸術館/12月5日(土)・12月6日(日) 京都芸術劇場 春秋座(京都造形芸術大学内)/12月12日(土) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
原作:アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
振付・演出・出演:森山開次
美術:日比野克彦
衣装:ひびのこづえ
音楽:阿部海太郎
出演:アオイヤマダ、小尻健太、坂本美雨、酒井はな、島地保武、大宮大奨、宮河愛一郎、水島晃太郎、池田美佳、碓井菜央、梶田留以、引間文佳

森山開次

◆森山開次
原作は大ベストセラーです。とても言葉が美しく、哲学的で、言葉が大事な作品なんですが、それを身体表現で迫っていくという、僕にとって挑戦です。副題にあるように、単にそのままなぞっていくだけではなく、著者であるテグジュペリの生涯や思いを重ねながら、もう一回再構築して行く作業になると思います。彼の思いをもう一度、読み解いていきながら、誰も見たことがない『星の王子さま』を作っていきたいと思います。

かつては子どもだった大人たちに、そして、これから大人になっていくであろう子どもたちに届ける作品として、みんなでこの作品を観ていただき、さまざまな空想や思いを巡らせていただければ嬉しいです。

【KAAT DANCE SERIES 2020 小野寺修二新作】
日時:11月
会場:大スタジオ
演出・振付:小野寺修二

小野寺修二

◆小野寺修二
今回、白井さんから「なんでもいいから好きなことをやれ」と言われました。そうはいっても大きな事業のプログラムなので、僕はその言葉を疑って観客が入りそうなものなどを提案したのですが(白井から)全部ダメ、と。

改めて自分が何をしたいか、何ができるかをちゃんと考えてと言われました。それで、今、台詞を使わないと決めようと思っています。そして、アジアに向けて何ができるかということを起点に作品を作ることから始めています。

■演劇作品

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『アーリントン[ラブ・ストーリー]】
日時:4月11日(土)~5月3日(日)
会場:大スタジオ
作:エンダ・ウォルシュ
翻訳:小宮山智津子
演出:白井晃
出演:南沢奈央、平埜生成、入手杏奈

◆白井晃
エンダ・ウォルシュは私も大好きな作家で、この作家に惚れて、新作を上演いたします。一人の女性がどことも言えない部屋にずっといて、オペレーションルームの声と会話を続けます。その後、声をかけていた男性が、別のものから声をかけられて話し続けるという不思議なラブ・ストーリーです。これを3人(の役者)で上演させていただきます。非常に不思議な面白い作品になっています。

【アーリントン連動企画『メトロポリス伴奏付上映会 ver.2020』】
日時:4月18日(土)、19日(日)
会場:中スタジオ
作・編曲・演奏:阿部海太郎、生駒祐子、清水恒輔
装置:巽 勇太

清水恒輔

◆清水恒輔
全曲書き下ろしで、約100分弱の物語を上演します。発展しすぎた資本社会で極度に二分してしまった労働者と支配階級の話で、今の時代にもフィットすると思います。機械の駆動音も感じながら、100年近く前にどのように映画が観られていたかを追体験するものになると思います。

【アーリントン連動企画 リーディング公演『ポルノグラフィ』】
日時:4月25日(土)~29日(水・祝)
会場:中スタジオ
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志
演出:桐山知也
出演:上田桃子、小川ゲン、小久保寿人、那須凛、平原慎太郎、堀部圭亮 ほか

桐山知也

◆桐山知也
2005年のロンドン五輪が決まった後のテロ事件を題材にしている作品です。きしくも東京五輪がある中で、この作品をやるということは、どんなことになるのか、ヒリヒリする気持ちで準備をしているところです。今回は、劇場という場所がどんな場所なのかということを考えられたらと思っています。テロ事件を題材にしていますが、人と人はどう繋がれるのか、どうして断裂してしまうのかを考えられる作品だと思います。

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―『挫波』『敦賀』―】
日時:6月3日(水)~24日(水)
会場:大スタジオ
作・演出:岡田利規
音楽監督・演奏:内橋和久
出演:森山未來、片桐はいり、栗原類、石橋静河、太田信吾/七尾旅人(謡手)

◆岡田利規 ※ビデオメッセージ
能では、だいたいの主役が幽霊で、その幽霊は色々と生きている間にやりたいこと、果たしたいことがあったけど、それが果たされずに死んでしまい、成仏できない幽霊です。その幽霊たちの成仏できない理由は、得てして、社会的な政治的なことが原因なんですよ。

なので、能の構造を使うことで、社会的な政治的な演劇が作れると思っています。僕は今回は、建築家のザハ・ハディドと「もんじゅ」を主人公にしました。この二つを能にして、その間に狂言のようなものを挟む形式で上演を作ろうと思っています。

【鼓童×ロベール・ルパージュ『NOVA』】
日時:9月3日(木)~6日(日)
会場:ホール
演出:ロベール・ルパージュ
出演:太鼓芸能集団 鼓童

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 音楽劇『銀河鉄道の夜』】
日時:9月~10月
会場:ホール
原作:宮沢賢治
脚本:能祖將夫
音楽監督:中西俊博
舞台美術:小竹信節
歌:さねよしいさ子
演出:白井晃

◆白井晃
この作品は、今は失き青山劇場の10周年の時に演出しました。(KATT神奈川芸術劇場 館長の)眞野純さんともこの作品で出会ったんです。KAAT10周年の企画として、もう青山劇場がなく上演できないこの作品を、KAATに僕がいる間に上演したいと思っています。スタッフは初演の時と同じメンバーが揃っています。

【『君の庭』】
日時:10月
会場:大スタジオ
作:松原俊太郎
演出:三浦基

松原俊太郎

◆松原俊太郎
僕が脚本を書く際には、枠を決めてから書くようにしています。今回は「法廷劇」の形式を使って書くことになりました。出てくるのはファミリー。このファミリーは、日本で一番知られている家族です。おそらく、普段の「地点」の叫びとはまた違う何かが見られるのではないかと思います。

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『人類史』(仮)】
日時:10月
会場:ホール
台本・演出:谷賢一
音楽:志麿遼平
振り付け:エラ・ホチルド

谷賢一

◆谷賢一
新作で何かと問われて、私の触手が動いたのは『サピエンス全史』という人類史を貫いた、一冊の怪著でした。これを演劇化したいというご提案を申し上げたところ、私もどうかしていますが、KAATもどうかしていて、受け入れてくれました(笑)。人類の起源を探っていくような、壮大なプロジェクトになると思います。科学が宗教に変わって世界が塗り替えていくところまで描きたいなと思っています。無理だろうと思った方はぜひ劇場に来ていただければ。

【日韓共同製作『外地の三人姉妹』(仮)】
日時:12月
会場:大スタジオ
原作:アントン・チェーホフ『三人姉妹』
翻案・脚本:ソン・ギウン
ドラマトゥルク:イ・ホンイ
翻訳:石川樹里
演出:多田淳之介

多田淳之介

◆多田淳之介
(多田にとって)久々の日韓共同製作になります。チェーホフの『三人姉妹』を下敷きにした作品です。今回は、日本人と朝鮮人が出てきます。軍人たちが住む朝鮮半島で、生活が辛い、苦しいと言いながら東京を思い描いて暮らしている(登場人物たちです)。チェーホルに出会い直す作品でもあると思っています。

【杉原邦生 新作】
日時:12月
会場:ホール
作:瀬戸山美咲
演出:杉原邦生

◆杉原邦生 ※ビデオメッセージ
ギリシャ悲劇を2年間続けて演出させていただいた中で、それをもとにした新作をやりたいと思いました。今回は、現代劇です。劇作家の瀬戸山美咲さんにお願いして新作を書いてもらいます。

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『セールスマンの死』】
日時:2021年1月
会場:ホール
作:アーサー・ミラー
翻訳:徐賀世子
演出:長塚圭史
出演:風間杜夫、片平なぎさ、山内圭哉、菅原永二、加藤啓、智順、大谷亮介、村田雄浩ほか

長塚圭史

◆長塚圭史
2018年に上演した作品の再演です。(KAATの)ホールはかなり大きな劇場ですが、そこでスタンダードなストレートプレイができるということをやってみたいと白井さんと話して、それが一つの形で結実できたのがこの作品だったと思っています。

時代に取り残されていった男の姿と同時に家族の業が描かれています。年の若い息子役を山内圭哉くんと菅原永二くんが演じます。それが見ものです。再演ですが、非常に鮮度の高いものになると思っています。

【KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『コーカサスの白墨の輪』】
日時:2021年1月
会場:大スタジオ・中スタジオ・アトリウム
作:ベルトルト・ブレヒト
演出:白井晃

◆白井晃
毎年、ブレヒトの作品をかけていくのを目標にしていました。その流れの中で、ラストの年にこの「和解」の物語あたりを上演させていただきたいと思います。これまでにいろいろな形で(KAAT内の)会場を使っていますが「全部の会場を使う」という道がまだ残っていると思い、全部使ってみようと思います。

【『子午線の祀り』】
日時:2021年2月
会場:ホール
作:木下順二
演出:野村萬斎
音楽:武満徹

◆野村萬斎 ※メッセージ代読
世田谷パブリックシアターでは上演を重ねてきた作品ですが、17年版は数多くの賞を受賞できました。今回は、KAATに始まり、各地の劇場と手を組んで新たな祀りを立ちあげたいと思っています。

【一柳慧×白井晃神奈川芸術文化財団芸術監督プロジェクト オペラ『モモ』全3幕】
日時:2021年3月9日(火)~14日(日)
会場:ホール
原作:ミヒャエル・エンデ
作曲:一柳慧
演出:白井晃
指揮:板倉康明
管弦楽:東京シンフォニエッタ

【公式サイト】https://www.kaat.jp/

(取材・文・撮影/嶋田真己)

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